第84話 変じゃない?

 夏祭り当日、俺は心体に活を入れて家を出る。夏祭りを楽しむ気力は0に等しいが、俺のせいで年に一度のお祭りを台無しにしたくはない。出来るだけいつも通り、何事も無かったかのように振舞わなければ……。


 2日経っても結局鈴乃の様子は変わらない。こちらから謝りに行かないといけないと頭では分かっていても、「謝りに行くこと自体が鈴乃にとって不快なことだ」「こうなってしまえばどうすることもできない」と心がブレーキを全力で踏んでいるため、中々切り出すことが出来ない。


 何かをしなければ変わらないというのに……あぁ、本当に自分が嫌になるよ。


 じめじめとした暑さの中ため息を吐きながら、集合場所へと向かう。目的地に近づくにつれ、人の数が増えていく。まだ歩いているだけだというのにもう既に帰りたい気持ちがブクブクと膨れ上がる。今すぐベッドに倒れてそのまま動かずぼーっとしてたい……。


 今すぐに帰りたい、踵を返したいという気持ちをぐっと堪えて人混みに流されるように進んでいく。


「あ、晴翔ー!こっちこっちー!」


 俺に気づいた美緒がこちらにぶんぶんと手を振ってくる。俺は美緒の方へと小走りで向かう。


「ごめん、待たせたか?」


「ううん、私と颯太もさっき合流したばっかりだから大丈夫だよ」


「それにまだ集合時間になってないしな」


 ちらりとスマホを見るとまだ17:26と多少余裕がある。俺が遅いというより2人が早かったと捉えるべきだろう。


「美緒、浴衣似合ってるな」


「ふふん、でしょー?間近で見れるの、感謝した方がいいよ!」


「はいはい、ありがとうございます」


「けっ!連れないなぁ……それじゃあま、適当に歩きますか!」


 全員揃ったところで俺たちは屋台をのんびりと見回ることにする。3時間もすれば今回の目玉である花火が打ち上げられる。それまでの間はお腹を満たしたり、遊んだりして時間を潰す事になるのだが……


「晴翔、わたあめあるぞ。食わなくていいのか?」


「初手わたあめは邪魔になるだろ……それに今甘いものって気分じゃないし」


 今は甘いものじゃなくて味が濃くてしょっぱいものを食べたい。今の俺は精神がおかしくなったせいか、味覚がほとんどない。そのため焼きそばや、焼き鳥などお酒が進みそうな味の濃い物じゃないと美味しいと感じれるか怪しいのだ。


「……珍しい」


「あ、チョコバナナ屋さん今空いてるけどどうする?」


「俺はいいかな。晴翔は?」


「いや、甘いものって気分じゃないからいいや」


「………颯太、ちょっと」


「ああ」


「なんか今日の晴翔ちょっと変じゃない?」


「わかる。普段なら真っ先に甘いものを食べたいって言うのに今日は見向きもしてない」


「それになんか元気なさそうだし……これは絶対何かあったよね」


「だな」


 美緒と颯太が少し真剣な顔をして何かを話し合い始める。周りがわいわいがやがやしているせいで何を話しているのか全く聞こえない。まぁ俺に聞かせたくない話題なのだろう。なら変に詮索とかはしない方がいいかな。





短くて申し訳ねぇ……今日はもう1、2話書くからそれで帳消しってことに…

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