-06- 引きこもり と 超仲良し
「お~い。毛ムクジャラ~。ドコだぁ?」
『毛ムクジャラじゃない。ボクにはメイさんが付けてくれたプルって名前が有るんだ。まぁ確かに、ぬいぐるみのplushから取った名前だけど、気に入ってるんだ』
「それでな、毛ムクジャラ。温泉の温度が低いんだ。あと、新しく作った通路の落とし穴が20cmしかない。直しておけよ!」
『ボクの話しは無視ですか・・・。温泉の温度も落とし穴も、もう
「はぁ?500万
『前にも説明したよね?ダンジョンから人間には
あぁ。なんか聞いた気がするな。
人間からダンジョンに
「もう3年も前の事だろ?俺が覚えてる訳ないだろ!」
『・・・まだ1年も経ってないよ。ボクの生命線なんだから覚えて置いてよぉ~』
毛ムクジャラが泣きながら去って行った。ぬいぐるみだから涙は出ないはずだが、なぜか涙を拭っていた。
ここ数カ月、俺と毛ムクジャラはダンジョンの大改造をしている。ダンジョンの中は外界とは遮断された空間である事に目を付けたのだ。ダンジョンを改造する事で色んな環境が作れる。ようするに、冷暖房完備で電気代もかからない完璧な物件だ。
最初に作ったのは俺がくつろげるリビングだ。ただ、ダンジョンの中には電波が届かないので色々と苦労した。最終的にLANケーブルを俺の家から直接引っ張った。テレビは見れないが外界との最低限の連絡がつくようになった。それからは基本的にダンジョンの中でゴロゴロしている。とても有意義な日々だ。
「おーい、戻って来ーい、毛ムクジャラ~。 ・・・来ないならダンジョンコアをブッ壊しに行くぞ!」
通路の先からぬいぐるみが走って来た。とてもぬいぐるみとは思えないスピードだ。
ダンジョンコアを壊したら、ダンジョンマスターも死ぬらしい。ダンジョンマスターが居なくなったら、折角大改造した俺の快適空間も失ってしまう。だからそんな事をする気は無い。
『ヒィィッ! おねげーします! 言う事聞きますから、壊さないで下さい!』
「
『ホント?分けてくれるの? ボクもモンスターとか作らないと、このままじゃ困るんだ』
「ん?今は必要ないだろ」
『ダンジョンバトルを申し込まれたら、ボクを守るモンスターが居ないから困るんだよ!』
「ダンジョン・・・バトル・・・・・・?」
『大切な事だから最初に話したよね! ダンジョンマスター同士の真剣勝負なんだよ!それぞれのダンジョンの入り口を繋げて、ダンジョン内のモンスターやダンジョンマスター自身が戦って互いのダンジョンを占拠するんだ。24時間以内にどれだけ占拠したかで相手の
「お、覚えてるぞ・・・。ここがSランクだから挑戦させたら拒否出来ないって事だろ?」
『もうすぐダンジョンが出来て1年になるから挑戦権が有効になるんだよ。1年もしないで
「まだ時間はあるから今度考えよう。 こんど・・・そのうち・・・きっと・・・いつか・・・な」
毛ムクジャラが項垂れてしまった。俺もまだ先の事だと思って忘れてた。ダンジョン運営ってのも、なんだかんだと面倒なんだな。
「カゲちゃん、いる~? あっ!またプルちゃんをイジメてたの?」
「なっ! 何を言っているんだ、メイ。コイツとは超仲良しだぞ! そうだよ、なっ!!!」
『えっ!?! そっ・・・ソウデス。トテモ、ナカヨシ、デス』
おいおい、毛ムクジャラ。なんだよ、その言い方は。メイが全く信じて無いだろ。
俺を見るメイの視線が痛い。話をズラそう・・・
「そうだ。探索者の申し込みが始まるんだろ?俺も応募するから、メイも応募するか?」
「カゲちゃん、引きこもりを卒業して探索者になるの?」
引きこもりを卒業とは酷い言い方だ。否定できないのが悲しい所だが、俺は自分の意思で引きこもりになった”エリート引きこもり”なんだ。普通の引きこもりと一緒にして欲しくないな。
「爺さんの遺産だけじゃ一生は食べて行けないからな。金づるは見つけたから、その為のシコミだ」
「カゲちゃん。悪い顔になってるよ。出所する時はプルちゃんと一緒に迎えに行くからね」
ちょっと待って・・・俺が逮捕されて、刑務所に入って、刑期満了して、からの出所の事か?
なんで俺が犯罪を犯す事が前提の話しになってるんだ?
俺は今まで、バレるような犯罪は1度もした事がないぞ!!
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