第5話 新たな第二の人生
図書館の位置を知ってからというもの、アストリアはよく図書館に通ったりしていた。
彼女が図書館に行く目的はただ一つ。それは転生について知ることだった。
彼女は人々がどんな理由で異世界に転生することになるのか、あるいは再び元の世界に戻る方法や、転生すれば生じること、前に転生した事例があるのか等を探した。
アストリアは今日も図書館に行くと、そこでいくつかの本を本棚から抜いて、木製の机の上に持ってきた本をそっと置いた。すると、机の上には本が高い塔のように積み上げられた。
彼女は一応、本を分野や種類を問わず、目に見えるものはすべて持ってきた。彼女がそうした理由は、少しでも自分が欲しい情報を手に入れるためだった。どうせ今の彼女に時間はたっぷりある。
アストリアはまず、目の前にある木製の椅子に腰を掛けて座ると、持ってきた本のページをゆっくりとめくりながら本を読み始めた。
彼女は本の一文字も見逃さないために目を大きく開いて本を読んだ。これは転生についての情報を少しでも多く得るためだった。こうすれば一つでも得られるものがあるだろう、というのが今の彼女の考えだった。
そのようにアストリアは毎日図書館に通い、何十冊ものの本を読み、自然に異世界の知識を習得していった。
***
それからある日。
青空はいつの間にか闇に飲み込まれ暗くなり、夜になっていた。
今日もアストリアは図書館の椅子に座ると、半日近い間、本を読んでいった。彼女は最近こうすることが多い。
それから時間は流れ、持ってきた本をある程度読み終えたアストリアは、図書館の椅子から降りると、自分の体重の何倍になりそうな数十冊の本を片手に持ったまま、自分の部屋に向かって歩き出した。
彼女がこうして数十冊の本を部屋に持ち帰るのに特別な理由はなかった。ただ、それらを部屋でも読むためだった。
そのように多くの本を胸に抱いたまま、アストリアが自分の部屋に向かって歩いていたところ、彼女の後ろにはとても面倒くさい邪魔者が現れた。
アストリアの片方の猫耳がはためいて、自分の後ろをこっそり追いかけてくるある存在を感知する。
彼女を追いかけてくるそれは自分がこっそりついてきていると考えているのかもしれないが、アストリアにはすべてが分かっていた。
廊下を歩いているアストリアの後ろで黒い影がゆっくりと音を立てずに彼女に近づいてくると、その黒い影は近づくにつれてますます人間の形を帯びていった。そして人間の形に変わったそれは口を開く。
「ねえねえ、アストリア。 今、お姉さんと一緒に遊ばない?」
後ろから活発で今まで飽きるほど聞いてきた声が聞こえてくる。
話しかけてくるそれは、頭に二つの黒い猫耳をもっており、 腰まで下がる端正な黒髪、アストリアと同じ紫の瞳をもっていた。そう、その正体は姉である「アンドリア」だった。
アンドリアは黒いドレスのワンピースを着たまま、背中の後ろに手を合わせた姿勢でアストリアの後を追ってきた。
アストリアは姉であるアンドリアの言葉にも振り返らず、塔のように積まれた本を持ち、その本の高さによって見えなくなった前だけを見ながら、廊下を歩いていった。そして彼女は言う。
「ごめん、今忙しいの。」
アストリアはしばらく立ち止まり、振り返らずにそのように答えた。そして再び自分の道を歩いていく。
アンドリアはアストリアの答えを聞くと、自分と遊んでくれない妹に頬を大きく膨らませた。その姿はまるで膨らんだフグのようだった。
頬がパンパンになったアンドリアは妹の断りにも関わらず、諦めないでアストリアの後を追った。そしてアンドリアは言う。
「お姉さんが耳なでなでしてあげるよ?」
アンドリアはアストリアの耳に顔を当てながら言った。あまりにもアンドリアの顔が近くて息の音が聞こえるほどだった。
だが、そんなアンドリアの誘いにもかかわらず、アストリアの気持に変化はない。
「···························」
「うん?うん?それでもだめ?うん?」
アンドリアはアストリアの答えを待ちながら、頭を近づけてくる。
アストリアはそんな姉の言うことに、それはどう見ても自分のためのようだがと思った。アストリアはため息と共に首を横に振る。
彼女は今、遊ぶことに時間を費やす余裕はなかった。少しでも早く、自分が転生してしまったこの状況を把握することが彼女にとって一番重要なことであった。
