第39話 何故か
「失礼しまーす……おう!?」
ガラリとドアを開けるとそこには驚きの光景が広がっていた。
「晴翔君、早く席に着きたまえ」
「はいはい」
「はいは一回でいいぞー」
目が合うや否や、とても偉そうな態度で指示を出す茜先輩を適当にあしらいながら俺は空いている席に着く。
俺は今茜先輩の呼び出しにより文芸部の部室に来ている。また雑用でも頼まれるのかなぁと思っていたがあらびっくり。扉を開けるとそこには顔も名前も知らない3人の女子生徒と見知った顔の女子生徒が一人いるではありませんか。めちゃくちゃ気まずいんで帰っても良いですか?
「それで先輩、これは一体どういう状況ですか?」
「さて、メンバーも全員揃ったということで!」
「もしもし?」
俺の声が聞こえていないのか、どんどん話を進めていく茜先輩に俺は困惑を隠しきれない。絶対聞こえてますよね?
「今日は親睦会兼軽ーく今後の活動方針について話していきたいと思う!」
「えぇ……」
それを先に連絡しといてくれよ……。めちゃくちゃ気まずいって、俺ほとんど活動に携わってないのにまるで部員ですみたいな顔するの嫌なんですけど……。
「なんだい晴翔君、そんな嫌そうな顔をして」
「いや、俺を呼ぶ必要なかったんじゃ──────」
「何を言うんだい晴翔君、君は文芸部の立派なざつよ……部員じゃないか!」
「今雑用って言いかけたでしょ!本音漏れかけてますよ先輩!!というか親睦会とかそういうのってもっと前にやるものでは?もう6月ですよ?」
「……細かいことを気にするのはやめたまえ!」
「絶対忘れてましたねこれ」
「そ、そんなことないぞ!?私は後輩諸君が新生活に慣れるのに時間がかかると思ってそう……配慮をしていたのだ!」
今考えたにしては中々に良い言い訳だが、声のトーンと話し方的に動揺を隠しきれてないですよ茜先輩。
「二人ともそこら辺にしておいてください、話が進みません」
「そうだな。うちの晴翔君がすまなかった」
「えぇ……」
一人の女子生徒に注意されたことで俺と茜先輩は大人しくなる。
「すまないね、途中で止まっちゃって。それじゃあ初めて部員全員がそろったということで自己紹介からしていこうか。知っていると思うが私は小清水茜、文芸部の部長をしている。今年で引退だが、それまでの間よろしく頼む」
大変偉そうにしてるが、こう見えてポンコツなところが多いんだよなこの先輩……正直一年生ズが心配である。もし茜先輩のことで困ったら相談してください、頭ぐりぐりという名の愛の鞭を加えるので。
「ほい、じゃあ次晴翔君」
「あ、俺先なんですね。どうも高橋晴翔って言います。よろしくお願いします」
「何か面倒事があったらこの晴翔君を使ってくれ。それはもう道具の様に扱ってくれて構わないぞ」
「おい」
「はいそれじゃあもっちー」
「その呼び方やめてくださいって前にも言いましたよね?」
「えぇ?いいじゃん私ともっちーの仲なんだからさぁ」
もっちーと呼ばれた藍色の長髪眼鏡っ子は嫌そうな声を出す。そして一つ小さなため息を着いてから口を開く。
「
「それともっちーは次期部長でーす」
淡々と自己紹介を済ませ、綺麗にお辞儀をする優等生ちゃん。俺のクラスメイトであり、文芸部の副部長であり次期部長。彼女の藍色の髪を彷彿とさせるほどクールで近寄りがたい雰囲気を放つ少女。文芸部という部活は彼女のためにあるのではないかと思わせるほどの文学少女───────
……キッ!!
に何故か俺は嫌われている。ただでさえちょっと怖い雰囲気を纏っているのに、その雰囲気を凝縮したような視線を俺へとぶつけてくる。
……こ、こわ。あの、今すぐ帰っても良いですかね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます