釜戸駅にて
雨は降りやまず電車は止まったままだった
売店で買えたのは漫画の12巻だった
知らない2巻の間に二人が死んでいた
電車はまだ止まっている
私は12巻の最初に戻る
こんなことなら期日前投票に行けばよかった
と、母は言った
本当ならば家に帰りついている時間
駅舎には壁がない
列車に戻って窓の外を見た
一人ではないということを
深く理解できる時間だった
この星に生まれたので私には母がいた
きっと この日に向かって生きてきた
一度雨の不誠実さに洗われて
明日からまた生き直すのだろう
列車が動き出すというアナウンスがあった
雨はまだ降り続いている
今も晴れ渡っているところがあるだろう
選挙が行えないところもあるだろう
星を追われてさまよう宇宙人もいるだろう
などと考えていた
新幹線に乗り換えると
星はあっという間に回っていった
読み飽きてしまった12巻のように
いつもの町へと帰っていく
長居することはない駅へと下りる
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