第4話:苦しゅうない良きに計らえ。

「あのさ・・・」


「なんじゃ・・・うるさい」


「大学でも言ったけど・・・まあ着物はいいとして、その髪型・・・そのうち

崩す時が来るでしょ・・・洗わなくちゃいけないしさ、でまた結い直すんだよね」

「誰がその髪型結うの?」


「おろかもの・・・そのようなこと考えもせず未来にやってきたと思って

おるのか?」


「え?どういうこと・・・?」


そう言うと胡桃ちゃんは、両手で自分の髪を持ち上げた。

するとなんと髪がすっぽり頭から外れた・・・・。


まじでか?


「向こうにいる時は地毛じゃったが、未来へ行くとなると、なにかと

不便と思って髪を剃ってカツラにしたのじゃ、幸太郎・・・頭がよかろう」


カツラが取れた頭には布が巻かれていて、地肌はどうやら尼さんみたいに

坊主だった。

一休さんみたいだ・・・ちっこい頭がゆで卵みたいでそれはそれで可愛いかった。


「あ〜そうなんだ・・・カツラ・・・ああ、なるほどね」

「それなら定期的に頭をバリカンで刈ったらいいわけか?」

「心配して損した」


「じゃ〜さ、わざわざカツラなんか被らず髪を下ろして後ろで束ねときゃいいのに」

「平安時代のお姫様みたいに・・・」


「おろかもの・・・この髪はわらわの正装で、わらわである証なのじゃ

って言ったであろう」


「はいはい・・・庶民と差別化したいんだよな?」

「もうびっくりさせられるわ・・・俺はまた日本髪とか結える美容室

探さなきゃいけないかなって思ってたんだよ・・・真剣に」


「まあカツラなら心配ないか・・・」

「それにしてもカツラとったら一休さんみたいだな?」


「またわらわに分からんことを言う・・・なんじゃそのいっきゅ〜とは?」


「日本のアニメに一休さんてとんちの効いたお坊さんの話があるんだよ」

「胡桃ちゃんみたいに頭を丸めてるんだ・・・」


「ほう・・・坊主の話か?」


「言ってもよく分かんないだろ?」


そう思った俺は胡桃ちゃんにユーチューブで一休さんの動画を見せてやった。


胡桃ちゃんは初めて見るアニメに興奮していた。


「幸太郎・・・ここに出てくる侍じゃが、わらわの家臣によく似たものが

おるぞ?」


「侍?・・・あ〜新右衛門さんか」


「わらわの家臣は、新左衛門って言うのじゃ・・・親戚かのう?」


「どうだろうね・・・そうかもね」


「あのさ胡桃ちゃん、これからずっと俺んちにいるわけだろ?」

じゃ〜さ、俺は胡桃ちゃんの家来ってんじゃなくて、胡桃ちゃんが俺の彼女に

なってくれたら、嬉しいんだけどな?」


(こんなのが彼女ってのもどうかと思うけど・・・なんてったって可愛いし)

(性格うんぬんよりまずはそこだろ?)


「かのじょ?・・・かのじょとはなんじゃ?」


「胡桃ちゃんの時代で言うなら思人おもいびと?・・・あとは許嫁とか・・・」

「愛を誓い合った人「女性」のこと?」


「なるほど・・・うん・・・わらわは幸太郎のことすこぶる気に入っておるゆえ、

かまわんぞ・・・それも良かろう、苦しゅうない・・良きに計らえ」


ラッキー・・・お姫様が俺の彼女だってよ・・・こんな珍しい体験、俺だけ。

めっちゃレアじゃん。


質問攻めには閉口だけど、姫の時代の話もいろいろ聞けそうだし・・・。


って調子こいた幸太郎だったが、彼は完璧に胡桃姫を舐めていた。


つづく。

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