いくら断っても自分から離れない姉のために、アストリアは仕方なく一つの方法を使うことにした。それは、
「さあ。これ。」
アストリアは離れてという意味で、アンドリアに自分が持っていた本の一つを選び、その本をアンドリアに渡した。
すると、アンドリアは顔が強ばり、まるで怪物でも見たかのような嫌がる表情をしては後ろに退いた。
「あ····ねえ·····アストリア。お姉さんは本が好きじゃないの·····。アストリアは本当に本が大好きなんだね…ハハ…」
アンドリアは遠くを眺めるような顔で虚しく言った。本が大嫌いらしい。
だが、その表情はまた元に戻ると、アンドリアは舌をならすとともに、姿勢を低くしては獲物を捉える姿勢を取る。
「あ~ん、アストリア。もう本なんか読まないで、お姉さんと遊ぼうよ~」
妹が自分の言うことを聞いてくれないことに気づいたのか、アンドリアは姿勢を低くして両腕を伸ばすと、アストリアに向かって飛びかかってきた。
「アストリア!素直にこのお姉さんに降伏しなさい! お姉さんが楽しく遊んであげるから!」
-すっ
-ぷちっ。
しかし、アストリアは自分を襲ってくる姉に、素早く黒い影に変わると、そのまま地面の中に隠れた。そして、アンドリアの突発的な攻撃を避けたアストリアは、アンドリアから遠く離れたところでまた姿を現す。
一方、アストリアに突進したアンドリアは、今回も床に鼻を打ち、アストリアが持っていた本によって埋もれてしまっていた。
これはアストリアが体だけを避けたため、彼女が持っていた本が襲ってくるアンドリアの体に落ちたのである。
顔が赤くなってしまったアンドリアは、本の山からぴょんと頭を出すと、泣き顔の表情を浮かべながら赤くなった自分の鼻を手でゆっくりと撫でた。
「ひぃん、アストリアひどいよ…。」
アンドリアは寂しいそうに言った。だが、アストリアはそんな自分の姉を無視し、床に落ちた本を素早く拾い上げ始めた。そして、また高い塔のように本を積み上げていく。
それから少し時間が流れ、本を全部積み終えたアストリアは、それらの本を両腕で抱いたまま、また彼女の小さな脚をよちよちと動きながら本来の目的地である自分の部屋に向かって歩き出した。
アンドリアはそんな離れていく妹を見て、悔しい表情を作ると言った。
「お姉さんは絶対にあきらめないから~!アストリアぁぁぁ」
***
それから少し時間が経ち、アストリアはついに邪魔してくる自分の姉から逃れ、自分の部屋に戻っていた。
彼女にとって部屋に戻ってくるのはいつも訓練のようなものだった。姉のおかげで最近、敏捷性が増したような気がする。
そうして部屋に戻ってきたアストリアは、図書館から持ってきた本を壁際の床にそっと置くと、ベッドに向かって身を投げた。
彼女は今、自分の体重の約何十倍倍にもなる本を持ってきたことと、後ろから追いかけてくるアンドリアのことで疲れがたまっていたのである。
アストリアはベットに横になったまま右腕を上に向けると、手の親指と中指をポンと鳴らした。
すると、彼女が指をポンと鳴らすと同時に、彼女の指の少し上からは黒い
(めらめら)
黒い炎は明かりが消えている部屋の中をちらりと照らし、穏やかな雰囲気を作り出した。
アストリアはしばらくの間、指に浮かんで燃えている黒い炎を眺めた。
その花火を連想させる姿は、まるで綺麗な宝石のようだった。
炎を眺める彼女の紫色の瞳には、黒炎が燃え上がる姿が反射し、映っていた。このようにこの黒い炎を見ていると、なぜかストレスが解消される気分を彼女は感じるのだった。
アストリアはストレスが溜まると、よくストレスを解消するためにこのような魔法を使ったりして見物したりするのだった。
ふっ。
アストリアは十分満足し、そろそろ燃えていた黒い炎を消した。
最近、アストリアはこのようにさまざまな魔法が使えるようになっていた。さっきアンドリアに出会したときに使った影に変わる魔法や、今の黒炎の魔法などだった。
まず、この世の魔法について簡単に説明すると、この世の全ての人間型生物は生まれた時からマナを持って生まれる。
そのうち、アストリアの種族である獣人は魔族を除いた4種族の中で、持っているマナの量が最も少なく、その代わりに身体能力が4種族の中で最も優れた種族だと知られていた。つまり、獣人は物理的な力に特化しており、魔法を使うことには他に比べて弱いということだった。
