第5話 緊急会議①

 合図と共に、早速、波青さんと霧玄さんが姿を見せる。


「朱雀と白虎はまだか」


低い声で言う悠麒さんを、波青さんがなだめる。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。主の前でそんな。彼らは学生の身。事情の一つや二つ、あるいは術の失敗の一つや二つ、珍しくはないでしょう」


悠麒さんにギロリと睨まれるも、波青さんは、微動だにしない。流石は剣士。猛者相手でも、冷静沈着だ。


「……ほら、すぐに揃いますよ」


波青さんが二人の席に目線を向ける。すると、


「すみません、遅れました!」

「ごめーん!!」


大鳳さんと古白さんが姿を現した。二人とも、かなり急いで来たのだろう。力のコントロールができず、羽を撒き散らしたり、体に模様が浮き出たりしている。


「とりあえず、お二人は息を整えてください」


僕が促すと、全員、席について静かになる。息を整え終えたことを確認し、本題に入った。


「緊急会議ということで察している方もいると思いますが、本日、新たな情報が入りました」


一瞬にして、空気がピリピリとする。みんなの目が怖い。それだけ集中してくれているということなのだろうけど。


「神守家頭首が弱っている、と噂され、多くの邪神が僕の命を狙っているそうです。そこは問題ないのですが、階級が低い神を邪神化させて、手駒にしていることがわかりました。これには早急な解決が求められます。どうか、力を貸してください」


しばらく沈黙の間ができる。やはり突然の話は受け入れにくいだろうか。


「……正直、難しいな」


何とか霧玄さんが沈黙を破ってくれるが、出てきた言葉はそれだった。


「神守家を恨む邪神なんて、数百はいるぞ」


そんなに多いのか。せいぜい、数十くらいだと思っていた。歴代頭首は一体、何をしてきたのだろう。これでは舞衣さんのお父様に冷酷非道だと疑われるのも頷ける。


「主を守るのは大前提として、邪神化を止める方法なんて知りませんよ。どうです、最年長組。勝算はあるのですか?」


波青さんから目を逸らす霧玄さんと、逆に彼を睨む悠麒さん。どちらも自信はないのだろう。当たり前だ。前例がない。


「勝算の有無など関係ない。主のため、不可能を可能にするのが僕らの仕事だ」

「あなたのように完全な人外なら多少の無理もできるでしょう。しかし、我々は人間。一度の死で、二度と生き返りません。慎重になるべきです」

「主を裏切るというのか、貴様」

「邪推はやめてください。命懸けで守ります」

「なら問題ないだろう。片っ端から容疑者全員殺していけ」

「そういうところが、恨みを買ったのでは?」

「被害が出る前に犯人を殺せば被害は出ない。それの何が悪い」

「これだから力の者は困るんですよ」

「何だと?」


バチバチと火花を散らすような言い争いをする波青さんと悠麒さんにため息をつく。会議は、まだまだ終わりそうにない。

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