第3話 守るべきもの①
従者たちに、『神楽舞衣と恋仲になった』ということを知らせると、意外にも、祝福の声があった。
その中でも特に喜んでくれたのは、義父の、霧玄さんだった。「久しぶりに家に来ないか」というメールを受け、彼の家に向かう。仕事が終わってからの訪問により、彼の子どもたちに会うことは叶わなかったが、霧玄夫妻に会えたことは嬉しかった。
彼の妻・
「どうだ、最近の調子は」
「相変わらずですよ」
「神楽の娘と結ばれたらしいな」
「おかげさまで」
「安心した。表情が豊かになってきたな」
「そんなに時は経過していませんが」
「人間なんて、すぐに変わるものだ」
確かに、少しずつ改善している。この料理も、昔は味を感じなかった。それでも、今は食べることを苦に思わない程度にはなってきた。
「確かに、あなたも変わりましたね」
図星だったことが悔しくて、少し意地悪を言うと、霧玄さんは少し困った顔をしながら
「本当にな」
意外にも、すんなりと認めた。
あまりにも素直に認められると、とても悪いことをした気分になる。
「……家族とは、どうですか?」
咄嗟に出てきた誤魔化しはそれだった。
「それこそ、相変わらずだ。変わったことは、
「ついに反抗期ですか。どうです? 初めての反抗期は」
「大変だよ。大変だが……愛おしい」
そう話す彼の表情が、本当に「愛おしい」と、言っていたから。その表情から、目が離せなくなってしまった。それを隠すようにして、一気にお茶を飲み干す。すると、優美さんは、僕が『喉が渇いている』と勘違いしたようで、追加でお茶を淹れてくれた。
「優司くんは、どう? お付き合いを始めて、何か変わった?」
彼女もまた、一人の一般女性。こういう話には興味があるのだろう。
「一般的な恋愛とは勝手が違いますから。それ抜きにしても交際は初めてです。難しいですね」
「あら? 武瑠さんとの交際は普通だったのだけれど、何か大きな違いがあるの?」
「まぁ、相手が関係者ですから……」
上手く伝えられずにいると、霧玄さんが簡単に解説をしてくれる。
「優司は神守家の頭首。例のお相手は神楽家の娘。神守家と神楽家は仲が悪くてな。俺たちのように、神守一門と一般人、みたいな交際には弊害がなくとも、こいつらは弊害だらけ。死ぬ可能性が高いとか、人間でなくなるとか、そういう問題だけじゃないんだ。最悪の場合……」
殺し合わなければならない。と言おうとしたのだろう。が、彼女にそれを明かす必要はないと判断したのか、霧玄さんは口を閉ざした。
すると、優美さんは何かを察したのだろう、僕の目を見て、はっきりとこう言った。
「……女の子は、パートナーに守られたいわけじゃないのよ?」
核心を突かれたような感覚だった。
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