第19話 傀儡
うちの弁当当番はそれぞれ交代でやっている。
黄金の剣は俺も含めて全員料理が得意だ、得意な奴とものすごく得意なやつしかいない。
料理は侍が一番上手い。時点で司祭。
僧侶ちゃんのお料理教室とか言ってとんかつチキンカツカレーなるゴミを作ってた僧侶ですら真面目にやれば料理は上手いのだ。
真面目にやれないから僧侶なんだが。
今日の弁当担当は俺だった。
出汁がしっかり効いていて美味いだの繊細な味だの割と評判だ。司祭の作った飯の次に美味いとか言われた時は小躍りした。
食い方のきれいな侍、魔術師、司祭、戦士に食べてもらえるのは悪い気分ではない。大切に作った芸術作品に敬意を持って向き合って貰ってる気がするからだ。食い方がくっそ汚い僧侶も美味しい美味しい言いながら食ってくれるのでそこまで不快でない。
他人の為に無償で何かしてやるのは大嫌いだが何かをやって称賛を受け取るのは大好きだ。
まあ何が言いたいかと言うとこいつらに飯を作るのも称賛込みならなんだかんだ悪くないと思ってしまった。
他人に何かして良かったと思えるのは何年ぶりだろうか。
一昨日の朝から徹夜で仕込みをやって作っただけの事はある。
司祭にそういう無駄に勤勉なとこも君の良いところだよとか言われたが褒められてんのかこれ?
それはそうと今日も楽しい迷宮探索だ。
第五層での新規敵との戦いを避けた俺達にレッサーデーモンの上位火炎魔法が今放たれようとしている。
それに対し俺は悪魔を盾代わりに突撃させる。領域で敵の構造を把握するのと自由自在に操れる盗賊の短剣を組み合わせた新たな技能、マリオネット。
盗賊の短剣を糸状にして敵の体の脆いところに入れ操る技能。
通常であれば操る暇があるのならさっさと殺したほうが良い結果になるのだが対魔術結界持ちを操る場合は別だ。
人と魔物の戦力的な意味での最大の違いは魔法への耐性だろう。
こちらの魔法はなんだかんだで魔物の対魔術結界を突破できず思うように効果を発揮しないことも多いが敵の魔法は素通しだ。
俺達が上位凍結魔法を二発打ったところで敵集団を半分倒せれば上出来だが敵が上位凍結魔法を使ってきた場合一発で半壊、二発で侍が以外全員死ぬ、三発喰らえば全滅する。
最終目的である魔法使いワードナへの対策のために魔法への対抗策を考えるのは必須だ。
その対策の一つとして思いついたのが対魔術結界持ちを肉壁にする方法。レッサーデーモン程度の戦闘能力なら俺のマリオネットが通用するので肉壁として突撃させてみた。
結果は大成功、レッサーデーモンの放った上位火炎魔法はこちらのレッサーデーモンの体に吸い取られるようにして消滅した。
この分なら対ワルドナ戦で大量の肉壁を引き連れれば奴の核撃魔術を無効化するのも可能だろう。
定期的にボコボコにしているマーヴィー先生も肉壁としては理想的だ。簡単に操れるほど弱く魔術結界は上質、何より使い潰しても欠片も罪悪感がわかない。
あいつはレベルアップに使ってよし肉盾に使ってよしと本当に便利だ。
そんな事を考えていたら戦闘が終了していた。
今回の戦利品は【回復の指輪】
指にはめるだけでじわじわと傷が言えていく一品だ。
化け物じみた戦闘能力を持つが回復能力を持たない侍にもたせて完全無欠の前衛にしても良いし司祭の貧弱な耐久能力を補わせても良いだろう。
最初はそこそこ便利なマジックアイテムだなと思っていたのだが、これを侍が装備して傷が完治したら戦士に渡す、戦士も完治したら僧侶に渡す、といったようにパーティで使い回すことでノーコストで全員の傷を完全に癒やせる反則級のアイテムであった。
三種の神器ですら無いアイテムですらこれかよ、三種の神器とかマジでどういう性能しているんだ。
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