第10話 刎頸

戦闘は終了した。


 戦士は順当に勝利していた。


 魔術師は沈黙魔法で魔術を封じられた後でも俺が教えた簡単な近接戦の技術を使い敵魔術師を斬り殺していた。


 僧侶も敵僧侶を撲殺し俺の心臓も修復した後兄さん兄さん言って泣きながら侍の腕を治療してる

 敵司祭は何か死んでた。


 あの瞬間超集中状態に入り、最適解を取ることで奇跡的にボーパルバニーの首はねに近いことを行ったがもう現在の筋力では二度と同じことはできないだろう。奇跡は何度も起きないから奇跡なのだ。


 しかしこれで分かった。俺も首はねはできると。

 安定してうつには盗賊の筋力では馬力が足りず戦士に転職しようものなら領域が使えなくなって急所攻撃ができなくなるため本末転倒。


 しかしこの迷宮に存在する無数のマジックアイテムの中には筋力を跳ね上げるものだってあるはずだ。もしくは筋力が戦士並になるほど高いレベルになるのでも良い。とにかく安定した首はね能力さえ手に入れば俺の戦闘能力は跳ね上がる。侍と並んで戦えるほどに。




 これで殺した人数は三人か。

 母さん曰く殺した人間が三人になるとそいつは地獄送りになるらしい。


 これで俺も地獄送りだな。


かすかな胸の痛みとともに自嘲する。


 中途半端に善意が残っている自分の半端さに腹を立てつつもこの不快感がかろうじてこいつらと同じ側に行かぬよう踏みとどませてくれているのだろう。


 そして俺がこう感じているということは他の連中はそれ以上に辛いだろう。酒で全部忘れるか?


 人殺すたびに宴会やるのはもはやキチガイだとは思うがこうでもしないとやってられん。宴会やるのが満場一致で決定した。


 宴会までに司祭は魔術師と魔法の訓練を行い、僧侶と侍の兄弟は買い出し、俺と戦士は今後の方針を相談していた。


 戦士は学の無さは所々から伝わってくるものの、頭の回転自体は早く相談相手としては最適だ。


 善人が聞けば嫌がりそうな話を堂々と話せるのもでかい。


 魔術師でも良かったのだが奴はところどころ抜けているところがある。


 こいつはパーティ結成から今に至るまで安定して無愛想だが、だからこそ信頼できる。

 方針を語るのは3時間ほど続いた。


 



 今までの文を読んでもらえれば分かると思うが基本的に俺は他人に興味がない。

 自分と関わりがあれば多少の興味が持てるのだが他人同士の関係なんか死ぬほどどうでも良い。


 それは今までそういう描写がほぼ無かったことからわかってもらえると思う


 それでも最近になって少しずつだが他人同士の関係に興味が持てるようになってきた。


宴会中はとりあえずリーダーポジの威厳もどきを保ちながら適当にご機嫌をとるつもりだった。


 侍の戦闘力を絶賛したところ、確かに僕は超強い、おまけに超絶顔も良い、実家も金持ちだし、高度な教育も受けてる。おまけに妹も可愛くて優しい…アレ、もしかして僕恵まれ過ぎてる?これはもうなんかの罪に当たるのではとかほざき始めたのではっ倒したくなった。


 妹の顔を絶賛したところ、確かに私は超可愛い、おまけに超絶強い、実家も金持ちだし、高度な教育も受けてる。おまけに兄もイケメンで優しい…アレ、もしかして私恵まれ過ぎてる?とか抜かした上に【かわいくってごめんね!】とかいうオリジナルソング歌い始めたのでこいつもビンタしたくなった。


 この後も続く宴会中の侍と僧侶のクソアホブラコンシスコン兄弟によるコントみたいな奇行やら、司祭と魔術師が弟子と師匠みたいになっていることとか戦士と侍がタッグを組んで色街に突っ込んでいった話とか司祭と僧侶がいっしょに温泉いったという話とか魔術師が僧侶に告白して振られた話といったたわいも無い話をした。


 何度か頭の血管が切れそうになったが他人同士の関係を知って楽しむことができた。


壊れちまった俺がまともな人間らしく過ごせた本当に楽しい宴会だった。

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