第33話 やっぱり勘違い?
分からない。先輩の考え、行動がいまいちよく分からない。
私はメロンソーダをずずずと飲みながら学校での出来事について頭を悩ませる。
先輩は鈴乃ちゃんを狙っているから、一人の男として見て欲しいから兄離れをして欲しいのだと思っていた。何故この考えに至ったかは単純で、男の人がこんなかわいい義理の妹と一緒に過ごしていて不純な気持ちを抱かないなんて無理があると思ったからだ。
鈴乃ちゃんは男女問わずモテる。私は鈴乃ちゃんに告白した人の数がもう2桁に達していることを知っている。入学してからまだ1か月半でこの数、それほどまでに鈴乃ちゃんが魅力的な証拠だ。
そんな彼女と思春期の男の人がひとつ屋根の下で暮らしていて恋愛感情を抱かないなんて、そんなことが出来るのだろうか?答えはNOだ。もし私が先輩の立場ならきっと鈴乃ちゃんに対して良からぬ感情を抱いてるもん。
ただこの私の考えに対して一つの疑念が浮かぶ。それは先輩の行動、鈴乃ちゃんを女として見ているのなら出掛けようと誘われたときに断るだろうか?
それに冷静になったからか、私が鈴乃ちゃんと仲良くなるようにお願いし、そしてきっかけを作ってくれたのは先輩だったことを思い出す。一人の女の子として見ているのなら、お昼休みの鈴乃ちゃんを独占し続けていたはずだ。
……も、もしかして私の勘違い?ただ本当に鈴乃ちゃんにお友達が出来て欲しいと願う善良な兄なのかな?……こんなに優等生でコミュ力も高い鈴乃ちゃんに友達が出来て欲しいなんて言うのは変な部分がある。
けれど、この前鈴乃ちゃんの部屋で見た写真、昔の鈴乃ちゃんが人見知りだったことを考えると先輩の考えも納得がいく。いやでも──────
「お待たせいたしました。こちらチョコレートパフェとチーズケーキになります。ごゆっくりどうぞー」
私は体をびくりと震わせ、声のする方へ顔を向ける。店員さんが注文した商品を持ってきてくれたらしい。
「白川さん、さっきからずっと険しい顔をしていますが何か悩み事ですか?」
「へ?ああ……ええっと、今日の試験でちょっと失敗しちゃって」
ぱっと思いついた嘘にしては非常に現実味のあるものだ。良く回った私の舌を褒めてあげたい。
「ああ、確かに今日の試験はいくつか難しい問題がありましたからね。でも大丈夫ですよ、基本的な問題はしっかり解けるようになってましたからそこまで低い点数を取ることは無いでしょう」
「そう?ならよかった」
「今はテストのことを忘れてゆっくりしましょう。あぁでも白川さんのはゆっくりしてると溶けちゃいますね」
「そうだね、それじゃあ食べよっか」
私は目の前に立ちはだかる甘味の山にスプーンを入れる。やはり疲れた時には甘い物、甘いものを食べれば脳は力を取り戻し、荒んだ心は潤いを取り戻す。甘い物こそがこの世の中で一番おいしい食べ物なのだ。
「……甘そうですね」
「うん、すごく美味しいよ。鈴乃ちゃんも一口食べる?」
はっ!?私今なんて言った?なんか自然な感じで間接キス+あーんしようとしてない?あ、でもこの前もしたし今更恥ずかしがる方が変に思われちゃうか。……でもどうしようめちゃくちゃ恥ずかしい。
「では一口だけもらいますね。あむっ……美味しいですね。あっ、私のも一口上げますよ。はい、どうぞ」
「あ、ありがと……あむっ…ん!美味しい!!」
ファミレスのチーズケーキってこんなにクオリティ高いんだ。めちゃくちゃ美味しい。でも鈴乃ちゃんが食べさせてくれたから美味しく感じたという可能性が大いにある。ど、どっちだ……?
「白川さんは甘いの好きなんですね」
「うん、すごく好きだよ。鈴乃ちゃんはもしかして苦手だったりする?」
鈴乃ちゃんが頼んだ商品に視線を向けるとチーズケーキにブラックコーヒーとかなり甘さ控えめな面々が並んでいた。
「人並みには好きですよ。けど────」
「けど?」
「甘すぎると一口だけで満足しちゃうんですよね」
「一口だけ?」
「はい、兄さんが大の甘党で。こういう場所でご飯を食べるときは必ずデザートを頼むんです。その時に一口だけ貰ってるんですよ」
……てことは先輩と鈴乃ちゃんはもう既に間接キスとあーんを自然と行える関係なのか……やはり先輩は鈴乃ちゃんのことを狙っている?いやでも兄妹で間接キスなんて普通の事……普通の事なのか?私兄妹いないからわかんないや。
でも実際のところどうなんだろう、私先輩のこと何も知らないしなぁ……。もしかしたら今までの私の考えが勘違いの可能性がある……というかその可能性が高いかもしれない。何せ私と先輩の出会いが勘違いから入ったからだ。……そ、そう考えると罪悪感がすごい。
い、いやでも先輩が鈴乃ちゃんのことを狙っている可能性だって十分にある!鈴乃ちゃんを守るのは私の仕事。鈴乃ちゃんに近づく不届き物を成敗するのが騎士の役目!
……そうだ、良いことを思いついた。先輩のことを知らないから鈴乃ちゃんを狙っているかどうかの判断がつかないんだ。もしかしたらただの妹想いな兄かもしれないし、鈴乃ちゃんを狙っているヤリ〇ン野郎なのかもしれない。
ならどうすればいいか。そう、先輩について調べ上げればいい。とことん先輩がどういう人なのかを洗い出してやる!そして事の真相を暴き、鈴乃ちゃんのことを守るんだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます