第4話 群れるな危険①
「これは、一体……」
校内を駆け巡る式神たちを見て、おそらく事情を知る人物に問う。
「……ごめん。優司くんとのことを話したら、納得してもらえた代わりにこうなった」
「あ、愛されていますね……?」
「参っちゃうわよ、ほんと」
そういえば、舞衣さんのお父様は過保護だったなぁ。そんな呑気なことを考えながら、式神を見つめる。一体一体の霊力は低いが、この量を操り続けられる神楽家頭首には感心する。
「そういえば、神守一門はどうなの? あまり式神も従者も見かけないけど」
「式神は一体、連絡用に連れ歩いていますよ。今もポケットに入れています。何かあれば従者を呼びますが、あまり一緒にいると……」
最後まで言い切る前に、式神が破壊される音が鳴り響く。強風と共に、犯人が姿を見せる。
「神守家頭首ってバレたら、困るでしょ?」
霊体となった悠麒さんが学校に侵入し、暴れてしまった。
「……本当に申し訳ありません。あの、弁償はします。絶対に弁償させますので……」
善意だろうから、悠麒さんを怒ることはできず平謝りする。舞衣さんは「愛されているわね」と苦笑いしていた。
「困るよ、お嬢。『神守家頭首はここですよ』ってアピールして、困るのは君たちだよ。僕が駆けつけるまでの約十秒、耐えられるの?」
一方、悠麒さんは怒っているようで困惑する。どうしようか、この状況。
「十秒で!? すごい、どうやって!?」
そんな中、相変わらず好奇心旺盛な彼女は変なところに食いつく。
「……境界移動だけど」
珍しく悠麒さんが困惑している。やはり彼女はいろいろな意味で強かった。
「えっ、どうやるの!? 成功者はいないって聞いたけど……」
「人間にできる技ではないかな。霊体になって境界に行く。それが大前提。そこから走って、目的に向かう。境界は時間という概念がない。ただ、それを利用するだけだよ」
「生きながら霊体になる方法は?!」
「神になるか、或いは神の加護を受けた状態で一度地獄堕ちする。言っておくが、神守家従者特有の技だ。お嬢にはできないよ」
「えー、ショック……」
「向上心は評価しよう」
いつのまにか盛り上がる二人についていくことができず、廊下で立ち尽くす。すると
「あれ? 優司じゃん、どうした」
「舞衣さんが何もないところと話しているってことは、つまりそういう……?」
「お仕事中か? 学校内でも、って大変だな」
「俺たち、退散した方が良いか?」
友人たちがぞろぞろと歩いてきた。
「……仕事中ではないんですけど、今から仕事することになるかもしれません」
その友人の一人・奏真くんの背後を見て、全てを察した。
「先に言っておきます。すみません」
無論、悠麒さんと舞衣さんも気がついたようで苦笑いする。一方、混乱している四人。しかしその理由を知るのに、時間はかからなかった。
__意識を保ったまま、視界が暗転する。
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