アストリアもその知識を何かの本で読んだことがあり、獣人の短所と長所については非常によく知っていた。
しかし、アストリアはそのような獣人の短所と1歳という幼い歳にもかかわらず、彼女は例外的にかなり多様な魔法を使えるだけでなく、長い間使うことができるのだった。
アストリアも最近になって、そのようなことに気づいたのか、部屋の中で一人で魔法を使って遊ぶことが多くなっていた。
魔法で遊んでいると、彼女は自分も知らないうちに時間が早く流れるのを感じるのだった。少なくとも、時間潰しにはなれた。
そうして、ただベッドに横たわっていたアストリアはベットから身を起こすと、ベットから降りてきては床に置いてあった本をベッドの上に運んだ。そして彼女はまたベッドに座り、運んだ本を読み始めた。
「今日は少しでも出てきて欲しいな…」
とアストリアは小さい声で少し呟いた後、また必死に本を読んでいった。
彼女は今までかなり長い間、図書館に通いながら本を読んできたが、それにもかかわらず転生に関する内容は一度も出たことがなかった。
そのようにアストリアは遅い時間まで、時間が経つのも知らずに何時間も本を読んでいった。
***
それから約3時間後。
アストリアが図書館から持ってきた本をほとんど読み終えた頃だった。
彼女の部屋にはトントンというノックとともに、ドアが開くと、誰かが静かに部屋の中にに入ってきた。
アストリアがそこに目を移してみると、部屋の中に入ってきたのは彼女の召し使いであるチェリーとマリーだった。彼女らはキツネのしっぽと耳を持っているアストリアの専用メイドである。
彼女らは双子なのか、かなり似ているのが特徴だった。
右には緑茶色の毛が印象的なマリーがお茶とお菓子が乗せられたキッチンワゴンを引いて立っており、左には薄橙色の毛を纏ったチェリーが立っていた。彼女らはアストリアと目が合うと、頭を下げてアストリアにそっと挨拶をしてきた。
しばらくすると、マリーが先に口を開く。
「女王様からお茶とお菓子をお姫様に渡すようにとご命令を受け、参りました。」
マリーは静かな声でアストリアに入ってきた理由を説明した。アストリアはマリーの言葉に上下にうなずく。
「うん。」
アストリアが答えると、マリーとチェリーはクッキーが乗せられたキッチンワゴンを引っ張っては、アストリアのベッドがあるところまで近づいて来た。
チッキンワゴンが近づくとともに、クッキーの香ばしい香りがさらさらとアストリアの鼻を刺激する。
そうして、キッチンワゴンをアストリアのベッドがいるところまで運んできたマリーとチェリーはワゴンを引くのをやめると、そっとベッドの上に腰を掛けて座った。
そして、彼女らはゆっくりと這う姿勢を取ると、そのままアストリアがいるベットの上まで這ってきた。
アストリアの前まできたマリーは口を開く。
「女王様の命令には、お姫様の成長に役立つマッサージをするようにという命もありました。アストリア様、よろしいですか?」
「·········?」
アストリアは暫くの間、マリーの言葉に少し戸惑い、首をかしげた。一瞬、彼女の言っていることの意味が分からなかったのである。
それからアストリアは、
「うひっ
ふぃっ、ふぅ」
二人のメイドの柔らかくて精巧な手がアストリアの成長板をゆっくりと刺激する。マッサージを受けるアストリアは気持ち良さに、ベッドに横になったまま、全く動かず満喫していた。
そうして、チェリーとマリーの成長板マッサージは数分間続いた。
約30分後。
気持ち良かった成長マッサージがついに終わった。
二人のメイドは成長マッサージが終わると、アストリアに軽く挨拶をし、部屋を出ていった。
アストリアは今までこんなに気持ちいいマッサージを受けたのが初めてであり、彼女はマッサジーが終わってからもベッドに横になったまま、すこしも動かずじっとしていた。
そして浮かれている気分のアストリアは口を開く。
「ヒヒ、こんなに気持ちいいのは初めて。こういうのはリョウタにも一度くらいしてもらいたいな~。」
と、アストリアは自分の彼氏のことを考えながらそういった。しかし、アストリアが「リョウタ」という単語を吐き出すその瞬間、彼女の笑みに満ちていた顔は時間が止まったかのように強ばってしまった。
そしてアストリアの目元には徐々に涙が溜まり始める。
「わあわあ、リョウタに…会いたい。」
