第20話 悪魔

いつも通り馬小屋で目覚める。 

以前司祭に、昔の私が盗賊君程の暴力を所持しているのだったら小国一つ落として地獄に変えてでもあらゆる快楽を貪っている。


しかしそれだけ強くともなおしょぼい事しかやらない君は根本的にアホで貧乏性なんだろう。と言われた事を思い出す。


 そうだよ、高いところのベットとか体に合わなすぎて寝るたびに老化が進んでいるようにしか思えねえんだよ。


 侍や魔術師の部屋に転がり込んでタダ宿を取ろうとしたこともあるんだがこの問題があってすぐ馬小屋生活に戻った。


 その上侍の部屋いたときはスラムのガキに金掴ませて大量に買い込ませた限定プリンを同じく侍の部屋に転がり込んできた僧侶に全部食われたのも最悪だった。


 思い出しただけでキレそうになってきた。

 クソみたいな気分で迷宮探索の準備をした。

 

 迷宮最強の魔物は誰だと思う?最強生物の眷属たる龍種、【レッドドラゴン】か?核撃魔術すら扱いこなす異界の魔神【マイルフィック】か?それとも俺を超す領域の使い手の地獄の道化師【フラック】か?


 迷宮五層の冒険者は絶対に口を揃えて言うだろう【グレーターデーモン】だと。


こいつは筋骨隆々の大悪魔。筋肉に反して上位凍結魔法を得意とする魔術師タイプの悪魔である。


 上位凍結魔法がどれほど人間にとっての脅威になるかは既に話したが、一発喰らえば半壊、二発で超越者の領域に達した奴以外全員死ぬ、三発で確実に全滅だ。


 当然上位凍結魔法使いのこいつも強い。魔法を止めるには基本的に発動前に殺す、睡眠魔法を使う、沈黙魔法を使うの三種だがこいつはほぼ確実にこちらの魔術を無効化する最高性能の対魔術結界を持つ。


魔法への耐性に限ればワルドナすら凌駕している。


 よって対処法は行動する前に武器でぶっ殺す一択だがこいつは肉体もマスターレベルの戦士級だ。

 一撃で殺すなどカシナート持った侍ですら厳しい。


 グレーターデーモンが亜音速に達する突きを繰り出す。


それに対応した侍が腕を正面からカシナートで貫く。


直後に侍が起動せよと叫ぶ。主の命を受けたカシナートは高速回転を始めた。突き刺さった部位を回転で破壊しつつ体勢まで崩すつもりだ。


 その意図を理解した大悪魔が即座に腕を切り落とし後ろに引く、そのまま魔術の詠唱を始めた。絶対にあれを発動させるな!俺の絶叫とともに前衛達が飛び出す。


 俺はニヤリと笑い魔術師の第六位階魔法、最強の補助魔法と呼ばれる■■■魔術を模倣し唱える。その瞬間魔術の詠唱をやめたグレーターデーモンが目の色を変えて飛びかかってきた。


 そうだよなあ、これ発動させちまったら魔術なんて意味ないもんなあ、偽物だけど。


 音を置き去りにして飛びかかってきたグレーターデーモンを領域で探知。超高速で襲い来る麻痺と毒の追加効果を持った呪爪を紙一重で回避しつつ首はねを仕掛ける、失敗。


 しかし首元に食い込んだ盗賊の短剣を紐のように切り替え首を締める。首を締められねじ切られそうになった状態でもグレーターデーモンは止まらない。


 パーティ最高の回避能力を持つ俺でも紙一重で回避するのが精一杯の体術を打ちながら再び魔術の詠唱を始める。

 戦士、僧侶、侍のゴリラ組が走ってきているが間に合わない。


 司祭魔術師はこいつ相手だと役に立たないし死に戻り確定だな。


 そう思ってたら戦士の投げた手斧がグレーターデーモンの顔面に突き刺さる。詠唱がわずかに崩れる、遅れる。しかしまだ足りない。その直後詠唱が止められた。原因は司祭の沈黙魔術。


 奇跡的にグレーターデーモンの対魔術結界を貫き沈黙魔術を通したのだ。


 ゴリラ組が駆けつけてきたので全員で力を併せて首を締めている紐を引っ張る。もう一手でもこいつに行動させてはいけない。


 全員必死になって紐を引っ張りグレーターデーモンは首をはねられた。


 こんだけ苦労して仕留めるのがやっとだった。なんでここにルビを振ったのかは勘が良い上に顔も良い皆様ならわかるだろう。ともかくこの戦いではグレーターデーモンの脅威を一割も表せてないのだ。魂に刻みつけられ分からされた大悪魔の脅威は後日言うことにする

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る