第4話:人相の悪い男たちと、目つきの悪い男
道は必ずどこかで繋がっているの精神で歩き続け、ようやく人通りの多い場所へと出た。
ほらね。迷ってもへーきへーき。
ただ……疲れた。
「まぁ疲れるはずだよ。王都の一番端っこまで来てるじゃん」
私の目の前には、大きな門があった。
王都を囲う壁の門――つまり出口。
「これは王都から出なさいっていう、神様の啓示かなぁ」
王都にいたら、あのお姫様に遭遇する可能性が高い。
そうなったら……
「まだこんな所にいましたの!? えぇい、こうなったら処刑ですわ、処刑!」
とはさすがにならないだろうけど……
「まだこんな所にいましたの!? えぇい、こうなったらわたくしの目の届かない、どこからずーっと遠くに捨ててきなさい!!」
とはなりそうだもんなぁ。
変な所に追放なんてされたくないし、先に王都から出て行こうっと。
ただ後先考えずに出て行くわけにはいかないね。
門の傍で暇そうにしている、槍を持った兵士の傍に行って地図を売っているお店が近くにないか聞いてみた。
「雑貨屋か。それならすぐそこにあるぞ」
「え、本当ですか?」
「あぁ。後ろを見てみなさい。向こうに見えるだろう?」
いや、見えると言われても……。
どこだろうとキョロキョロしていると、兵士が「ふむ」と何か納得したような声を出した。
「田舎から出てきた子か。ほら、あそこに空き瓶の絵が描かれた看板が見えるだろう」
「あ、はい。見えます」
「それが雑貨屋だ。大きな街ならどこも同じ看板だから、覚えておくといい。ちなみにベッドの絵は宿屋、いい香りがする店は飯屋だ」
「あはは、飯屋は看板じゃないんですね」
「そりゃ匂いがするからな」
納得。
「ありがとうございます。雑貨屋さん、行ってきます」
「あぁ、気をつけてな」
あの兵士、親切だったな。
門から一番近い建物が雑貨屋だった。おかげで迷うことなく到着。
店員さんにお願いして、王都周辺の町や村の位置が分かる地図を出して貰いそれを購入。
一番近い町だと、今から出発しても急げば日暮れ前に到着するらしい。
ならすぐ出発だ!
それから、今がお昼過ぎだってのも分かった。
さっきの兵士に「地図買ったよ」アピールしながらお辞儀をして門を出て行く。
あ、門の外に屋台あるんだ。
次の町に到着するまでに、絶対お腹空きそう。なんか買っとこうかな。
正真正銘のホットドックを発見。
それを紙袋に入れて貰って、あとは人形焼きみたいなのを見つけたからそれも買って、最後に水。
水は革袋に入ってたんだけど、それのジュース版はなかった。
お店の人いわく、酸化するからって。
あー、うん、仕方ないね。
さぁ、いざ出発!
えぇっと、ここの分かれ道は――
「右、かな?」
たぶん合ってるはず。
のんびり歩いてると、町に着く前に暗くなってしまう。
どこにも街灯なんて見えないこんな所で日が暮れてしまったら、絶対真っ暗になるはず!
軽く小走りしながら進んでいると、お腹が空いて来た。
「あそこまで行こう」
少し先に大きな木が見える。そこでホットドック食べようっと。
駆け足でそこまで行って、根本に座って鞄を開く。
ホットドッグと水筒、それから――
「そういえばこのカード、なんだろう?」
っとカードも出した。
ホットドッグを食べながらカードを見る。
なんだろう。特に何も書いて――え、文字が浮き上がって来た!
【このカードの所有者の証として、血を塗ってください】
……吸血カード!?
血を塗ってくれと言われても、傷をつけられるようなものがないし。
何より痛そうだから……あ、でも司祭なんだし、治癒魔法とかあるよね!
いや合っても、刃物とかないから血を出せないか。
次の町に行くまで保留っと。
「ふぅ、お腹いっぱい。そして眠い……」
日本時間だと、今頃は夜の11時ぐらいだよね。眠いはずよね。
でもここで寝るわけにはいかない。
危ないし、それに日暮れ前に町までたどり着けなくなる。
「よし、頑張ろう」
「何を頑張るんだい、お嬢さん。お兄さんたちに教えて欲しいなぁ?」
「あ?」
誰、こいつら。
男が五人、私の後ろを囲むように立っていた。
お兄さん? おっさんの間違いじゃない?
「女がひとりで旅たぁ、危ないなぁ。俺たちが安全な所まで案内してやんよ」
「間に合ってますから、けっこうです」
「まぁまぁ、そう言うなって。優しくしてやるからよぉ」
何が優しくだ。この下半身直結野郎ども!
こういう時に役立つ魔法とかないの?
魔法! 魔法の呪文出てこい!!
ステータス的なもの、無いの!?
あ、ほんとに出てきた。
スキル一覧的な?
なんかけっこうある。これ全部見てる余裕はないってっ。
「おら、こっちに来な」
「ああぁぁ、画面が消えたぁっ」
「は? 何が消えたって?」
クソぉ。動かされたら画面消えちゃったよ。
「へへへ、そんなこたぁどうだっていいじゃねえか。さぁ、俺たちといいことして遊ぼうぜ」
「嫌に決まってんでしょっ」
「おっと、気のつえぇお嬢さんだぜ」
「やりがいがあるってもんだろ?」
ファンタジーあるある。街道沿いは比較的安全。
ぜんぜん安全じゃない!
「来いってんだっ」
「痛っ、離せこのクソ野郎!」
「おいおい、ずいぶんと威勢がいい――ふがっ」
突然、私の腕を掴んでいた男が……倒れた。
「な、なん――ぐっ」
「おいっ、お――」
「あべしっ」
「うぐあぁっ」
五人が倒れ、立っていたのは私と男がひとり。
え、この男、誰?
さっきまでいなかったよね。
黒い髪の、ちょっと、いやかなり目つきの悪い男の人だ。
「おい」
「は、はいっ」
「こんな所で呑気に飯を食う奴があるか」
「え、でもここ、街道沿いだから安全なんじゃ?」
「何寝ぼけたこと言ってやがる。ここは街道からずいぶん逸れた、山に向かう道だぞ。盗賊どもとまともにやりあえるならともなく、ただのガキが通るような道じゃねえ」
街道から……逸れた……。
どこで逸れたああぁぁぁ!
あ、だいぶ前の別れ道いいぃぃぃ!
「ったく、――ぱり道を間違ってやがったか」
「ん?」
「……なんでもない。お前、どこに行く気だ?」
「え、えぇっと……ここ」
鞄から地図を出して、目つきの悪い人に見せる。
目つきは悪いけど、いい人っぽい。
「はぁ? 方角が全然違うだろ」
「やぁ、ははは。手前の分かれ道を間違ったみたいで」
「いや、そうじゃなくて……分かれ道を左に行ったとしても、その先はここだぞ」
「え……」
この人が指さしたのは、私が目指そうとしていた町のずーっと右下。
今いる場所が王都から南の方角。
行きたかった町は王都の東側。
しゅ、出発地点から間違ってた!?
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