第2話 牛が女子?女子が牛?どっちも困る
声の元を辿ると、そこには牛。これは幻聴?
「ちょっと、"ガッツ"!無視せんとって。」
えっ、え?なんで呼ばれてんの?だいたい"ガッツ"って呼ぶのはあの子しかいない。でも声の主は牛?ぬしはうし?
いや、そんなことどうでもいい。口がモゴモゴするばかりでうまく言葉が紡げない。声にならない。confusion~頭の中が銀河系~カオス!
「"ガッツ"わからへん?"京野"なんやけど。」
屈んで、というよりへたりこんで牛と見つめる。
「いやいや、京野はわかるけど、牛が京野?京野が牛?京野…人間やったよな。なんで?」
落ち着け。何が起こってる。
「うちもようわからんのやけど、なんでこないなことになったんやろ?」
はんなりとした、話し方、凛とした透き通った声。同じクラスの京野都。"きょうのみやこ"ではなく、"きょうのこと"だ。
そして彼女、京野は、僕のことをなぜか"ガッツ"と呼ぶ。
沈黙が続く。道端で見つめ合う人間と牛、人間と人間なら、ここで定番の英語"Fall in love"。
「うち、朝の散歩してたんよ。ガッツは牛の散歩?」
「牛?!んなわけない。犬と散歩。てか、犬、うちの犬どこ行った?」
「知らんわ~それよりあんな、うち、お腹空いたんよ。なんか食べさして。」
つぶらな瞳でじっと見つめられる。体は牛とだけど、瞳は元の京野のまま。
ドキドキする。顔が熱い。
「とりあえず、うちで今後のこと考えよ。」
「え~、家~。なんもせん?」
上目遣いに牛が見る。ダメだ牛に見えない。かわいい。益々、顔が火照る。恥ずかしいので急いで立ち上がる。
「はぁ?牛に何する?」
「えへへ~解体する?」
こいつ~
周りの人たちは自分のことに忙しいのか、何も気にしてこない。今が朝でよかった。そして犬友がいなくてほんとよかったと初めて思った。
牛に気づかれてややこしいことになる前に立ち去ろう。僕も喉がカラカラ、何か飲みたい。落ち着きたい。
5分程歩いただろうか、後ろから付いて来ていた牛の足が急に止まった。
「なぁ、抱っこしてくれへん?」
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