第5話 緊急会議②
五分ほど言い争いを眺め、そろそろ止めようと二回手を叩く。
「脱線しています。話を戻しましょう」
流石に僕の指示は聞いてくれた。どれだけ言い争っていても、きちんとすぐにやめてくれる。根は真面目な人たちなのだと思う。
「まぁ、正直オレは簡単な話だと思うぜ」
今まで黙っていた古白さんが口を開く。
「要するに、主が『弱っている』から狙われているんだろ? 強くなれば良いじゃねぇか」
想像以上に単純だった。しかし、ごもっともである。
「主は霊力が弱いだけで、体術には優れているだろ。一発集中型の攻撃を覚えれば、強くなると思うぜ? それに、一発集中型は『強い』と誤魔化せる。昔のオレがそうだった」
「確かに」という声が、ちらほら上がる。
「だが、リスクも高い。お前はよく知っていると思うが、アレは一発勝負。外したり、パワー不足で倒しきれなかったりすれば、死ぬぞ」
霧玄さんの懸念を、古白さんは
「その時のためのオレたちじゃねぇの?」
その一言で打ち破った。
「とりあえず、オレが主を鍛えながら護衛する。朱雀は護衛の補佐に入ってくれ。ベテラン三人で邪神の殲滅。これでどうだ?」
確かに、強さが未知数の相手に、大鳳さん一人で立ち向かうのは厳しいだろう。と、なると、ベテラン三人が分かれて探し、戦った方が効率的ではある。古白さんと大鳳さんの二人が協力すれば、ベテランと同じくらいの強さになる。互いのスキルアップにも繋がり、名案かもしれない。
「……では、そちらの案で決定として。問題は我々ですね」
波青さんが改めて邪神の問題を提示する。
「一番早いのは殲滅です。しかし、恨みの連鎖を断ち切るためには、殺すだけではいけません。せめて、犠牲になった神々だけでも救う方法があれば……」
「そうだな。多くの神は、恩を必ず返す。味方になってくれる可能性もあるだろう。味方の数は多い方が良い」
波青さんの意見に霧玄さんが賛同する。
「面倒だ。一刻を争う。主に危害を加えるなら問答無用。武力行使で良いだろ」
一方、未だに考えを変えない悠麒さん。
「……長くなりそうだな。白虎、朱雀。二人は解散で良い。明日に備えて寝なさい」
霧玄さんが二人を帰そうと動いてくれる。
「いいの? 私、何もしていないけど」
「オレは別に明け方までやっていても問題ないけど……」
三人のやり取りを聞いているからか、不安そうに問う。
「大丈夫です。本日は、突然の集会にご協力いただき、ありがとうございました。どうぞ、気をつけてお帰りください」
僕がそう言えば、二人は納得したように頷き、帰って行った。
僕と大人たちだけが残る。
「……さて、ここから先は気兼ねなく話し合いましょうか」
波青さんの一言で、空気が一気に冷える。僕の胸の中には、一抹の不安が芽生えていた。
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