第4話 群れるな危険⑤
しばらく黙っていた悠麒さんが、ようやく、口を開く。
「……終わったね。じゃあ僕から一つ」
今思えば、こうなると見据えていたのだろう。本当に凄い人だ。そして、聞きたいことも
「例の邪神について聞きたい。あいつの気配はいつものやつと違った。近づくまでわからないほど些細な霊力。しかし、実際は上級くらいの力を持つ邪神。何か裏があるとしか思えない」
やはり、同じことだった。
「僕には核のようなものが見えました。本来、上級は核を見せません。急所を晒す愚かな神はいないでしょう。ましてや、本気で僕を狙っていたのなら。一体、何が起きているんです?」
燐火は少し回答を躊躇ったが、僕の目を見て、ゆっくりと深呼吸をした後
「取り乱すなよ」
まずは悠麒さんに釘を刺した。何事かと思い、息を呑む。すると、彼の口から信じがたい事実が告げられた。
「神々の間で、神守家頭首が弱っている、と噂されている。神守家は敵が多いからね。多くの邪神が主を狙っているんだ。だが、近づくのは怖い。だから弱い神を取り込み、邪神化させ、こんなふうに狙ってきたんだ。邪神化の現場を目撃した。間違いない」
それで僕を守るため、近くにいてくれたのか。ありがたい。
「アレを邪神化させた神は?」
「食べた」
「チッ」
始めから敵の数が一つ減らされていてラッキーだと思うところで、何故か、舌打ちをする悠麒さん。あまり好ましくないことを考えていたのだろう。
「とにかく、気をつけなよ。主は優しすぎる。恩が仇で返ってくることもあるんだ。みんながみんな、優しい神じゃない」
燐火は優しく微笑むと、先程同様、僕らを炎で包み込んだ。そろそろ、帰してくれるというのだろう。
「一つだけ、警告しておくよ」
帰り際に燐火が言う。
「あまり群れない方がいい。どうしてもというなら、道具に頼りな」
感謝を伝える前に、現実世界に引き戻された。
隣には、少し苛立っている悠麒さんがいる。
「あの、悠麒さん?」
「何だ」
「……僕、簡単に死ぬ気はありませんよ」
「当たり前だ。絶対に死なせない」
僕の何が彼をここまで動かすのか。僕には理解できなかった。だが。
「とりあえず、帰りましょうか。他のみなさんに報告が必要でしょう。それから、燐火の言っていた道具を探さなくては」
彼が僕を想ってくれていることは、明らかだ。それを見て見ぬふりはできないほど、彼からは愛情をもらっている。神守の末裔である僕を、絶望させたいだけかもしれないが……そこまで邪推するのは野暮というものだろう。まずは、早急に問題解決。神々を守るため、そして僕の周りにまで被害が出ることを防ぐため、ここは動かなくてはならない。
家に帰ると、すぐに着物に着替える。一応、全員が睡眠時間が少なくても動ける体になっているとはいえ、まだ高校生である大鳳さんと、大学生の古白さんがいる以上、明け方の会議にしたくはない。
六人分の霊力を隠せるほどの結界は張ることができないため、悠麒さんに頼み込んで、張り替えてもらう。
頭首の証である首飾りを身につけ、自分の席に着く。ゆっくりと深呼吸をし、僕は気持ちを切り替えて開始の合図を口にした。
「さぁ、緊急会議を開きましょう」
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