第3話 ハッピースローライフを送る
私は彼らが通る予定の道の周辺にある茂みの中に隠れて彼らを待った。
しばらくすると、遠くから三人が歩いてくるのが見える。
だが、彼らの姿がますます近づくにつれ、私の目はどんどん大きくなっていった。
その理由は、獣人であるスパータンの傷が並程度の傷ではなかったからだ。
右腕は何かによって切られたらしく、長さが短くなっており、体のところところに緊急処置で辛うじて包帯を巻いていた。
腹部も血をたくさん流したようで、包帯は血でびしょびしょに濡れている。
更に、ノーエルの姿を見ると、彼女の服は確か、洞窟で見たときは白だったはずだが、今は洞窟で何があったのかを示すように黒くそまっている。
それは、リアも同じだ。彼女の服も黒い汚れがついていた。
そんな彼らの姿見た私は驚きの表情を隠すことが出来なかった。
あまりにも驚いたせいで思わず茂みの中から出ていってしまった。
「うええっ。」
(ごろごろ)
歩いていた彼らはそんな私を見ると、急に立ち止まる。めっちゃヤバい雰囲気。
「ひぃっ!! すーっ···スライム! 魔物なんてもういやあああああ。」
リアは怯えた顔で急に泣き出した。そんなにスライムが怖いのだろうか。
一方、獣人の片腕をつかんだまま、体を支えているノーエルは、道の上に出た私を見て警戒の姿勢を取っている。やはりこうなるのか。
再びスパータンに視線を移してみると、彼は半分意識が飛んだらしく、首が少し下を向いたまま目の焦点がぼやけていた。緊急状態であることは間違いないらしい。
「あ····あの、私は悪いスライムじゃないんだ。私は君たちを助けに来た。」
警戒をしている彼女らの警戒を和らげるために話してみる。話した後、私は口にくわえていた「良太草」を道の上にそっと置いた。
すると、両肩から彼を支えているノーエルとリアは驚いた表情を見せ、片手で口をふさいだ。
「今、す····スライムが話した??」
「話すスライムは今まで見たことがないですね。」
彼女らは不思議なものでも見たかのように言った。話すスライムってそんなにおかしいのだろうか。まあ、確かにそうかもしれない。
「この草をそのスパーいや、獣人に食べさせたら、何とか助かるかもしれないぞ?。」
私はまず、「良太草」を彼女らに押しながら言う。
私の言うことを聞いて、その二人はお互いの顔を見つめ合った。どうやら、私の言うことを信じて見るかどうか悩んでいるらしい。
彼女たちは、それから少し悩んでいるように見えたが、結局、決心したらしくノーエルは素早く隣のリアの耳に口を近づけて何かささやきはじめた。
しかし、何を言ったのかは分からない。が、ノーエルのいうことを聞いているリアの表情は時間が立つほどますます暗くなり、おびえた表情を浮かべた。そしてリアは、ついに強く首を横に振った。
その様子から見ると、どうやらノーエルがリアに薬草を持ってきてほしいと頼んだようだった。
「リア様、時間がありません。 早く!」
「····················」
ノーエルはリアを急かす。だが、リアは無言だ。
しばらくの間、リアは全身が凍りついたかのように少しも動かず、じっと立っていた。が、ふと首を横に回して、苦痛に苦しんでいるスパータンの顔を眺める。
彼は顔に冷や汗を流しながら荒い息を吐いていた。
リアはそんな苦しむ彼を見て、とうとう決心したらしく、さっきの怯えた表情とは違う決心した表情をし、隣のノーエルに一度うなずいた。どうやら、やる気らしい。
リアは私の前に向かってゆっくり歩き出した。
リアが薬草をもってくる間、ノーエルは苦労してスパータンを床に寝かせる。
リアは私の前に近づきながら、決心したとはいえやはり怖いのか、両手をぶる震わせていた。その振動はここまで響くほどだった。
ついに薬草がいるところ寸前まできた彼女は姿勢を低くすると、下に落ちている「良太草」の束を拾い、猛獣から逃げるように素早く自分がいた元の場所に戻る。
近づいてくるリアを見ていた私は、彼女は明らかに背が低いにもかかわらず、目の前まで近づくとかなり大きく見えるんだな。と、ふと思った。
昆虫たちの人間を見る視点とはこういうものかもしれない。
「ふぅ…」
リアは自分の席に戻ると、何も起こらなかったことに感謝するように自分の胸をなでおろし、安堵のため息をついた。そして、リアはノーエルに薬草の束を渡す。
