第16話 甘味
最終層への初めての侵入時はワルドナにボコボコにされたが、それでもこの短期間で最終層に入れた。
迷宮解放後最終層までたどり着けたパーティは俺たちで23組目。結構多いとは思う。しかし20組はこの階層で消息を絶ち一組は引退、残りの一組は白銀の盾だ。
たどり着くのとは比べ物にならないほど踏破するのは難しい。
それでもワルドナ以外の敵とはすぐにレベルアップと新たなマジックアイテムの入手でなんとかなる気がしていた。なんたって俺達は白銀の盾ですら到達に二年かかった最終層へ一ヶ月でたどり着いた超新星黄金の剣だ。最悪俺が体感10年くらい死に戻りしたらなんとかなるだろう。そう思っていた。しかし俺達はこの階層と10ヶ月程向き合う羽目になる。
五層の探索初めて三日目、
俺達は死に戻りと敗走を繰り返していた。
基本的なモンスターは四層までとそこまで変わらないが5層になって追加された奴らが化け物だらけ。
5層追加敵と接敵したら逃げるということを徹底しなければ生き残れない。
その代わりにマジックアイテムの性能は桁違い。今までのマジックアイテムは盗賊の短剣と窒息の指輪以外はぶっちゃけ地上の技術でもそんな苦労せず再現できるものばかりだ。しかしこの階層では三種の神器と呼ばれる魔除け級の反則アイテムが存在する。その上敵から吸収できる魔力量も桁が違うためレベルアップもガンガンできるだろう。
要は超ハイリスクハイリターン。辛いがそれに見合う見返りがあるというのはワルドナという大陸最強の存在を打ち倒そうとする俺たちにうってつけだ。最高の訓練場となるだろう。
そう思っていた俺を殴りたい。
五階層は超超超超超ハイリスク過ぎてリターンが全く釣りあってない。
最大の理由は戦闘力最強の魔物【グレーターデーモン】でもなく地獄の道化師【フラック】でもなく核撃魔術を扱いこなす魔神【マイルフィック】でもなかった。
最悪の魔物【ヴァンパイア】
このボケカスのせいだ
こいつの最大の脅威はレベルドレイン。ナイトストーカーと同じ能力であるがこちらは複数レベルを下げてくる。そのためいくらレベルアップ用の魔力をためてもこいつの引っ掻き一回ですべてが霧散する。一ヶ月かけて稼いだレベルアップのための稼ぎが一瞬で消失するのはまさしく地獄だろう。死に戻りでレベルドレインを踏み倒せる俺でも誰か一人でも引っ掻かれた時点で自殺を強要される。
その上こいつはレベルドレイン意外カスなナイトストーカーと違って普通に強い。魔術へのそれなりに高い抵抗に加えゾンビと同じく麻痺能力を持つ。単純な身体能力でもレッサーデーモンよか強い。
そんな奴らが複数群れて現れるのだ。
強いやつが徒党を組んでんじゃねえぞ殺すぞと何度も言った恨み言が漏れる。
7体で現れたこいつらの不意打ちで全員麻痺させられた結果最終的に俺はレベルが0になるまで殴られた。レベル0になると全身の構成物質が徐々に崩壊して遺体すら残らず消滅し死ぬということがわかっちまった。
10回戦闘すれば内1回はこいつらと戦わなくてはならない程遭遇率が高いのも頭おかしい。
他の五層到達連中はマジでこいつの対処どうしてたんだ?
しかし四層でもナイトストーカーとかいうゴミがいた代わりに格好のカモであるファイアジャイアントがいた。
それと同様にこの階層にもカモがいる
名は【フロストジャイアント】
五層追加組で例外的に唯一強くない敵だ。
氷をまとった5メートル程の巨人。
こいつは見た目はヴァンパイアより強そうだがかなり弱い。
巨体であるもののその肉体にはレベルアップによるブーストがかかっていない、でかいだけのレベル1の人間と同じでくのぼうだ。
その上冷気もマイナス100度という五層に潜る冒険者にとっては虚仮威しみたいなものだ。
おまけに氷使いなのに氷への耐性がない。摂マイナス200℃しかない上位凍結魔法でも死ぬ。ファイアジャイアントとほぼ同じ、殴ってるだけで倒せる相手だ
しかし五層最下層の戦闘力に反して倒したときに得られる魔力は五層で最上位。その上ドロップ品も優良だ。
何度もこいつをターゲットにした狩りを行った結果、俺達が入手したのは【カシナートの剣】
切断の魔術がかかった刀身は魔術へ耐性がない物質ならば鋼鉄ですら一刀両断にする。
起動せよ《エクスペールギースキー》と言う事により刀身が回転する効果もあるためかき混ぜ機としても使える一品だ。
これを使って侍が作成したケーキは大好評であった。甘いものをあまあまさんと呼び異常に好む僧侶はもちろん、甘いもの嫌いそうな戦士からも絶賛されていた。世の中に蔓延る甘いもの好きアピールするゲボカス側溝クソビッチと甘いもの好き好きアピールに弱い脳みそ全身チンカス海綿体クソ男のせいで男が甘いもの好きと言うのは公言しづらい世の中だが俺も甘党だ。無駄に旨いケーキは五層で折れそうになった心を癒やしてくれた。
しかしホントこいつ何でもできるな。
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