結局、アストリアはこみあげてくる悲しみをこらえることができず、泣き出した。
彼氏のことを思いながら泣いていたアストリアは、空中に手を伸ばして拳を握ってみた。
「リョウタ、どこ…」
彼女の目の前には涙で覆われているだけだった。彼女は今、ここに来る前の自分にとって大切な人であった良太に会いたかった。どうしてもだ。
彼を偲びながら悲しんでいたアストリアは体を後ろに振り向くと、布団のある方に顔をぶっつけてはそのまま涙を流した。
「ふぅ、会いたい…リョウタぁ。」
彼女の泣き声が部屋の中で響き渡る。
アストリアはそうして長い間、良太のことを懐かしながら、ベッドに顔を突っ込み泣き続けた。
それから少し時間がたち、泣きすぎて顔が涙痕でいっぱいになったアストリアは思う。
もしこの世界に良太がいなかったら、この世界を滅ぼしてやろうと。
そう、実は彼女は彼がいなければいきられない人だった。そもそも、彼女が死んだ理由も全部先に死んでしまった彼について行くためだったのである。
アストリアは彼女の小さくてやわらかい手に力を入れると、強く握りしめた。
* * *
それからまた時は流れ、アストリアはいつの間にか2歳になっていた。
彼女は今まで、日々見違えるほど急速に成長していった。
アストリアはまだ2歳にもかかわらず、彼女の体は人間で言うと5歳くらいの大きさを持つようになっていた。
もともと、獣人は人間より平均寿命が約20歳ほど短い方で、肉体的な成長は他の種族に比べ、圧倒的に速かった。
獣人の平均寿命が短いのは、身体的な違いもあったが、何より自分の身体を過信し、無理をして死亡することが最も大きな理由であった。
このように、アストリアは文字通り急成長していった。
***
城内の食事室。
そこは横で長い構造になっており、中央に数十人が座ても席が残るほどの長い食卓が置かれていた。そして、そこで4人の猫王族家族は食事をする。
「アストリア、早く食べなくていいわよ。ゆっくり食べなさい。」
(もぐもぐ)
(もぐもぐ)
最近、アストリアは食欲が高まっていた。それは、彼女が今、成長期にあるからかもしれない。
「もっとください!」
口に食べ物を残したまま、アストリアは母親に言った。
「私も!」
アストリアがそう言うと、アンドリアも負けられないのか、彼女は手を挙げて大きな声で言った。
「フフッ、仕方ないですね。」
ベラは自分の娘たちを見てにっこりと笑う。
「 ああ、今メイドたちは準備してきた食事をこっちに運びなさい。」
ベラが空中に向かってそう言うと、食事室の大きな扉からは数十人の獣人のメイドたちが列を作り、食べ物が置かれているチキンワゴンを引きながら出てきた。
アストリアとアンドリアはそれを見ると、目を輝かせ、食べ物が運ばれるのを待った。
そうして多くのメイドたちが彼女らがいるところまで来ると、メイドたちは食べ物を素早くテーブルに運び、待ち焦がれていた二人は食べ物を見るや否や息をする暇もなく食い始めた。
「ゆっくり食べても誰も奪ったりしないのに·····。 ふふ。」
「.........」
ベラとアルフレットはおいしく食べる娘たちを見ながら、ただ嬉しそうな顔で眺めた。
***
それから時間は過ぎてまた、翌日。
アストリアは今日も、相変わらず図書館に足を運んだ。今日の彼女の本を読む意志はいつもの数倍のものだった。それは、昨日自分が愛していた彼のことを思い出し、意欲が高まったからだった。
アストリアは図書館に到着すると、いつものルートを行って読む本を探そうとしたが、そうせずにそのまま止まった。そして考える。
「うん…」
なぜか今日は、考えを変えて他の本棚も調べた方がいいのではないかという考えが彼女の頭の中を過った。
そうやって彼女が他のところにも行って色々と本棚を見ていると、本を探索しているアストリアの目には独特の本が入ってきた。
その本は「勝つためには」、著者:フィアネル • アルフレッドという本だった。
アストリアはその本を見ると、好奇心半分と面白さにその本を本棚から取り出し、塔のように積まれた本の上にそっと投げて置いて置いた。
そして本選びはもう終わったのか、アストリアは図書館の机に向かて歩きだす。
机に到着すると、アストリアは机の上に持ってきた本を置き、そのまま椅子に腰を掛けては本を読み始めた。
本を読めば読むほど、彼女の本をめくる速度はどんどん速くなっていく。