ノーエルはリアから薬草を渡されると、このような植物は見たことがないらしく、不思議な表情をして暫く薬草を眺めた。が、今はこうしている場合ではないと思ったのか、何度も首を横に振り、素早く自分のカバンから一つの容器と細長い棒を取り出した。それらで薬草を潰すつもりらしい。
ノーエルは腕をまくると、薬草たちを容器に入れ、棒で薬草を熱心に擦り出した。
-すーっ、すーっ
草がつぶれて緑色の水が染み出る。薬草を潰しながら、彼女は一言もいわない。無言だ。彼女がどれほど集中しているのかが分かる。ノーエルの白い肌が魅力的な顔からは一滴の汗が流れた。
それから少し時間がたち、ノーエルは薬草を全部潰したのか、鞄から一つの白い布を取り出してきた。
そして、すりおろした薬草たちをその白い布に入れ、横になっているスパータンの口の上に持って行くと、精一杯絞り出した。
白い布を伝って緑色の水が染み出て、小さな鈴がひとつの長い一筋を作り、スパータンの口に入っていった。
(ごくごく)
スパータンの腹部の方から、かすかに光が発光し、しばらくすると、気が戻ったのか彼の目には色彩が戻ってきた。そして意識を取り戻した彼は、残りの左腕で自分の体を起こす。
「スパータン様!」
「起きたんですね! スパータン様!」
起きるスパータンを見て、リアとノーエルは嬉しそうな顔をし、彼を抱きしめた。
「うぅ、頭が…、これはいったいどういうことだ?俺は確か····お母さんと何か話をしていたと思うが····。」
だが、スパータンは今この状況が理解できないらしく、頭の後ろに手をのせたまま首を傾げる。
どうやら、今の彼が言ったことは、亡くなられた自分の母のことを言っているらしい。昏睡状態に入っている間に幻覚でも見たのか。
混乱しているスパータンに、ノーエルは耳打ちをすると、この状況について簡単に説明してあげた。
10分後。
「ほぉ…話すスライムか。 これは長生きするものだな。 ハハ。」
体がある程度回復したのか、スパータンは笑いながら元気な声で言った。彼の大きな声が響き渡る。
「スライム君、どうも私の命を救ってくれてありがとう。」
スパータンは感謝の言葉を述べ、私に向かって丁寧に頭を下げてきた。私はそんな彼を見て、ちょっと慌てながら笑顔を作る。
「い··いいえ、頭を下げる必要は····ただやるべきことをしただけですから。ハハ··········」
なぜか、理由は良くわからないけど、ちょっと恥ずかしい気分だった。
「ところで、どうしてそんな目に遭ったんですか?」
私はこれ以上笑うのをやめ、早速、彼らに聞いてみることにした。大体予想はしている。今見えない一人は、大人になって間もない頃の若い人間男性だったが、この人たちの今の負傷した状況を見ると、きっとあの男が何かをやらかしてこうなったのは明らかだった。そして、自分がやったことによって、自分も命を無くしてしまったのだろう。
あの化け物でいっぱいの洞窟に入って、このぼろぼろ状態で帰ってきたというのは、洞窟で何があったとしか考えられない。
冒険家三人は私の質問を聞くと、すぐに手で顔を覆った。どうやら、悪い思いでも起こしてしまったようだ。
「シーダーのやつ…」
スパータンは顔が赤くなり、唇をぎゅっと強く噛みしめた。リアとノーエルはそんな彼のの表情を見ると,彼をなだめるようなジェスチャーをとる。
「くっ····あいつのせいで今回のダンジョン討伐は全滅するところだった········。」
スパータンは悔しいそうに呟いた。もう洞窟で何があったのかを教えてくれるらしいと思い、私は耳を澄ませた。
「うちのパーティにはもう一人の人間種族の男性がいた。彼の名前はシーダーだったが····うちのパーティはそんな彼と、ある洞窟のダンジョンを討伐しようとしていた。だが、洞窟に行ってみるとそいつはこのダンジョンは自分にはとても楽だと言って、いろいろと愚痴をこぼしていた。もっと強い魔物はどこにいるとかなどな。まあ実際に、洞窟の最初のところは毒は含んで厄介ではあるが、弱い魔物しか出てこなかった。それで、俺たちは少し油断しながら洞窟の中を進んでいった。だが、もうこのままだと退屈で仕方ないといっていたシーダーは急に自分一人で洞窟の深いところに走って行き、そこでいきなり一人で転んだ。」
話を聞いて、私は上下に頷く。なるほど、そういうことだったのか。あの時の記憶が蘇る。
「倒れた彼は立ち直ろうとした。しかし、彼はなにかに滑ったのか、うまく立ち直れなかった。彼の後を追ってきた俺が倒れた彼の下を見ると、そこには、何かの粘液がついていた。今考えてみれば、それは····多分、スライムの粘液だったと思う。とにかく、また本題に戻ると、問題はそのときからだった。」
