第6話 同級生になる花谷さん

叔母と一緒に買い物をした。

今日は私達が来たということで少し豪勢な夕食にするとのこと。


ちなみに寮生は毎月食費を払い、寮監である叔母が夕食を用意するそうだ。もちろん部活などで食べられないこともあるが、その場合は自己申告し食べられなかった分は後日返金される仕組みになっている。この制度があるため、元々調理師の資格を持っていた叔母は都合が良かったそうだ。


私はそんな叔母の親戚ということもあり特別措置が取られた。

そんなに大袈裟ではないが、要は調理の手伝いだ。夕食の手伝いをする代わりにバイト代を出す。ついでに他のバイトをしたくなったら先に言えば止めても構わない。

私に有利すぎる条件に即頷いた。言われたのは買い物に出る直前である。


ここで問題が1つ。実は今日入寮するのは私達2人だけではなく、もう1人いるらしい。私達と同学年で遠方から来るとのことで最初は大変だろうからサポートしてあげてね、とのことだった。


そうして買い物袋1つとエコバック2つ分の食材を持ち帰ると、寮の前に髪の長いキャリーケースを傍らに置いた少女がいた。


「あら?もしかして今日入寮する方かしら?」

「あ‥‥はい、その、花谷 菫ハナヤ スミレと申します」

「あぁ!花谷さんね!名前は聞いてるわ。遠方からご苦労様。疲れたでしょう、すぐに部屋の鍵を渡すから待っててね」


101号室は寮監室、102号室は私、103号室はひとみ先輩、104号室が空室だったから、そこだろうか。それなら寮の1階は女子生徒で埋まったことになる。


チラチラとこちらを見る花谷さん‥‥‥。まぁ気まずいしね。

「遅くなりました。102号室の高田 幸です。寮監とは叔母姪の関係で、来年度の1年生です」

「いえ、その、ご丁寧に!花谷 菫です。私も1年生になるので同い年です。よろしくお願いします。ところで、その荷物は‥‥?」

「あぁ、私の一応バイトというか、叔母が全員の食事を作るのでその手伝いをするんです。私達が来たということで少し豪華なものを用意するらしいですよ」

「そ、そうなんですね。お料理が得意なんですか?」

「そう、‥‥‥ですね。家事は一通り出来るようにされました」

暫く当たり障りの無い会話が、続くと叔母が鍵を持ってやって来た。

「はい、おまたせしました。104号室ね。1階の一番奥の部屋なので荷物を置いて少し休んでください。喉が乾いていたら101の寮監室に今買ってきたジュースやお茶があるから遠慮なく来てね。夕食は今から準備するから、6時半くらいかな。ささやかながら新一年生の歓迎会やるからね」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあ、またあとでね花谷さん」

「はい、また後で、高田さん」


寮監室に行って買ってきた食材を整理する。

「どお?花谷さんとは仲良くなれそう?」

「まだ分かんないかな。努力はしてみるよ」

「うん、お願いね。さぁ、作りましょ」


そうして私がサポート、叔母がメインで調理という流れで次々と料理を作った。一人前ずつ盛らなくていいっていうのも楽でいいね。

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