第5話 寮生の先輩ともう一人の幼馴染み

目の前にいる男子4人。

重苦しい雰囲気すら感じるが、どういうことだろう?


「あ、さち‥‥‥荷物整理終わったの?」

逃げ遅れた。


「終わった。それで寮生の先輩達に挨拶に行こうって思ったんだけど、どうしたの?」

とりあえず聞いてみることにする。


「あ、それならここにいる2人がその先輩だよ」

「‥‥‥3人いるのだけど?」

「そっちの背の高い方が山本 裕司先輩。それと俺の隣にいる岸 亮介先輩。それと、バスケ部で裕司先輩の友達で、遊びに来てた盛山 篤志先輩。みんな2年生だって」

なんと。寮生の先輩達も揃っていたか。背の高い所謂イケメンの山本 裕司先輩と小柄な岸 亮介先輩か。守山先輩は山本先輩の友達、と。接点は多そうだ。

どの先輩に気を付ければいいのだろうか?

「はじめまして、高田 幸です。そこにいる奥野 康太オクノ コウタの同郷です。来年度からお世話になります」

「きみ、この状況でも動じないんだねぇ」

「奥野、いい友人がいるな」

「いわゆる幼馴染みか。僕にはいないからちょっと羨ましいかも」


ひとみ先輩、まだ判断が付けられません。


「それでは、この後買い物に出る予定なので、失礼します」

分からないなら全員警戒しとけばいいのだ。

元より男子と仲良くするつもりはほとんどないし。

「あ、ちょっと待」

ばたん、と扉を閉める。

早足で、足音を立てて階段を降りる。


奥野 康太。私達の幼馴染みで、親友の彼氏だった人。彼に好意を持っていた、なんてことはなく、どちらかといえば疎ましく思っていた。幼馴染みだった頃はまだ良い。だが、恋人関係になれば必然親友の近い位置に彼が居座ることになる。それが嫌だった。


自室に戻り、息を吐く。この後は叔母と買い物に行く。母からのお金は叔母経由で渡されるので、良い印象を与えておきたい。今日の夕飯は何を作るのだろう。親友との交換が楽しみで中学の頃はバレンタインやハロウィンなどでお菓子を作ったり、お弁当を作ったりしていたら、それは立派に趣味兼特技になった。


今はもう交換する相手がいないが、作業に没頭できるのは良いかもしれない。

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