第20話 蘇る悪夢
『信じていたのに』
トンネルの霊とリンクした時、夢を見た。
__信じていたのに。
まず始めに現れたのは、両親だった。彼らは僕のことを信じてくれていた。だから、最後に手を伸ばしたのだと思う。助けを求めて。でも僕は何もできなかった。信じてくれていたのに何もしなかった。胸が締め付けられるように、苦しい。
また逃げようとする僕を逃さなかったのは、兄だった。兄はただ、僕を責めることなく静かに笑っていた。兄の姿が、次第に歪んでいく。人の形を保てないほどに歪んだ彼の姿は、あの日の光景を思い出させた。瓦礫に埋まる、兄の姿を。
左右の逃げ場を使おうとするが、左右も従者たちに塞がれる。
「あなたのやり方にはうんざりです。あまりにも効率が悪すぎる。ついていけませんよ」
「アンタのせいで不自由よ。私の人生、返してくれない?」
「だいたい、オレはお前のために生まれてきたお前の所有物じゃないんだけど」
「やはりお前より家族の方が大事だ。すまん、引退させてくれ」
「正直、
彼らはこんなことを言わないと知りながらも、不安がそれを真実だと錯覚させる。
終いには、逃げ場のない中で友人たちに
「お前、やっぱ面白くねぇや。友達やめよう」
「一緒にいると僕が不幸になるから、ごめん」
「十分、恩は返しただろ。もう良いよな?」
「やっぱ、非科学的なことは信じられねぇわ。お前のこと、嘘つきだとしか思わねぇ」
そう別れを告げられてしまう。偶像だ、と言い聞かせても涙が出る。
目を瞑って必死に耐えようとするが、
「私はあなたを殺す。それが私の役目だから」
舞衣さんのその一言でダメだった。
心が壊れていく。霊との強制的なリンクは、僕の弱みを引き出されることが多いが、まさか僕にとっての弱みがこんなにも多くなっていたとは。神守家の頭首は代々、人と関わることを避けた。仕事に全てを捧げていた。その理由が今ならわかる。大切なものは弱みになる。その数が多ければ多いほど、弱点も多くなる。
僕は、引き返せないところまで来てしまったようだ。この中の誰かを捨てることなどできはしない。何を言われても愛し続けるし、僕は、永遠に自分の犯した
__応えられなくて、ごめん。
その場に座り込み、泣きながら何かに祈っていた時のことだった。
「優司!!」
「優司くん!」
僕を呼ぶ声が聞こえてくる。そっと目を開くと天井が見えて、横に目を向ければ友人たち四人と舞衣さんの姿が見えた。
「よかった。約一時間、
「後遺症みたいな感じなのかな。大丈夫?」
「ほら、水飲め。水分補給は大事だぞ。見ろ、すごい汗」
「とりあえず、今日は遊ぶというより、ゆっくり休める方が良いよな。温泉でも行くか?」
「何かあれば言って。協力するから」
みんなの様子を見て、安心する。今度は安堵で胸がいっぱいになり、脱力してしまった。一瞬だけ焦る五人。しかし、僕が笑うと、みんなも安心したように笑っていた。
「すみません、もう少し休みます」
五人が側にいることを確認して眠る。すると、先程の悪夢が嘘のように思えるほど、よく眠ることができた。
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