二章

第13話 夏休み旅行①

 「夏だ! ホラーだ! 肝試しだ〜!!」


 __シーン……。


 「あれ、ノリ悪くない?」


悠斗くんのテンションが、いつもよりおかしくなる季節になった。夏。そう、肝試しの季節。僕らにとっては最悪な、多忙な季節。


「お前、去年のこと忘れたのか? 優司が大変そうだっただろう。主にお前のせいで」


暁人くん、もっと言ってやってくれ。そうだ、『肝試し』という厄介な行事は廃止すべきだ。仕事が増えて仕方ない。特に、悪霊の力を信仰により増強させられるのは困る。そこで、死亡なんてされたらとんでもない。負の連鎖が待ち受けている。


「でもさ、やっておきたいじゃん? せっかく霊に会えるんだし」

「奏真に会っていれば、実質、常に霊と会っていることになるでしょ。はい、終わり終わり。海行こうぜ、海」

「待って幸希くん。流石にそれは僕に失礼じゃない?」

「あっ、海良いじゃん! 海行こうぜ!!」

「無視!?」

「海にも霊はいるか。よし」

「いや、肝試しは諦めろよ……」

「優司も行くだろ? 海」


突然、話を振られて驚く。


「たまには仕事を休んでさ、遊びに行こうぜ」

「そう言われましても……」

「あら、良いじゃない。遊ぶついでに、海での仕事を終わらせましょ?」


いつから、どこから現れたのか。舞衣さんは、友人たちの間に割って入ると、分厚い封筒を机に置いた。


「……こちらは?」

「お父さんから。神楽から神守へ依頼だって」


そっと中を開けると、まず目に入ったのは大金だった。中身のほとんどが金で、本文は一枚。


『神守優司殿

 前略失礼致します。

 季節は夏、盆も近づき、霊に悩まされる時期となりました。つきましては、我が娘・舞衣と共に慰霊、及び除霊の協力を依頼したいと思います。

 ついでに夏を満喫してきなさい。一度きりの青春、楽しまなきゃ損だよ!

 草々』


 相変わらずのようで安心する。が、この大金には悩まされる。とても学校に持ってきて良い金額ではない。よく、大切な娘に持たせたな。狙われたらどうするつもりだったのだろう。


「……承りました」


中から正式な依頼料だけ受け取り、残りは返却する。


「行きましょうか、海」


全員の顔が明るくなる。ガッツポーズをしたり計画を立て始めたりと、楽しそうにしている。


「ただし、夜中は別行動とさせていただきます。絶対に部屋から出ないこと。良いですね?」


仕事以外で海に行くことはなかったため、正直楽しみだった。パンフレットを囲うみんなの間から、そっと内容をのぞく。どこに行きたい、というものはなかったが、きっとどこに行っても楽しめるだろうと、近い未来に思いをせた。

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