第19話 説教

 「さぁ、説明してもらいましょうか?」


にこにこと笑いながら、圧をかける朱音さん。正直に言おう。めっちゃ怖い。


「その……すみません。霊とリンクすることを視野に入れていませんでした。完全に僕の過失です……」

「優司くんは良いのよ。主なんだから。自分の弱点を知った上で行動している。咄嗟の対応も素晴らしかったわ。生きて帰って来て何より」

「あ、ありがとう、ございます」

「問題は……」


ギロリ、と朱音さんの視線が大鳳さんに向く。視線だけで殺されそうな勢いだ。


「あなたは何をしていたのかしらぁ?」

「あの、それは僕が悪くて……」

「お静かに」

「……はい」


逆らえない。大鳳さんに申し訳ないが、ここは耐えてもらうしかない。


「だいたい、あなたがついていながら主を危険に晒すとは何事ですか! 優司くんがすっごく優しいから命があるものの。本来なら切腹ですからね、切腹!!」

「正直、それは覚悟した」

「覚悟する前に主を助けなさい!!」

「それができたならやってたし!」

「お黙り!! ……まったく、本来なら一般人を巻き込むなんて言語道断ですよ。幸希くんに感謝しなさい?」

「はい……」


しばらく叱責は続いたが、朱音さんは最後に


「本当に、生きていてよかった……」


と泣きそうな声で言うものだから。悪いことをしたな、と深く反省する。「夏休み旅行で死にました」は、確かに大変だ。後のことを考えていなかった。申し訳ない。


「ご迷惑をおかけしました。心より、お礼申し上げます」


朱音さんや幸希くん等、関係者に頭を下げる。幸希くんは「気にするなって!」と笑っていたが、とんでもないことをさせてしまったことは事実だ。まさか、戦闘に巻き込むとは。


「僕は楽しかったよ? 武器が弓で超ラッキーだったわ。ヒーローみたいで良いな」

「二度と、こうならないように気をつけます」

「えー。頼ってよー。めっちゃ活躍したよ? どう? スカウトとか」

「受け付けていないので……」


不服そうな幸希くんに、朱音さんが言う。


「限られた人間にしか従者にはなれないのよ。神に認められるくらい努力して、人間をやめ、ようやく従者になる。人間をやめてまで、命を懸けてこの仕事をしたい?」


厳しいことを言うが事実だ。みんな黙り込む。


「朱雀ちゃんも人間をやめたの?」


幸希くんの問いに、口を閉ざす大鳳さん。その代わりに朱音さんが


「半人前だから、この程度の実力なのよねぇ」


と苦笑いしながら答えた。


「朱雀はお借りします。特訓して、もう少し強くしておきますので。どうか今後も使ってやってください。よろしくお願いします」


僕が何か返す前に、朱音さんは大鳳さんをずるずると引き摺って去って行った。

 取り残された僕らは、互いに苦笑し合うしかなかった。

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