第4話 群れるな危険②

 「あちゃー。だから言ったのに」


おそらく、神隠しの類に遭ったのだろう。森の中にしては気分の悪い場所に飛ばされた。


「四人だけでも帰せないの?」

「強制的に帰すこともできるけど、オススメはしないね。記憶喪失、人体破損、見知らぬ土地への転送が起こる可能性が高い。人の子は脆いから、生き残りたいならやめておきな」

「ヒェッ……」


異界に飛ばされて姿が見えるようになった悠麒さんと、仕事モードの舞衣さんの会話に怯える四人。


「まずは話し合いましょう。おそらく、狙いは僕です。責任は取ります」


先頭に立ち、神の気配のする方へと進む。が、


「まぁ、待て」


悠麒さんは、僕の腕を掴んで止めた。


「用があるのはそっちだろう。お前が来い」


彼が言った途端、僕の目の前に炎が現れる。


「相変わらず、手厳しいね。無理矢理連れてきたこと、怒っているのかい?」


炎の中から出てきたのは、狐の姿の神だった。


「まさか。主を助けてくれたんだろう?」


見覚えのある赤いバンダナ。過去に、この神に会ったことがあるのだろうか。何故か「敵ではない」という安心感があった。


「過去に助けられたからね。僕のテリトリー内では死なせないよ」


どうやら、過去に彼を助けたらしい。見覚えのあるバンダナは、僕のものなのだろうか。


「あー、なんか見たことあると思った。確か、そのバンダナ、小学生の頃に優司が使っていた弁当の……」


悠斗くんに言われて思い出す。お弁当のやつか。


「オシャレにもなり、優司の匂いも辿れる優れものだ。なかなか良いだろう?」


「神たらしめ」という悠麒さんの声が聞こえた気がするが、一応、無視しておこう。


「ところで、助けていただいたようですが……僕は何に襲われかけていたのでしょう?」


僕が問えば、にこにこと笑いながら指をパチンと鳴らす彼。


「これのこと」


次の瞬間、彼の手には邪神と思われる『何か』が握られていた。


「そこの男の子に憑いて、優司のことを探していたんだろうね。殺されかけていたよ」


奏真くんを指さすと、そのまま邪神を口の中に放り込む。流石は神、といったところか。取り込まれた邪神の力が彼に吸収されていく。少し可哀想だが、仕方ない。


「なるほど。やっぱり群れすぎたね。優司だと判断するための材料が揃っていたわけか」

「そういうこと。気をつけなよ? 次は守ってあげられるか、わからないから」

「言われなくとも、僕が主を守るさ」

「おや。随分と従者らしくなったじゃないか。昔はもっと冷酷な奴だったのに」

「主を気に入っているのは、お前だけじゃないということだ」


バチバチと火花を散らすような口喧嘩を始める二人。僕らはそれを苦笑しながら見つめることしかできなかった。悠麒さんがここまで誰かと盛り上がっているのは久しぶりだ。なんだか、従者の成長を感じるようで、ほっこりした。

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