第57話 1学期の終わり
とうとう1学期最後の日がやって来た。入学式の日には長いなと感じていた日々も、蓋を開ければあっという間に過ぎていった。勉強、運動、人間関係とまぁ割と色々なことがあったが無事に1学期を終えることが出来て良かった。
「まぁ最後に再三の注意になっちゃうけど夏休み、楽しむのはいいけどあんまりはめを外し過ぎないでね。それと宿題は溜め込まないほうがいいわよ。それじゃあ2学期にまた会いましょう、はい室長挨拶」
担任の先生からの短いかつ緩いお話を聞いて1学期の学校生活が終了を迎えた。ここから1ヶ月とちょっとは学校という縛りから解放される。どっかの誰かのせいで俺は数学の授業を夏休み中に数回受けなければいけないが、とりあえずこの解放感を楽しもうじゃないか、夏休みサイコー。
「いやぁ、割と早く来たな夏休み。時の流れって怖いわぁ」
「わかる。夏休み来るのめちゃくちゃ嬉しいけど、もう夏休みかぁってちょっと驚くよな」
「やっほー、補講組のお二方」
プリント類を整理しながら颯太と話していると、煽り文句を投げながら美緒がこちらへとやってくる。
「俺は補講を受ける必要はないんだけどな」
「ね、あれ見てて面白いなって思いつつちょっと同情しちゃった。まぁどんまい晴翔!」
「その節は大変お世話になりました……」
「本当にな」
颯太は俺に向かってゆっくりと丁寧に頭を下げる。この件についてはもうなんとも思っていないのだが、それはそれとして颯太は俺に何かを奢るべきだと思う。
「今からお昼ご飯を奢らせて頂きますので何卒お許しください」
「よろしい」
こいつ……俺の思考でも読み取ったか……?
「ねぇ晴翔、今年の夏祭りはどうするの?鈴ちゃんと一緒に行くの?」
「まだ決まってないんだよなぁ。でも多分今年は一緒じゃないかな」
「珍しい……。まぁいいや、決まったら連絡してー」
「わかった」
小さい頃から俺と美緒は一緒にお祭りに足を運んでいる。それは高校2年になっても変わらないらしい。もう既に俺と一緒に行くことが確定しているような口振りに俺は少しだけ嬉しい気持ちになった。
前世だったら今の時期はもう赤の他人状態だったからなぁ……。いやぁ感慨深いわぁ……。
「うし、そろそろ行くか。晴翔何食べたいかあるか?あんまり高くなければ決めていいぞ」
「うーん……歩きながら考えるわ。あ、そう言えば今日は部活無いのか?」
「実は無いんだな、いやぁマジで神」
「やったじゃん」
「まぁ明後日から連続で部活だけどな」
「まぁ……頑張れ」
「ただいまー」
「おかえり、お兄ちゃん!」
結局ファストフード店でご飯を食べることにした俺と颯太は、雑談をしつつダラダラとご飯を食べた後解散した。
扉を開けた途端に感じる外の纏わりつくような重たい空気とは違う、爽やかさすら感じられる涼しい空気に肩の力が一気に抜ける。明日からこの涼しい空間にずっといられるし、早起きしなくていいとか……神か?
「ただいま鈴、それと今俺汗臭いからあんまり近づかない方がいいぞ?」
「大丈夫、お兄ちゃんは臭くないよ」
どう言う訳か俺と鈴乃距離感は元に戻ってしまった。数日前までは割と健全な距離感を保つことができ、とうとう兄離れかぁ〜と思っていたのだが、昨日あたりからいつもの鈴乃に戻り、それに伴って距離感が以前と同じようにとても近くなった。な、なぜ……。
「それでも流石に気になるからさ、制汗シートとかは使わせてくれ」
「別に気にしないって言ってるのに……」
妙に食い下がる鈴乃をあしらった俺は洗面所へと行き、制汗シートで体を拭き拭きする。身体のあちこちがスースーして非常に気持ちいい。これでエアコンのガンガン効いた部屋に行ったらそれはもう擬似的に天国を味わえることでしょう。さぁ、いざ天国の扉を開くのです。
「あぁ〜涼しい〜」
あれこれを終わらせた俺はリビングへ行き、ソファに腰を下ろす。あまりの快適さに俺の全身からこぼれ落ちるように力が抜けていく。もうここから動きたくない、そう身体が訴えかけているようだ。任せろ、当分はここから動かないから。
「……鈴、あんまりくっつくと暑いと思うんだけど」
くっつくようにして隣で座っている鈴乃に俺は声をかける。冬場とかなら大歓迎なんだけど、流石に夏場はもうちょっと離れた方がお互いにとっていいと思うの。それといくら制汗シートで体を拭いたと言えど、まだ汗臭さは残ってると思うからそれも込み込みでもうちょい距離をとったほうがいいとお兄ちゃん思います。
「大丈夫だよ、エアコンのおかげで涼しいから」
「まぁ……うん、そうね」
離れるどころか逆にくっついてきた鈴乃に俺は白旗をあげる。まぁ鈴乃がいいならいいかぁ。(投げやり)
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