第11話 四層

 瞬く間にレベル8、一般的にはネームドと呼ばれるレベル帯まで到達し迷宮都市において裏社会の王となっていたアータンを討伐した俺達の名声は迷宮都市に轟いた。


 ネームドクラスまで上がった冒険者は一個小隊に匹敵する戦力だ。

ネームドクラスまで上がった冒険者は一個小隊に匹敵する戦力だ。この迷宮都市でもネームドは冒険者全体の5%程度しかいない。


 本来何人もの犠牲を出しながら5年程迷宮に潜り続ける事でやっとなれるのがネームドだ。


身一つでどんな国にも受け入れられるしここで迷宮探索をやめても食うのには困らないだろう。


 そんなネームドに潜り始めて犠牲者もなく三ヶ月まで上り詰めた俺達の成長速度は異常だった。


ここらで引退してもそれなりに良い暮らしはできる程度には強くなったし迷宮探索をやめる事も選択肢に入ったが他の連中はワルドナを倒すまでやめる事は考えてないらしい。


司祭、侍、僧侶はともかく現実主義で家を再興させるのが目的の魔術師と老後の資金を貯めるのが目的の戦士まで引退しないのは意外だった。


何故かと聞いてみたが人格はともかく能力は超一流のメンツが揃っているのだからやれるとこまでやってみたい。特にあの金髪兄ちゃんの戦闘力とお前の指揮能力は異常。俺達に夢を見せてくれたのだから最後まで導いてくれ。

とのことだ。


なんども死に戻りを繰り返した中の良かった結果のみを観測しているから俺が有能な指揮官であると誤解しているのか。



まあ良いか、せっかく有能な手駒と死に戻りがあることだし俺も行くとこまで付き合ってやろう。






 本日の戦闘は4層で行った。

 この階の強敵と言えば空駆ける亜竜【ワイバーン】


 摂氏2000度に及ぶブレス、飛行能力による圧倒的アドバンテージ、馬鹿力に加え毒による二次被害までついてくる物理攻撃。


 そんなのが俺たち以上の数で出現するのだ。


 単体で強いやつが徒党を組んでんじゃねえぞ殺すぞ。


 そう思ってる内に5回死に戻りする羽目になった。


 しかしこいつは窒息魔法が有効なのを発見してからはただのカモとなった。

 先手取って侍か魔術師が動けば全て終わるのだから。

 しかしこいつも弱い敵判定なのか、窒息効く以外弱い要素ゼロなんだが。


 後は【ファイヤージャイアント】

 炎をまとった5メートル程の巨人。


 こいつは見た目はワイバーンより強そうだがかなりと弱い。


 巨体であるもののその肉体にはレベルアップによるブーストがかかっていない、でかいだけのレベル1の人間と同じでくのぼうだ。


 その上火炎も摂氏100度という四層に潜る冒険者にとっては虚仮威しみたいなものだ。

 

 おまけに炎使いなのに炎への耐性がない。摂氏500℃しかない上位火炎魔法程度の熱でも死ぬ。情けねぇなと思ったが普通は体温の5倍の温度をぶつけられたら死ぬか。


 普通の人間なら200度近い炎をぶつけられるようなものだ。


 こういう事を考えるとき俺も普通に人外になってしまったと感じる


 しかし四層最下層の戦闘力に反して倒したときに得られる魔力は4層で最上位。何度もこいつをターゲットにした狩りを行った結果、俺達は平均レベル10にまで上がった。こいつで稼ぎを行うのは本当に美味しい。


 逆に最悪な稼ぎ効率を持つのは目の潰れた不気味な二足歩行生物【ナイトストーカー】


 こいつの戦闘能力はファイアジャイアント以下なのだがレベルドレインという特殊能力が最悪だ。

 この特殊能力が発動するとレベルが下がる。

 冒険者は一レベル上げるだけでも血を吐き泥を啜るだけでは足りず、更に多くの血を吐き泥を啜るような経験をしているのにこいつはそのレベルをたった一回の攻撃で吸い取ってきやがる。

 はっきり言って迷宮内最悪の魔物だ。


 俺はレベルを吸われても即座に死に戻りすれば問題ないが一般の冒険者にとってはドラゴン以上に戦いたくない相手であることは疑いようがない。




 後印象的な新顔と言えば【レッサーデーモン】

 か。

 マーヴィー先生が使っていた魔力結界にてこちらの魔術攻撃を一定確率で無効化してくる。


 我がパーティ最強の攻撃魔法である侍と魔術師による合体融合氷炎魔法【メ◯ローア】ですら無効化されたらなんの影響も及ぼさない。


 魔術師の天敵と言っても良い凶悪な特殊効果をもつ怪物だ。


 その上そこそこ能力の高い魔法使いでもある上、対魔法使いの基本戦術である先手をとって沈黙魔法を掛けるのが通用しづらいのがきつい。


 他には毒と音と炎の三種のブレスを使い分ける【キメラ】

 体内の石を超高速で射出することでブレスのような攻撃をしてくる巨大な牛モンスター【ゴーゴン】が新顔か。こいつらも強い。

 キメラとゴーゴンの融合ブレスで一度死ぬ羽目になったからな。


 しかし戦利品も美味い。

 いくつか鎧を新調できた上に窒息の指輪という起動することで窒息魔法を発動する凶悪な一品も先日入手した


 そして本日も戦利品を手に入れた

 いつも通り俺と魔術師が罠を特定し俺が罠を解除する。その後は司祭に回して鑑定結果を待つ。


 鑑定していた司祭が大喜びしていた

 盗賊君前からこういうの欲しがっていただろと言いながら教えられた鑑定結果はまさにおれが理想とするものだった。


 アイテム名は【盗賊の短剣】

 盗賊向けの武器としては間違いなく最高峰の性能を誇る短刀だ。


 所有者の意志に応じて形を変化させる付与効果があるため一瞬でレイピアの様に伸ばし擬似的な飛び道具のようにしたりメリケンサックの様な形に変化させて敵の攻撃を流したりしても強い上、シミターやトライデントの様な特殊な武器の形に切り替え厄介なところに急所がある敵に対応する、相手の体内に突き刺したあとめちゃくちゃに変形させて相手の体内をぐちゃぐちゃにする。等発想次第でいくらでも応用が効く武器だ。


 応用性は地獄のループにハマった際に大きな力となるだろう。なんせ考える時間がいくらでもあるのだから。


 また武器としてだけでなくピッキングツールとしても最高の性能だ。水を武器内に取り込んで宝箱の奥深くに潜む火薬にかけてしけらせるなど通常ピッキングツールでは不可能なことができる。


 上記のメリットが霞むくらい素晴らしいのが能力を解放することで所有者を忍者に変える効果があること。


 忍者とは戦士と盗賊の合の子の様な職であり、冒険者の職業8つの中で最もレアだと言われている職業だ。

 戦力を落とさずパーティに鍵開け要因を入れられるため強力な職業だが、致命的にレベルアップが遅いというデメリットがある。

 しかしこれを使えば話は別だ。


 レベルアップの速い職業でレベルを上げてから能力解放すればデメリットをある程度ふみ倒し高レベルの忍者となれる。


 まさしく俺が求めていたものだ。自分の事の様に喜ぶ司祭とともに喜びのダンスを踊った。いい大人が何やってんだ、恥ずかしくないのかとか言われそうだが俺の生き様の方が100倍恥ずかしいので許して欲しい。


 しかしこれはレベルをできる限り上げてから使ったほうが良いな。


 使うのは最下層、5層に突入するほど成長してからにしよう。

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