第1話 やっぱり犬じゃないとダメ?
牛を見ながら、本来いるべき愛犬のことを考える。少し似ている。もしかしてこれで合っているのか。
話は少し前に戻るが、最近新しい家族がうちにきた。新しい家族のテッパンは仔猫か仔犬。
最近は謎の猫ブームで、CMもドラマの脇役も漫画の主人公でさえ猫が主流で、犬は猫に押され気味だ。だからといって犬がかわいそうだからではなく、単に犬の散歩というものがしたくて、犬を選んだ。つまり犬に憐憫の情や人気のある猫に嫉妬したとかそんなちゃんとした理由はない。
無難と言っては犬に失礼だが、まぁそんなとこだ。ましてやとりあえず犬では断じてない。
新・家族、"風(ふう)"は、日本犬の王道、不動の人気犬黒柴犬である。そう、黒い毛並みが光り輝いていて、黒目勝ちの瞳、平安貴族の麻呂を感じさせる眉が魅力のお散歩したい犬ランキングの上位常連様のあの黒柴犬だ。 しかしうちのは、かわいい各部位をプラスするとなぜか大幅マイナスに転じてしまう残念犬である。そもそも自分も文句を言えるほどのビジュアルを持ち合わせていない。
そんな"風"と朝散歩に出掛ける毎日が始まったわけだか、想定外な厳しい現実が待っていた。
散歩の醍醐味、ステキな、できればかわいい犬友ができると大いに期待して…寧ろその為に犬を飼い始めたと言っても過言ではないのだが、現実は…。
あてがはずれたところに、ついには牛ときたもんだ。友達どころか半径1メートル内には誰も近づかないこと確定。
はてさてそんなことより、この仔牛、警察に遺失物として届けるべきか、このまま"ふう"として家に連れて帰るべきか。どちらにしろ何と説明したらよいのだろうか…これからのことを考えて途方に暮れていたら、不意に
「ねぇちょっと」
とどこからともなく涼しい透明な声がした。
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