第56話 七不思議って知ってる?
「失礼しまーす……ってあっつ!!」
なんやかやありながら時間は進み放課後になり、俺は茜先輩に呼び出されたため部室へと向かった。ガラリと部室の扉を開くと、俺の体にこれでもかと言うほどの熱気が纏わりついてくる。外に居ないのに、外にいるかのような錯覚を覚えるほどの暑さに俺は顔を歪ませる。
「あぁ……よく来たね晴翔君」
扇風機の前にしゃがみ込んでいた先輩は俺の声に反応し、こちらへと顔を向ける。
「窓開けててこれですか……」
「まぁこんな辺境の部室にエアコンなんてないからねぇ」
「せめて扉開けときましょうよ……それだけでも多少マシになると思いますよ」
「いやぁ……私物まみれの部屋を空けっぱにするのはちょっと……」
「別にこんなとこに人なんて来ませんよ……それで今日はどうして呼び出したんですか?」
「ふっふっふっ……晴翔君、君は学校の七不思議というものを知っているかね?」
「先輩、怪談話で体冷やすくらいならこの部室から出る方を優先すべきだと思いますよ」
いきなり怪談話について話し始めた先輩に俺は正論という名の冷や水をぶつける。多分先輩は暑さのせいで正常な思考が取れてないんだよ、とりあえず早くこの部室から出ましょう?
「まぁまぁ落ち着きたまえよ晴翔君。私だって早くこの部室から出たいんだ、大人しく私の話を聞きたまえ」
「先輩がここに呼び出したんでしょうが……それで、その七不思議がどうしたんですか?」
扇風機の風を独占する先輩に呆れのこもった視線を送りつつ、続きの話を促す。俺も早く家に帰ってエアコンの効いた部屋でダラダラしたい。
「実はこの学校にも似たような話があるらしくてね」
「ほう」
「この文芸部で肝試し兼調査をしてみようと思ったのだよ」
「そうなんすか、それじゃあ頑張って下さい」
「ちょちょちょちょ!!まだ話は終わってないからね!?」
俺が席を立ち、扉へと向かおうとしたところで先輩からのストップがかかる。てっきり自慢したいだけなのかと思ったけどまだ話には続きがあるらしい。……まぁなんとなく予想はついてるけど。
「分かりました。でもその前に扇風機の風を独占しないでください。こっちも暑いんすよ」
「いやだと言ったら?」
「帰ります」
「全く……しょうがないなぁ」
そう言うと茜先輩は扇風機をずらし俺にも風が来るように首振りモードに切り替える。先輩の仕方がないという態度にチョップを喰らわしたくなったがその気持ちをどこかに放り捨て先輩の話へと耳を傾ける。
「よいしょっと……それでまぁ夏休みに肝試しをしようってことになってね?晴翔君も一緒にどうかなって思ってさ」
「お昼とか夕方にやるわけじゃないっすよね?」
「もちろんだとも。晴翔君はうちに天文部があるのは知っているだろう?」
「それはまぁ」
「私、天文部の顧問とめちゃくちゃ仲が良い。そこで肝試ししたいなぁってお願いしたら「夏休みに天文部で星を見る活動やるから、その時ならいいわよ」と難なく協力を取り付けられたのだ!」
「へー」
「そこはもっとリアクションが欲しかったよ……と言う訳でちゃーんと夜にやるよ。どう?晴翔君も来るでしょ?と言うか来るよね?はいじゃあけってーい!」
「まだ何も言ってないんですけど……まぁ別にいいですよ」
「ふっふっふっ、晴翔君ならそう言ってくれると思っていたよ。詳しいことは後でグループの方で書いとくからよく読んで置くように!」
「了解です」
肝試しかぁ……小学校の時以来だなぁ。夜の学校って確かに気味悪いから、七不思議を抜きにしてもそこそこ楽しめそうだな。
「よし、じゃあ帰ろう。めちゃ暑いし」
「ですね。あ、鍵どうします?」
「じゃあじゃんけんで決めよう。行くよ?じゃーんけーん──────」
その後じゃんけんで勝利を収めたはずなのだが、先輩が駄々をこねたせいで結局一緒に部室の鍵を返しに行くことになったのであった。いやじゃんけんする意味あった?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます