第10話 牛のひとりごとpart2(京野side)
ミルクをチャプチャプ舐めながらガッツの方を見ると、あーだ、こーだ悩んでいる。うちのために真剣になってくれる人がいる、このことに嬉しくなるが、同時に申し訳なさも出てくる。
さっき、ガッツに言った経緯、頑張って読んでくれた読者の皆さんにはホントに申し訳ないんだけど、嘘やねん。
あの朝、うちにも悩むことがあって、ボヤボヤしながら歩いてたら、車に曳かれそうになったんやわ。ほしたら、ガッツんちの"ふう"ちゃんが、うちに思いっきり体当たりしてくれたん。
スッゴい勢いやったから、犬が当たったとは思えんほどめっちゃ痛かったわ。足んとこ青アザなっとる。今は黒毛で見えへんけど。足、洗ろうてもうた時、ひぇ!ってなりましたわ。
そんでそのあと、さっきの話に繋がって、自転車にぶつかるわけやねん。さらに痛いことになりましたわ。今度は全身アザだらけ、ほんで歩くの痛かったんよなぁ。
"ふう"ちゃんが急に飛び出した勢いで、ガッツが転んで頭打ったんかな、一瞬意識飛んではったんやろ。ほんで記憶がないんやな。ほんま、悪いことしてしもた。
ガッツに覚えてること正直に全部言えんかったんは、"ふう"ちゃんとガッツに迷惑かけてもぅて何となく申し訳なく思ったのが半分。
もう半分は何やろ……、正直に言ったらガッツが気ぃ悪して、今の暮らし(と言っても、ほんの数日やけど)が終ってしまうような気がして。決して、食費がかからない、とか楽だ、とかではないで。牛でいるのも、まあまあ疲れるねんで。具体的には言えんけど。アザだけやのうて。
と言っても、いつまでもこのままで言いわけない。どうにかせんとなぁ。
ガッツが言うように、ホラ吹きおじさんに会って詳しく聞くしかないかな。そうなったら、ガッツにゆうてへんことまで、バレてまうけど。
おじさん、よう覚えてへんかもしれん。うん、それにいっちょ賭けよ。
せやけどガッツがこないに真剣に取り合ってくれるとは思わなんだ。失礼な言い方やけど。あんま喋ったことなかったから、クールな他人に興味のない近寄り難い雰囲気の男子やと思てた。ちょいと見直したわ。
あのホラ吹きおじさん、どうやったら会えるんやろか。
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