それからしばらくすると、アストリアは持ってきた本を全部読み終えていたが、それにもかかわらず、転生についての内容を探すことはできなかった。
今日も何の収穫もないという事実に、アストリアはため息をついた。
「はぁ…」
そうして彼女があきらめかけていたころ、アストリアの目には机の上にある「勝つためには」というタイトルの本が入ってきた。
その本は確か、彼女がさっき目にかかって選んだ本だった。そして、その本の著者は間違いなく、彼女の父であるフィアネル • アルフレットだった。
アストリアは好奇心と疑問半分でその本を手に取り、読んでみた。
『第1章 種族の特性を知ろう。』
【獣人 : 4種族のうち、最も強力な身体能力と成長速度を持っている種族。強力な身体に依存しているため、マナ能力が退化し、マナの保有量が他の種族の中で最も低いと知られている。彼らは自然を愛し、身体を動かす活動が大好きな傾向にある。政治体制は絶対王政体制。】
【エルフ:4種族のうち、寿命とマナの保有量が最も多い種族。寿命はおよそ300歳と非常に長く、美しい外見が有名であり、自然を愛し大切にするのが特徴である。彼らは主に精霊たちを扱うことにとても優れていて、自然から離れていると体が衰えるという短所がある。もし、自然から離れている状態が長期間続いた場合、エルフは死亡に至る。政治体制は絶対王政体制。
【ドワーフ:人間種族より高い身体能力とマナの保有量を保有しているが、エルフ種族より劣り、脳の大きさは人間の脳の約1.5倍と言われている頭脳が非常に良い種族。ただし、彼らは先天的に女性が存在しないため、繁殖のためには他の種族に依存する必要があり、人口が少ない方だ。 主に人間種族と親密に関係を結ぶ傾向にあり、依存する。 政治体制は直接民主制を採択していると知られている。】
【人間:4種族の中で、普通の身体能力とマナを持っている種族。国に王が存在するが、実質的には唯一神にラパエルに仕える教会の教皇が実質的な権力を持っている体制。グラウス魔神戦争以来、地球という他の星から転生者が何百年の周期で生まれると知られている。転生する彼らは「勇者」と呼ばれ、ものすごい力を持って生まれる。非常に危険な存在たち。人間は無慈悲である。】
.................
本を読んでいたアストリアはページの最後を読み、興奮したように息切れした。それは、とても気になる内容が目に見えたからである。
『地球という他の星から転生者が何百年の周期で生まれると知られている。』
ついにアストリアは今まで探していた転生についての内容を見つけたのである。
そして、彼女が興奮した理由はそれだけではなく、これはつまり、人間のいるところに行けば彼氏である良太を見つけることができるということにもなるからだった。
「これだ…やっと見つけた。」
アストリアは興奮した声で言う。もう自分がやるべきことが出来たのだった。
しかし、そうする前に、アストリアには一つ問題があった。
それは、人間の住むところはかなり広く、自分一人で彼を探すというのは無理だということだった。それに、今の自分の幼い体ではもっと無理。また、もし運良く良太を探したとしても、彼が彼女のことを気づいてくれるか、というのも確信できなかった。彼女の顔は以前とは違っているからである。
「どうしよう…」
いろいろと悩んでいたアストリアは両手で耳をつかみ、深く考える。
そうしてアストリアがこれからどうするかについて悩んでいると、彼女の後ろではフィアネル • アルフレッドが静かに姿を現した。
「アストリア、なかなか面白い本を読んでいるな。」
彼はそっと笑いながらアストリアに言った。
「お父さんが書いた本を読んだ感想はどうだい? 上手に作ったと思わない? 」
話しているアルフレッドの表情には自信が溢れていた。
アストリアはそんな急に現れた父を見て驚いた表情を隠すことはできなかった。なぜなら、彼女は自分の父親に話しかけられるまで、彼の気配を全く感じられなかったからだった。
「は··はい…。」
アストリアは父の質問にしぶしぶと答えた。
「それはよかった。」
フィアネル • アルフレッドはそう言って、アストリアの頭をゆっくりと撫でると、素早く黒い影に変わり、また姿を消した。
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