第7話 攻撃力向上訓練③

 「……落ち着きましたか?」


無理矢理に捻り出した言葉はそれだった。


「お前、凄いな……」

「流石は私たちの主。ちゃんと強いじゃない」


落ち着くも何も、呆気に取られている古白さんの様子を見る限り、暴走の心配はなさそうだ。


「圧倒的観察力と、優れた対応力。頭脳明晰な優司だからこそできる技か」


ブツブツと呟きながら僕を分析する古白さん。彼が出した結論は


「ベースはやはり、義父の霧玄か。頭脳戦は、専門外だからなぁ……。無茶をするところは、悠麒に似たのか。となると、オレが鍛えるべきは攻撃力だ。スピードに関しては、このくらいでも十分だろう」


攻撃力アップに特化した訓練だった。


「一撃必殺の他にも、何か奥の手が欲しいかもしれないわね。いざという時に使える手段は、なるべく多い方が良いかも。アンタと違って、優司くんは器用だから」


多少、毒がある気もするが、大鳳さんも協力的になっていく。


「なるべく時間はかけたくないな。時間経過でダメージが入る奴も多い。オレは外れたら距離を取って立て直すが、優司の場合、連撃で確実に仕留めた方が良さそうだな」

「まぁ、体の使い方さえ覚えてしまえば、後はしっかり応用してくれそうだしね。とりあえずそれでいきましょうか」

「言葉より、実戦の方がわかりやすい?」

「多少の緊張感があると、力を引き出しやすいかもね」


二人がこちらを見つめる。次に来る行動は嫌というほどに理解できた。


「いくぜ優司!!」

「御覚悟!」


手加減という言葉を知らないのだろうか。勢い良く襲いかかる二人を間一髪でかわし、なんとか体勢を整える。が、観察を始める前に次の攻撃が放たれる。


「見るべきところは手足。目線は外しても攻撃できるわ。微かな力の入り具合で、攻撃の手を見分けるの」


大鳳さんが耳元で囁く。なるほど。彼女は攻撃しつつ、アドバイスをくれるらしい。この助言通りにやっていけば何か掴めるかもしれない。


(やれるだけ、やってみよう)


 大鳳さんの攻撃タイプは遠距離。矢の軌道は計算すれば見える。この場合、大鳳さんの位置を把握し、音がした瞬間に彼女の姿を捉えれば攻撃は避けられる。

 古白さんの攻撃タイプは近距離。アドバイスを活かして行動を探る。もし距離を詰められてしまえば、あちらの思う壺だ。なるべく距離は取りながら、まずは観察。


「攻撃する時は全身を使うこと。ただし、集中させるのは一部分だ。銃口のイメージ。一箇所に力を込めて、勢い良く打ち込む」


攻撃の手を休めることなく、やり方だけ教えてくれる。避けることに精一杯になりながらも、なんとか食らいついていった。


「さっきのこと、思い出して」


大鳳さんが囁く。さっきのこと……死角に入れということだろうか。

 攻撃を避けて、古白さんの死角に入り込む。左手が微かに緩む。ほぼ同時に、右足に重心がかかった。次はきっと、左手が握られるはず。


(……なら、こっちだ)


冷静に分析し、彼が振り向いたところで、足元を通り、反対側に回る。力の込められていない右側に狙いを定め、集中する。銃のイメージ。右手に力を集中させ、全身を使って振りかざす。


「ど、うだ……ッ!!」

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