第2話 サンタクロース・ラスト ミッション02
そもそも多くの子供は、何歳までサンタクロースを信じているのか?
調べてみると、7~8歳ごろまでは、サンタを信じていたという回答が一番多いらしい。
小学校2~3年生までと言うことになる。
ちなみに、オレ自身には、サンタを信じていたという記憶がない。
世代の違いや親のタイプもあるのだろうが、クリスマスプレゼントは、親と一緒におもちゃ屋に行って、買ってもらうものであり、サンタは、桃太郎や一寸法師と同じく、おとぎ話の登場人物だと思っていた。
みなさんは、どうでしたか?
息子が小学校二年生の冬。
町のあちこちでクリスマスの飾りつけが始まったころ、息子とこのような会話をした。
「そろそろ、欲しいプレゼントは決まったか?
サンタさんに、手紙を書くか?」
息子は「ん~~」と悩んだ顔をみせる。
欲しいおもちゃが、複数個あることは知っている。
しかし、サンタさんからのプレゼントは、ひとつだけ。
どれに決めるのか、難しいところなのであろう。
だけど、こちらとしては、早めに決めてもらわないと、買いに行った時には、目当てのおもちゃが売り切れていたということにもなりかねない。
「……〇〇くんと△△くんのおうちは、サンタさんじゃなくて、お父さんとお母さんが、プレゼントを買ってくれるんだって」
ところが、息子の口からは、プレゼントのリクエストではなく、別の言葉が返ってきた。
ついに、そういう情報が入ってきたかと、オレは少し焦った。
「ねえ、パパ。
サンタさんって、本当にいるの?」
次に、この質問が来ると予想した。
唐突だったので、まだ答えは用意していない。
しかし、息子の質問は、予想とは違うものだった。
「じゃあ、ぼくも、サンタさんからのプレゼントと、あと、パパとママからのプレゼントも、もらえるんじゃないの? 二個?」
うわあい、すげーー解釈したな。
「えーーと、だな。
サンタさんのプレゼント、あれは、あとでパパが、サンタさんに、プレゼントのお金を払っているんだよ。うん。
だから、あのプレゼントは、パパとママが買ってあげたのと同じなんだよ」
「そっかあ」
身も蓋もない説明だったが、息子は納得してくれたようだった。
とは言え、今年はともかく、来年、再来年には、外部からの情報で、息子はサンタの正体にたどり着きそうであった。
いずれサンタの正体を知られるのであれば、外部からの情報ではなく、自らバラしたい。
考えたオレは、何人かの友達に声をかけた……。
「そろそろ息子に、サンタの正体をバラそうと考えてるんだ。
うん。その方法なんだけど、まあ、聞いてくれよ……。
24日のイブの夜、いつものように、玄関のチャイムが鳴るんだ。
息子は「サンタさんだ!」と、よろこんでドアを開けるだろ。
でも、そこにいるサンタは、いつものサンタとは違うんだ。
サンタの恰好をしているけど、顔を隠す包帯が黒いんだよ。黒。
ブラックサンタ。
ブラックサンタは、ロボットみたいな動きで家の中に入り、こう言うんだよ。
『ツリー、ヲ、壊ス……』
息子は怖がって妻に抱きつくだろうな。
いやいや、そう言う変なサンタが突然入ってきたら、大人でも怖いから。
で、ギクシャクとした動きで、ツリーに近づくブラックサンタ。
息子は「やめてーー!」と叫ぶかな。
その時だよ。
「待てい!」と声をあげ、毎年来ていた、ホワイトサンタが現れるんだ。
そうそう、白い包帯のホワイトサンタ。
そこから、ホワイトサンタとブラックサンタの戦いだよ。
で、戦いの最中、ホワイトサンタの包帯が外れるんだ。
それを見た、息子は「パパッ!?」と、これまで毎年来ていた、サンタクロースの正体に気付くんだ。
ここでホワイトサンタは、ブラックサンタを羽交い絞めにして、こう叫ぶんだ。
「息子、キックだ!」
もう、今年一番のクライマックス。
息子のキックを受けたブラックサンタは、呻きながら家の外へと逃げていく。
守ったツリーの前に立つのは、包帯が完全にほどけ、素顔をさらしたサンタクロース姿のオレ。
「パパーー」と、オレに抱きつく息子。
サンタの正体はバレたが、親子の力によって、見事、怪人ブラックサンタを撃退したのであった。
どう? これほど完璧なストーリーは無いだろ。
そこで、相談なんだけど……」
「断る」
「24日のイブの夜に……」
「嫌だね」
「ブラックサンタを演じてくれないか?」
「絶対に無理」
当たり前だが、イブの夜に、そんな役を引き受けてくれる酔狂な友人はおらず、ラストミッションは練り直し。
別の方法を考えることになったのである。
つづく
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