第98話 蓮先輩のお願い
眠さと面倒くささが混じり合う地獄の午後を乗り切り、圧倒的な解放感と共に放課後を迎える。手早く片づけを済ませ、名誉帰宅部としての力を見せつけようと思っていた矢先、太ももから小さな振動が伝わってくる。
一体何だろうと思いスマホの画面を見てみるとそこには蓮先輩からの『放課後暇だよね?少し手伝って欲しいことがあるんだ』というメッセージが送られてきていた。
暇だよね?じゃないんですよ。そんな俺が常日頃から暇を持て余しているような言いぐさは失礼ではないだろうか……いやまぁ暇なんだけどね?
どう返事をしたものかとしばらく悩んだ後に『内容によります』と返事をするとその数秒後には『生徒会室で待ってるから』という返事が返ってくる。これ絶対あれじゃん、内容聞いたら手伝わないと行けなくなる奴じゃん。
「……はぁ、とりあえず行くか……」
「失礼します」
「あ、晴翔君良く来てくれたね」
中に入ると蓮先輩と他数名が何かしらの作業を行っていた。以前手伝ったときはもう少し人数がいたと思うが……。
「それで蓮先輩、手伝って欲しい事って何ですか?」
「文化祭のステージイベントについてはもちろん知ってるよね?」
「そりゃまぁ知ってますよ」
体育館のステージで行われる多種多様な出し物で、個人から部活動、そして先生も参加できる文化祭の目玉イベントの一つである。
「実は今年もかなりの応募が来ててね、晴翔君にはその応募の取捨選択をして欲しいんだよ」
「……それ自分である必要あります?」
これめんどくさいんですよ。応募されたものを落とす時には必ずどうして落としたかを書かないといけない。これがひっじょうに面倒くさい。適当な理由を書くと抗議しに来る生徒がいるから、それっぽく理屈を書かないと行けないからもう本当にだるい。
「晴翔君去年もこの仕事したことあるでしょ?だから適任かと思ってね」
「生徒会人たくさんいるじゃないですか。その人達に任せれば良かったのでは…?」
「文化祭が終わって少ししたら新人戦があるからね、今は部活に集中したいって子が多いんだよ」
「だからって俺をこき使っていい理由にはならないと思うんですけど」
「もちろん今度ちゃんとお礼するよ。それにこうして一緒に仕事できるのもこれが最後だからさ、少しだけ私の我儘に付き合ってくれないか?」
ず、ずるい……そう言われたら断るに断れないじゃん……
「はぁ……分かりました」
「ありがとう晴翔君」
蓮先輩はにこりと笑顔を浮かべる。蓮先輩の言葉に偽りはほとんどないのだろうが、それでも嵌められたような気がして仕方がない。まぁここまで来たなら切り替えて仕事に集中しますか。
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