第6話 牛と至福のグルメ

昨日は過去一に動揺してしまった。いや、未来込みでもダントツ一位確定だと思う。異次元のスゴさ。実際、異次元の出来事で片付けたいとこ。

昨夜、人間が牛に憑依することについて調べた、が、ヒントになるようなことはなかった、いや、そもそも前例がないのだから、当たり前か。ん~、ないと言ってしまっていいのかもわからない。

そればかりかつい似たようなフィクションにのめり込んでしまい気づいたら夜が明けていた。途中で終っていて先が気になる。

生物としての牛についてはかなり博学になった。これから先の進路を獣医学にしようと思ったくらい。でも今の偏差値じゃ……。うぎゃ、ネガなことを。

なんにしろ空腹だ、血糖値が下がると頭が回らない、ろくなことを考えない。ご飯……、何がいいかな。もし、腹を壊したら大変だから、フィジカル牛を重要視して、メンタル人間京野の味覚は悪いが二の次。

穀類メインで作ろう。湯豆腐に野菜を千切りにして。あと和風リゾット、これ即ちお粥。ちょっといいんじゃない。

エネルギー消費が半端ないし、ザ、京都な食事は嫌かも。こうなったら、漬け物を添えてみるか。昨日もステーキとか唐揚げとかほざいていた。

けど、万が一のことを考慮しないといけない。病院…家畜病院に連れて行くのはかわいそうな気がする。ペットクリニックでいいのか?


「ガッツ、おはよ。いい匂いがする。ご飯?作ってくれたん?」

「体調はどう?腹空いてる?」

レシピを見ながら作ったので自信はない。大丈夫かな、プレゼンよりも緊張する。

「わぁ、ありがと、嬉しい、食べていい?」「う、うん。」

声が上ずる。自分以外の人(今は牛だが)に作るのは初めてでこんなに緊張するとは知らなかった。

ほい、とスプーンでちっちゃくして口に入れてあげる。どた?牛は猫舌?牛舌?

「う~ん、温かくてめっちゃ美味しいわぁ。ガッツ、上手やな、ほんまに今まで作ったことなかったん?」

美味しいって言葉。こんなに不思議な言葉だったんだ。僕はきちんと誰かに使ったことがあっただろうか。作った人をこんなに感動とは。

「ガッツも食べ。食べさせたろか?」

お箸を持とうとしてる蹄がなんともキュート。今度新しい家族にするのは、牛にしよう。親には猛反対されそうだ。

「食べたら、散歩でも一緒に行こ。」

「服着る?"ふう"のだけど。」

少し、キツイみたい。でも京野は楽しそうに下を向いて自分の体を見ている。

とても暖かい気持ち。牛、京野、ありがと。

考えなきゃいけないことたくさんあるけど、今は楽しく過ごそ。なぁ京野。







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