第9話 強者

この大陸の強者を4人上げろと言えばといえば間違いなく【白銀】【剣聖】【賢者】【盗賊王】になるだろう。


 白銀は以前言った最高の冒険者パーティ【白銀の盾】のリーダーであるレベル15の君主の異名。

 君主という職業は戦士と僧侶の合いの子みたいなクラスだが侍ほど中途半端でないためかなり強力。その上こいつは専用マジックアイテムの効果で即死を始めとする状態異常への耐性と自動的に傷が癒える自己再生能力も兼ね備える。

 直撃すればどんな魔物でも即死させる必殺技【退魔の剣】まで持っていたらしい。なんでこいつ二層で行方不明になってるんだ?


 【剣聖】はお触れを出した馬鹿、狂王トルバーの事だ

 レベル21の侍。白兵戦においては間違いなく大陸最強。

 全ての系統内黒魔術を使える。

 白魔法を全く使えない欠点があるがそれを魔除けで補っていたため無敵


 【賢者】は魔術師ワルドナ、単体戦力にて大陸最強。

おれたちが打ち倒し魔除けを強奪しようとしている男のことだ。

 昔は民の事を心底大切に思っている軍属の魔術師であった。しかしあまりにも他人に同情しすぎるあまり色々と考えすぎて狂った。

 戦争をなくし平和な世界をつくるために、全ての人間を麻薬付けにし洗脳し快楽を貪るだけの物体に変えるのが目標。

 悪い意味の合理性が遺憾なく発揮され魔除け関係なく世界の敵と化している。


 思考回路もそうだが魔術もヤバい。

 黒白問わず全ての戦闘型系統内魔術を使える高レベルの戦士というだけでも恐ろしいがそれ以上に恐ろしいのが戦闘外系統外魔術。

 麻薬精製、性転換、洗脳から魔除けの作成までやれることが異様に多い。こいつと戦うのは戦闘力もそうだが敗北したら何をされるか分からないのが何よりも怖い。


 盗賊王、こいつは俺もよーく知っている。まずは最悪な人間を思い浮かべてみよう。そしてそいつを10倍凶悪にしてみよう。その想像が子供の遊びにしか思えなくなる悪党がこいつだ。


 盗賊とはいうが職はレベル17の戦士であり、ワルドナとの戦闘で行方不明になったものの未だにこいつへの恐怖は大陸に染み込んでいる。


 そして今戦っているのがこいつの側近であったレベル13の侍である男。アーダン、そしてその一行。なんの因果が知らないがパーティ構成は俺たちと一緒だ。


 こいつら御主人様が行方不明になったあと落ちぶれ単なる追い剥ぎにまでなったようだ


 

 領域での間合い管理により四人目の前衛として働ける様になった俺が敵盗賊に突っ込む。 

 敵盗賊の斬撃を僧侶を模倣し短剣で受け止めて戦士を模倣し切り返し侍を模倣して切り裂く。

 領域も併用し急所を切ったことで敵の盗賊はあっさりくたばった。


 いくら俺に模倣する能力があっても侍の全ての技術をコピーするのは身体能力が違いすぎて無理だ。戦士の模倣もかなりきつい。ので基本的には僧侶を模倣し技術が必要なら戦士に切り替え、侍のコピーはここぞというところで使うことで戦闘力を補っている。


 お互いの一行の睡眠魔法の詠唱をお互いの一行の沈黙魔法が妨害する。

 お互いの戦士がぶつかりあい高レベルな近接戦を繰り広げる。

 何故か硬直して動きが停止しているこちらの司祭以外のお互いの戦力は互角のようだ。

 侍枠と盗賊枠を除いて。


 言いたくないがアーダンは強い。侍ですら押されている。盗賊を倒してフリーになった俺も援護に入ったが領域をフル活用しても有効打を与えるイメージすらわかない。

 そうこうしている内に侍が両腕を飛ばされた。

 今まさにトドメをさされようとしている


 侍は嫌いだし幸せになってほしくはないがそれ以上に、大嫌いなクソ野郎によって殺されるのはもっと見たくない。

悪人ごときが善人より幸せに生きるなんて許されない(俺様は例外)。お前クソクズによって蹂躙されて良いほど悪いやつでは無いだろ。


 その瞬間時間が停止した。頭の中を死に戻りで見てきたいくつものビジョンが駆け巡る。その中のボーパルバニーの跳躍を模倣し突撃。

 奴がターゲットを俺に切り替える。その瞬間侍が口で咥えた刀でアーダンの利き腕を跳ね飛ばした。


 その隙に俺の首をはねたときのボーパルバニーの攻撃を完璧に模倣する。


 俺の刃が奴の首の細胞と細胞の隙間に最適な角度で突き刺さる。相手も必死で逸らそうとする。移動する首の最も弱いところに斬撃を合わせていく。


 過剰な集中で脳が焼ききれそうになる。首を切られながらも奴が突き出した剣が俺の心臓に突き刺さる。命が失われる感覚があるが関係ない。剣を相手の首の最も脆いところに最適な角度で併せ続ける。もっと先へもっと前へ。


 アーダンの首が跳ね飛ばされた。ほかでもない俺の手によって。レベル13の侍をレベル8の盗賊が仕留めたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る