第7話 牛でお散歩(京野side)

牛で散歩、原点に戻ってもうた気分やわ。そうや、こななった原因を道々観察して探ってみよ。容易に解明でけるとは思えへんけど。

今はガッツと散歩中。四足歩行にちょい慣れてきた。ええ感じやわ。

これからの食料の買い出しついでに商店街をうろうろ。なんや視界が今までとちごて新鮮やわ。

八百屋の店主はガッツに「おや、犬の散歩かい?うん?風ちゃん太った?」とか言ってる。女子に"太った"は禁物なんやで。仮にも華のJKなんやから。見た目は牛、中身は女子高生! って。

てっきり、そこで何か買っていくんかと思ってたら「ええ、最近、肉も欲しがるようになりましてね」とか適当な話をしてる。

「へえ、風ちゃんは肉食系なのかぁ」

「ええ、困ったものです……」

えらいすんまへんなあ。

ガッツは素晴らしい芸術センスをお持ちの例の『藤村精肉店』も通り過ぎて、本屋さんに入ってった。うちのリードを電柱にくくりつけて。

置いていかんといてよ。何か怖いやん?

「すぐ戻ってくるから」

絶対、敵と対決しに行って、結局逝っていまう男の台詞やん。ああ、で掛けたんやけど。

しかし、うちの予想とは違ってガッツはホンマにすぐ帰ってきよった。誘拐されへんかドキドキしたで、ガッツ。

「何うてきたん?」

本屋さんのビニール袋を指差そうとしたが、何せ牛なもんで上手く出来ない。ガッツはクスクス笑ってるし。失礼な!

「で、何を?」

ちょっと怒ってる感じになってもうたかな?

「ああ、『朝起きたら飼い犬が牛になっていたんだが』」

いや、それ書籍化してたんや?!どんな本が売れるんかよう判らんな……。

っていうか、わざわざ買うて来たんか?

「うん、カクヨムには途中までしか上がってなかったから」

あ、そう。何で会話成立してるんや?

「モノローグが口から出てるよ、京野」

何と!

「小笠原、誰と話してんの?」

うちが何か言う前にそういう声が聞こえてきた。

「あ、番長。」

声の主を見上げてつい口から出てしもた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る