第4話 帰還

 まず初めに対処し始めたのはガスドラゴン、何度も焼き殺されてわかったのだがこいつのブレスは威力にムラがある。


 それに気がついた後観察しつつ二三回死んでみると外傷がついている個体程ブレスの火力が低い。


 体力が減っているのがブレス威力低下につながるのではないかと推測してパーティに伝えてみたところ、戦士がスリングショットで、侍が真空波でブレスを吐こうとしているやつを集中的に殴る戦法になった。


 結果ブレスの脅威が一瞬で死ぬレベルから時間をかけてレアステーキにされ運が悪ければ死ぬぐらいの脅威に変わった。


 クリーピングコインは個々は恐ろしく打たれ弱く電撃への耐性もないことに気づいた。


 魔術師の電撃魔法が特攻レベルに有効であることも。


 広範囲に電撃を飛ばすこの魔法は範囲だけは優れているが威力は火花以下という使い所の難しい魔法であった。


 はっきり言ってしまえばゴミ。


 しかしクリーピングコインに対してはゾッとするほど有効。


 寒気がするほど効率的にクソコインの命を奪い取った。


 一番厄介だったのはゾンビ、こいつは長らく有効な戦法が見つからず麻痺させられない方法がないか、火炎やらなんやらの有効な黒魔法はないか等探していたが1000回目あたりのループで僧侶が謎の光柱を発現して消し飛ばしていた。


 その後500以上のループを重ねて解析してみたところその能力は亡者に憐れみをかけて天に帰ることを祈り、動かぬ死体へと戻す特殊技能だ。


 アンデッドを還すことからターンアンデッドと名付けたこれをループ毎に僧侶と司祭に教えゾンビへの対策も盤石になった。


 対策をゴリゴリに立てた事によって迷宮内での黄金の剣の動きは格段に良くなった。


 帰還が夢でなくなるほどに。


 それと同時にパーティメンバーの本性も大体分かってきた。


 侍は独善的で傲慢なまあまあカスな人間ではあるものの本当に善良な人間になろうと必死な人間であった。


 パーティ全滅直前だろうが内蔵が飛び出し両目が潰れようが自分以外に生き残りがいる限り必死で足掻く。


 俺も何度も死にものぐるいになったこいつに庇われ命を助けられた。


 まあ結局俺が死んでるんだから役立たずだが、恥を知れ。


 遺言で英雄になりたかったとか言い出してるのもまあまあウケる。大人になれよ。


 後は戦士だ。


 こいつは基本自分が最優先だが契約を自分の命以上に大切にするためものすごく使い勝手が良かった。


 ドライなものの最低限の情はあるようで恩を売れば文字通り死んでも返してくる。


 それを利用して危険地帯への偵察に何度も送り込んだりできたので便利だった。


 僧侶はこの階層で意地汚い、なんか体臭が酸っぱい、メンタルが弱すぎるとか知りたくない要素がポンポン飛び出してきたので記憶から消している。


 頭から下をブレスで黒焦げにされた時、私の乳がなくなっちまったとか言い出し始めたときはもうマジでこいつだけ置いて行こうかと本気で考えた。そもそも元からないだろお前。


 こんなんでも知能自体は高いのか1を言っただけで10を察して俺の思い通りに動くのが質が悪い。あと侍と同じく内蔵飛び出しても他者が生き残っている限り立ち上がる。


 魔術師は今まで無口だったのは貴族のボクチンがこんな下賤の民なんかと喋れるかみたいな思考が理由だったらしい。


 それでも俺が有能なリーダー(に見えるぐらいループを繰り返してそう見えるように演技をした)だと分かると下民にも劣る俺は一体何だとか暗いモードに入ってるのは受けた。


 そこに優しい言葉をかけて即懐柔、多分俺があってきた人間の中でも一番チョロいぞこいつ。


 司祭はもともとなんでこんなところに来てるのかわからないといったが危機的状況にて異常なまでの自己犠牲精神があると分かった。


 なんか今までの罪がどうだとか自分はもう長く生きたからあなた達は生きてくれとか自分の中の闇がささやくとかなんとか言っていたがなにいってんのかわかんねえよ、馬鹿にもわかるように話せクソボケ。


 後日この意味が分かったが相当混沌とした過去持っていたぞこいつ





 しかしかなり良いところまで行った回で俺を残してパーティが全員死亡俺一人だけ残して戦闘が終了した。


 俺が死ぬ直前に戻るという死に戻り能力の特性上この状況になると自殺しても仲間が生きていた頃まで戻れない。


 この後俺がどうやって帰還したかは語りたくもない。


 ただ一つ言えるのは体感で5年かかったということだけだ





 迷宮からの帰還後アホどもの死体✕5を担いで寺院に向かう。


 迷宮内で死んだ場合魂が肉体に残るため寺院へ行けば蘇生できるのだ。


 いくつかデメリットは存在するが。


 1つ目は寺院のクソ共に払う喜捨代が高い(喜んで払ってないのに喜捨って何だよ)事。


 大体1000ゴールドあれば一ヶ月遊んで暮らせるのだが今回の蘇生にかかる費用は5人分で計1500、今までのパーティの稼ぎのほぼ全額だ。


 2つ目は蘇生は確実ではないこと。侍以外の4人は割とあっさり蘇生したが侍は灰と化した。


 蘇生に失敗して灰となった人間は次の蘇生でよみがえれなければこの世から完全に消滅する。

 その上灰からの蘇生は料金が二倍になるとかいうクソ制度もついてやがる。


 まあ迷宮外なら一発で死んでいるような外傷を受けても二回も生き返るチャンスがあると考えればまだ全然良いか。


 最悪侍が死んでもその瞬間俺が切腹して死に戻りで時間を戻せばなんとかなるため大した問題ではない。


 そんな事を知らない他の連中が緊張しまくってる中二回目の蘇生によって侍は生き返った。


 なんか必死で俺が運んできた事とか、この回、こいつの目線で見れば俺が常に最適解の指示を出す天才に見えていたこととか、俺が私物の防具売っぱらってまで助けた事とかを見て君を勘違いしてた。


 君こそヒーローだ。君のようになりたい。ヒーローになるために学ばせて欲しいとかほざき始めた。


 正直生まれてきて一番笑ったかもしれん。


 ヒーローという言葉から最も離れてる人間だろ、俺


 蘇生した発言の臭い兄と物理的に臭い妹が抱き合って再開を喜んでいる中、俺は寺院を去った。まだやることはいくらでもあるからだ。



 その後他の連中が休んだりしてる間もボッタクリクソ商店と交渉をしたりターンアンデッドの復習をさせたり他の奴らの新魔法を確認したりとやることが多すぎて結局俺が寝れたのは脱出の3日後だった。クソッタレ。


 トドメに俺が必死で後始末している事も知らずに色街行っていた糞侍と不審者扱いされ逮捕されて俺の仕事を増やした糞僧侶のバカ兄妹を頭の中で張り倒す。


 マジなんなんだてめえらはよぉ…


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