第5話:無免許運転。

さわやかなの朝のことだった。


「幸太郎わらわは今日も大学とやらに行くのか?」


「そうだね・・・胡桃ちゃんを家にひとりおいておけないからね」


「今日はわらわがこのスクーターとやらを運転していってやろうかの」


「なに言ってんの・・・ダメダメ」

「胡桃ちゃん乗ったことないだろ?」


「幸太郎が乗ってるのを見ておるぞ」


「ダメダメ・・・だいいち胡桃ちゃんは免許ないだろ」


「めんきょ?・・めんきょとはなんじゃ?」


「バイクに乗るための資格・・・こういう証明書がいるんだよ」


俺はそう言って胡桃ちゃんに免許証を見せた。


「ふ〜ん・・・ではこれは?、なにか?」


胡桃ちゃんはミラーに被せてあったヘルメットを見て言った。


「ヘルメット・・・これ被ってなきゃ怒られるんだ」


「幸太郎、これ持ってて・・・」


すると胡桃ちゃんはカツラを脱いで俺に渡すとミラーの上のヘルメトを取って

さっさと被るとおもむろにスクーターにまたがった。


「降りなって・・・危ないから」


「で?ここを握って・・・これを押せばようのであろう?」


そしたらスクーターのエンジンがかかった。


「はい、そこまで・・・」


そしたら胡桃ちゃんは、いきなりスクーターを前に押してスタンドを外すと

いきなり走り出した。


「ひゃっほ〜」


「おい、おいおい・・・なにやってんだよ」


俺が止める間もなく胡桃ちゃんはブヒブヒーって俺を残して勝手に

行ってしまった。


「なんて無茶する子なんだよ・・・運転したこと一度もないだろ?」


普通そんな無謀なことしないって思うだろ?

まあ毎朝、俺が原チャで通学する時、胡桃ちゃんは見てたんだろうな

こうしたらスクーターが前に進むって知ってたんだ・・・けど、それに

したって乗っていくか?


走って追いかけてもな、遅いとは言っても原チャには追いつかないし。

どうしたもんかと考えあぐねていたら、しばらくして警察から俺のスマホに

連絡が入った。

あ〜あ、おまわりに捕まったか・・・。

たぶん原チャの契約書から俺の連絡先を割り出したんだろう。


結局、胡桃ちゃんはおまわりに止められて、無免許で違反切符切られた。

そりゃもう大変・・・年端もいかない女子を原付に乗せたってんで 責任者

としての監督不行き届きで俺まで怒られた。


胡桃ちゃんを連れて警察からの帰る時、おまわりに言われた。


「変わった子だね・・・わらわ、わらわっていつの時代の子なんだか?」

「こっちが質問してるのに、あれはなんじゃ、これはなんじゃって聞いて

来るから話にならないし・・・」

「おまけに悪いことしたって思ってないし、反省ないし・・・あんな子と

一緒に住んでるの? 君」


「そうですけど・・・」


「気の毒だね」


そう言われた。

しかたないんだよ、俺の時代の子じゃないんだから・・・。


で、罰金とられて警察で事情聴取受けたうえに、後日胡桃ちゃんを連れて

家庭裁判所まで行って初犯ってことで始末書かかされてようやく解放された。


まったくやってくれるよ・・・怖くなかったのかよ。

捕まるのはいいとしても、よく事故らなかったもんだって胸をなでおろした。


だけど、おまわりの言ったとおり本人はいたって反省の色なし。


それどころかこのさい免許を取りに行くんだと張り切っている。

だけどさ、胡桃ちゃんは戸籍がないんだよ・・・免許どころかなにをするに

しても、難しんだな・・・どこの誰かも分からないんだから。


俺の時代で胡桃ちゃんが生きていくには俺がついてないとダメなんだ。


「今回のこともあったし、一応言い聞かせた・・・自分のやりたいことがあっても

勝手にしないこと」

「やりたいことや興味があるようなことはまず俺に相談すること」

「じゃないと時と場合によっては取り返しがつかなくなるんだからね」

って。


「わらわは姫じゃ・・・わらわのすること言うことが一番正しいのじゃ」


「そりゃまあ、胡桃ちゃんはお姫様だし自分の時代じゃやりたい放題だった

かもしれないけど俺の時代じゃもう少し分別持ってくれないと俺が困るの」

「ここで暮らしていくなら俺の言うことをちゃんと聞くこと・・・分かった?」


「分からん・・・え〜い、分からん、分からん」


「黙れ!!俺の言うこと聞けよ!! わがままばかり言ってると俺んちから

追い出すぞ!!」


胡桃ちゃんはハトが豆鉄砲くらったような顔で俺を見ていた。


親や家来からも怒られたことなんか一度もなかったんだろう?

甘い言葉ばかりかけてちゃ、箱入り娘はつけあがるだけだからダメなんだよ。

言う時はビシッと言わなきゃ。


我に返った胡桃ちゃんは、おいおい泣き出した。

優しくするとつけあがるは、怒ると泣くわ。

自分の欲しいものを買ってもらえなかったガキみたいに号泣。


それか?・・・そんな武器くりだすのは卑怯だろ・・・勘弁しろよな。


つづく。


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