スパータンは話すのを止め、私を見つめてきた。見つめてくる彼の褐色の目は獣の鋭い目に似ている。私はそんな彼の勢いに圧倒された。圧倒される雰囲気に、思わずつばをごくりと飲みこむ。
で、も····問題とは····? なぜかはしらんが、スパータンがめちゃくちゃ自分を疑っているような気がする。ま····まさか、すでに洞窟で会ったことをばれたりでもしたのか····?き····きのせいだよな····。あの時は確か、誰も自分の存在に気づけなかったはずだ。そ····それに、スパータンはシーダーという男が粘液に滑ったと言ったが、まさか、私の体から出てきたのを踏んでそうなったのか??いやいやそんなことはないと、私は横に首を振った。
スパータンは拍手とともに、また話を続けた。
「急にくんという大きな音と共に、周辺の洞窟の穴という穴からは多くの魔物たちが飛び出し、床に倒れている彼を襲った。一体どこからそんなに多くの魔物たちが出てきたのかは分からないが、そんな魔物らは彼を無慈悲に攻撃した。俺たちはそれを見て、彼を救うために素早く駆けつけようとしたが、変な気配に周りをみてみると、俺たちもすでに魔物たちに囲まれていた····これは罠だったのだ。魔物たちがつくった罠。もう陳列も崩れていて、彼を助けることなんて到底無理だった。それで····」
-ごほごほ、ごほご
突然、スパータンは血を吐き出した。吐き出した血が地面に落ちる。
薬草を飲んで治ってはあるが、まだ完全に治ってはいないようだった。
ノーエルは、そんな彼を見ると、彼を床に寝かせ、少し休んでくださいと言った。
そして彼女が彼のの代わりに口を開く。
「その後は····、スパータン様が私たちを守るために魔物たちを挑発するスキルを行い、すべての攻撃を受けました。そして、スパータン様は結局1匹も残らず魔物たちを全部倒したのですが、一人で魔物たちを倒したときは、スパータン様はすでに半分意識不明の状態でした。 そして、シーダー様はもう····」
ノーエルはこれ以上は言えないのか、後をつぶした。だいたいどうなったのかは分かっている。命を引き取ってしまったのだろう。
私は首を回し、一度、魔法の帽子をかぶっているリアを見た。彼女は私と目が合うと、視線を避ける。このような反応からすると、彼女はどこかに隠れてただ見守っていたに違いない。魔法がつかえるなら、少し助けてあげたらどうだと言い出そうになったが、こらえた。そこまでいうのは、無関係者である私のいうことではなかった。
ノーエルの話はまだ終わってないのか、彼女の話は続く。
「········私はまず、考える暇もなく、素早く負傷したスパータン様に治療魔法をかけ、全力で治療しました。そして、治療が終わった後は、リア様とともにスパータン様を助けながら、道に沿って近い村に向かいました。 そのうち、いろいろと大変なこともありましたが、幸いなことに、このようにスライムさんに会えて、スパータンさんを治療することができました。本当にありがとうございます。」
ノーエルは話を終えた後、私に何度も頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。
「そういうことだったんですね····。」
私は切ない気持ちで答える。本当に気の毒だった。洞窟の中であんなことが起こっていたとは、夢にも思わなかった。今まで大変だったのだろう。もし、私が彼らを助けなかったら、今頃、スパータンは助からなかったのかもしれない。そして、彼女たちはすごく悲しんでいたかも。やはり彼らを助ける選択は正しかったのだ。
「あの····もしスライムさんさえ良ければ、お名前を聞いてもよろしいんでしょうか?」
私が少し考え込んでいると、ノーエルが聞いてきた。気になっていたらしい。私は、しばらく教えるかどうかためらった。名前を教えるのはいいが、転生する前の名前を教えるのが正しいのか、それとも転生したから、何か新しい名前でも作るか。
「うーん…」
私は暫くの間悩んだ。そして、悩んでいた私は結局、そのまま今の名前を教えることにした。正直に言うと、何かいい名前は浮かんでこなかったし、何より考えるのが面倒だった。
「
私の答えを聞くと、彼女は目を少し大きくし、驚いた表情を作った。なにか珍しい名前でも聞いたかのような表情だ。
「お名前がすごく独特ですね。 素敵な名前だと思います。 私はノーエルと申します。 どうぞよろしくお願いします。 リョウタ様。」
彼女は微笑えながら答えた。
* * *
それから時が経ち、スパータンは体が完全に治ったのか、再び体を起こした。彼が身を起こすと、ノーエルとリアは彼を支えながら一緒に立ち上がった。
彼らはまた旅に出るらしく、私に向かって頭を下げ、挨拶を送った。
「私たちはそろそろ町に行きます。本日は大変お世話になりありがとうございました。後で機会があればまたお会いできればと思います。それでは。」
ノーエルは丁寧に挨拶し、別れを告げた。
「スライム君ありがとう。 君がいなかったら俺はもう死んだ運命だった。後でまた会う時は俺がおごるからな! ハハ。また会おう!いいともよ。」
スパータンは健康を取り戻したらしく、元気いっぱいな声で言った。
魔法使いのリアは、彼の左腕の後ろに隠れて頬を赤くしたまま、私にそっと手を振って見せた。どうやら、これは彼女なりのあいさつの仕方のようだ。
彼らの姿がだんだん遠ざかっていく。
私はそんな彼らの後ろ姿をしばらく眺めた。
何か一人の命を救ったと思うと、胸がいっぱいになった。これも一つの縁だろうな、きっと。
そうやって、道に沿ってますます遠ざかる彼らの姿を見ていると、スパータンはノーエルがいる方に顔を向けた。そして、顔を近づけると、彼女と唇を合わせた。私はそれを見て、目が大きくなる。
「二人の雰囲気がちょっとおかしいなとは思っていたが、やっぱりそうだったのか。」
あの二人はどうも恋人同士のようだ。
なぜか、あのふたりを見ていると、胸が苦しくなり、虚しさを感じた。この感情は一体なんだろう。今まで、ずっとそばに誰かがいたような。だが、うまく思い出せない。もうスライムに変って感情というものに無感覚になってしまったのかもしれない。
私はとぼとぼと、また自分の住みに向かって歩き出した。
***
数日後。
眠っていた私はうるさい音に、目を覚ました。目が覚めた私は半開きで、周りを見回す。
だが、周りを見ていた私はびっくりし、後ろに転んでしまうところだった。
その理由は、私の住みかに数十人の人々が集まっていたからだ。その人たちは何かを待っているらしく、一つの長い列をなしていた。
「君が噂の話すスライムなのかい?」
私がぼうっとしていると、あるお年寄りの人間が私に近づき、聞いた。
「えっ?は····はい。そうなんですが····それがなにか?」
私はぼんやりとした表情で答える。私はこの状況が理解できず、どうしてこうなったのかを素早く頭を絞りながら考えた。
しばらくすると、ピンとくる感じとともに、私には一つの考えが浮かんだ。
「あ…あのノーエルという女が噂を広めたのか····。ハハ····。」
頭の中にはあの時出会ったノーエル笑顔が浮かんでいた。頭の中の彼女はVポーズとともに舌をピョンと出す。
どうやら、彼女は村に行ってあの日にあったことを村の人々に全部話したようだった。そんなことをするような人は彼女しかいなかった。あの時、スパータンはずっと寝ていたし、リアは内気な性格でそんなことをしそうにない。ということは残りは一人だけだった。ノーエル。無論、実は話したのは彼女ではなく、自分が寝ている間に何があったのかを知りたがるスパータンがノーエルから話を聞き、酒でも飲んで彼独特の大きな声で村の人々に話したのかもしれなかった。そっちの方がなぜか納得がいく。良く考えてみれば、ノーエルもそんなことを自分の口でいいそうではなかったからそう考えた方がいいかもしれない。
だが、どっちにせよ、この結果に変わりはなかった。少なくとも、今起きたこの状況が変わることはない。
本当に、こんなことになるとは少しも予想していなかった。迂闊だったな。と、今になって私は後悔した。噂になるとは今になるまで見当外れだったのである。
「はぁ····。」
自ずとため息が出る。私は最初はここを自分だけが知っている秘密の場所として一人でスローライフを送るつもりだったが、あの人たちが言ったせいで、もうそんな人生は送れなくなってしまった。人々にこの場所を知られたからな。
もちろん、移住して住み家を変える方法もあったが、ここを捨てるのはもったいないし、それに、ここを捨てた後、ここよりいい場所を見つけられるという保証もない。
「..........」
私はこれからどうするか悩んだ。私が考えている間も、話すスライムが居たというのを聞いて人々がこっちに集まり始めた。
私は考えながら、もうこうなった以上、そんな悠々自適な人生はあきらめて、人々のために薬草をあげようかと思った。そして、それは実現してしまった。私は人々に薬草をあげたのである。もちろん、ただではなくお金をもらってだ。さっきいいアイデアが浮かんだのである。それはどうせ、こうなったのなら、商売をしたほうがいいのではないかということだった。薬草を欲しがる人は多いし、それに、この花畑には羽の形をした薬草たちがかなりある。というのは、やはり売るしかないだろうな。
そうやって、私はその日、約30名の人々に良太草を売ったのであった。
***
それから、少し時間が経った。
日が経てば経つほど、薬草を探しに私の住み家に来る人が多くなった。
ますます増えていく人々に、私は専門的にやった方がいいと思い、周辺にある木々で店を作り、そこを薬草を売る屋として決めた。
そして、商売をしながら分かったことだが、私が発見した「良太草」は、今までこの世で発見されたことがなかったらしい。そして、そのお陰か、私が発見したこの草は人々の口を伝ってどんどん「良太草」という名前で津々浦々と広がっていった。
ある日はq「良太草」を求めに、ここから遠く離れた地域から来る客もたまにいた。 獣人やドワーフのような種族だ。
「良太草」の需要が急増すると、私は不足した供給を満たすために栽培方法を開発していった。
数十回にわたって試行錯誤を繰り返し、ついに私は人工栽培に成功した。 スライムだからスラ工(?)栽培というべきかな。
それから、もっと時間は経て、いつの間にか、異世界に転生してから5年という時間が経っていた。
私はいつものように花畑に横たわって、空を眺めながら、薬草を買いに来るお客たちを待っていた。
空をふわふわと漂うさまざまな形の白い雲。雲はいつ見ても飽きない。形が毎日違う。最近はそういう雲の形に嵌まっているところだった。もう携帯もないし、これが私の唯一の楽だったのである。
そのように静かに、そしてのびのびと、なんのことにもとらわれることなく、雲をゆっくり見物していると、目に見えるある白い雲に小さな黒い点が急に一つできた。
「え、あの黒い点は何だろう。」
おかしい。鳥ではないようだったが、本当に、誰かが雲に黒いペンで描いたかのように不自然に出来ていた。黒色。なんだろう。いくら考えても、あの黒い点の正体が分からなかった。
だが、時間が経つにつれて、黒い点の大きさはどんどん大きくなっていった。
「え?
え····、
えっ?
え····!?」
黒い点は止まることなく、大きくなっていく。私はそれを見ながら、それが点ではないということに気づいた。
しかし、その時はもう手遅れだった。
黒い点はますます大きくなると,結局、それは私の数メートル先に軽く落ちた。
落ちたその周辺には黒炎が灼熱する。私はそれを見るやいなやおびえた。私は始めてこれをみた瞬間、今落ちたのが、隕石かと思っていた。
だが、予想とは違い、それは隕石なんかではなかった。それは、生命体だった。動いていたのだ!
私はあまりの恐怖さに素早くここから逃げようとした。しかし、私の体は麻痺でもしたかのように、びくっとも動かなかった。
「えっ…?!私の体どうした?か..か..からだが..動かないっ?!あ、だめだ.. 今すぐ動かないと..ああ。」
何とか動くために、もがくように動いた。だが、やはり体は自分の言う通りにうごいてはくれない。私がもしという思いで、ちらっとその空から落ちたそれの方に目を向けると、そこには紫色の瞳を持ち、黒い覇気が体を覆っているある生命体が私を見つめていた。その生命体と目があうと、その生命体の周辺にある黒炎はさらに大きく燃えた。どうやら、その様子から見ると、あの黒炎の生命体はきっと私に対して怒りを持っているに違いなかった。私、もしかして前世で何か大きな過ちでもしたのか。そんな記憶はないが。どうしてこうなったんだああ。
その空から落ちた黒い生命体を良く見ると、それは人の形をしていた。そして、その人の形をした生命体は身軽くしずしずと私に向かって歩き、近づいてきた。
「こ…来ないで…うぅ…動いて…私の体…どうして動かないんだ。…あ、だめだ。お願いだから····動いて!!」
それは、止まることをしらない。
「キやアアアアアアッ!」
それは私を襲った。
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