さよならの国境

昨日とは違う風が吹くこと。誰かの言葉で大切な扉が閉まらなくなって、誰もが入ってきた部屋で。平和が欲しい、と叫ぶ人がいた。今は平和だ、と答える人がいた。二人は殴り合った。世界は平和だった。


川が怒り狂い、公園を流してしまった。川の責任を追及する人がいれば、公園の自己責任だと主張する人もいた。公園だったところに咲いた花が新種だとわかり、責任の話は時代遅れとなった。


みんなで協力して働いて、みんなで同じだけお金を貰おう。子供の言葉を大人たちは笑った。子供たちはそのような国を実現させた。笑った大人達を追い出すでもなく。笑った大人たちは死ぬまで誰かのことを笑っていた。


太陽の様子がおかしい。熱は曲がってでも追いかけてくる。逃げて逃げて、禿げた山の中腹にたどり着いた。太陽光パネルだったものの下に逃げ込むと、熱は追ってこなかった。焚火をして一夜を過ごした。


獣たちの抜け毛を集めて、名前を付けた。何も食べない、吠えることもない。それでもしばらくすると、存在がうるさくなってきた。昨日と同じ風が吹いた。私は国を出ることにした。許可が下りなかった。正しさに絡めとられている。

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