第25話 偶像

他者転移魔術テレポーターによって壁の中にぶち込まれたがなんとか死に戻りには成功した。


 壁の中に閉じ込められ餓死するまで動けないと分かった時には血の気が引いた餓死した場合餓死する直前に死に戻る→餓死を繰り返すからだ。

 半分不死の俺を殺す数少ない手段だ。



 流石にそうなるわけにはいかないので変幻自在の盗賊の短剣を体内に入れめちゃくちゃに変形させ自身の体内をずたずたにして死ぬことができたが追い剥ぎ共に襲われた時以上の恐怖を感じた。


 迷宮を出ると歓声。

 俺達はマスターレベルに異様な速さで上がったことにより白銀の後継とまで言われリノレガミン最高の冒険者パーティと呼ばれるようになった。


 金髪侍が主体となって追い剥ぎ等によってピンチに追い込まれた他パーティを助けていたことも大きいだろう。


 他の追い剥ぎパーティに対しては実力差が開いていたこともあって睡眠魔法を使おうとしているアホな追い剥ぎの喉を潰して迷宮の外に半死半生の状態にして投げ捨てたり、侍が威嚇して全力で遁走させたりと殺さず追い払えたのも精神衛生上良かった。また迷宮で似たようなことしているのを見かけたら殺さざるを得ないが


 ともかく善良、美形、有能と三拍子揃った金髪侍にはファンが大量についている。

 中には一度追い払った追い剥ぎすらいるらしい

 本人もまんざらではないようで鍛錬の合間を縫って自伝を大量に売っているようだ。


 俺達も貰ったがその日のうちに戦士は便所紙、魔術士は紙飛行機、俺は着火剤にした。伝記を書いて身内に配るとか恥という概念無いのか。あるわけ無いな、あいつは。



 侍ほどでは無いものの僧侶にもファンがついている。そんなにあの貧乳がいいのか、そもそも貧乳が好きだというやつは貧乳が好きなのではなく貧乳と言われて恥ずかしがる女が好きなのだ。


 そのためこいつのファンは全員サディストの変態クズだろう。地獄の業火で焼き払われろ。


羨ましい羨ましい、俺もファンがいっぱい欲しい。もっとチヤホヤされて褒められて承認欲求を満たしたい。そもそもなんだ結局顔かよ。


 僧侶とか中身まあまあアレなのにあの人気かよ。人間顔じゃないだろ、しかし心で勝負するのは俺にとっては顔以上に絶望的だ、もっとこう、耳の形の綺麗さとかで人を判断して欲しい、それなら勝てるから。


そう思っていたら僧侶からすごい顔をしてると言われた。てめえのせいだろ、燃やすぞ。




 人気に関して圧倒的なのは美形の侍兄弟だが他のやつにもファンは多い


 魔術士は貴族とパイプを持ち始め子爵の地位を得て、戦士も傭兵たちの間で伝説となり英雄譚に歌われるようになった。

 司祭は近隣住民ほぼ全員から好感を持たれている。


 俺だけスラムのガキ共しかファンがいねえ。


 ガキ相手だったら王様になれると思ってスラムのガキに食糧を差し入れたり人生論を伝記にして配布したりしたのだが3日で完全に舐められチンカスと呼ばれるようになった。


 スラムのガキ以外の住民が俺の事を語っているときがあるが遠くからヒソヒソ言っているためどうせ悪口だろう。


 ファンの格差に嘆きながら今日も楽しい迷宮探索


 核撃魔術を何回か使わせてみせた感想だがイカれている。


 グレーターデーモンにはろくに効かないものの

 それ以外の五層新規敵に対してすらそれなりの効果を発揮する。


 特に有効なのは竜種だ。誇張抜きでこれ一発で竜の大群が全滅する。


 術への耐性をほぼ持たないという欠点がある竜種に対してはまさしく無敵の術。


 対強敵用としては魔術結界に弾かれ普通に強い止まりの術だが、これの真価は探索の効率化にある。


 今まで逃げるしか無かった竜の大群を一瞬でレベルアップ用の魔力と宝箱の山に変換できる上、雑魚散らしとしては最上位の性能を誇るこの魔術のお陰で探索効率は一切の誇張抜きで10倍になった。


 マスターレベルとその他を区別する最大の理由と言われるだけのことはある。


 また退魔の剣の検証ができたのも大きい。


 マジでこれはグレーターデーモンにも効く。


 運良く一体でいるグレーターデーモンの不意を突き戦士か気の刃にて四肢を吹き飛ばし俺がマリオネットで拘束できた事がある。


 その後、僧侶の刃に宿った燐光が大悪魔に命中。欠片すら残さず爆散させた。


 燐光付与は成功率が低い上に付与にもそれなりに時間が必要だがグレーターデーモンにすら通るのは偉い、ワルドナに通用しないという欠点があるものの探索で使えるだけで有用だ。探索を効率よく進め、強くなりワルドナに通用する力に変えればよいのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る