-07- 引きこもり と ダンジョンバトル
「メイ、お前も探索者試験を受けるなら持って行け」
探索者試験のテキストは公開されていた。俺は印刷した物をメイに渡した。
既に探索者試験は各地で始まっており、俺の住む地域でも近々受付が開始される予定だ。
地域差があるのは、海外からの影響が大きい。国内のダンジョンは発生騒動が有った時に全て閉鎖された。しかし海外では探索が進められた国もあり、大きな成果がもたらされた。
世界から後れを取る事にはなったが、資源の乏しい日本が閉鎖を続けられる訳が無かった。ダンジョンの一般開放が行われる事となったが、全国で足並みをそろえる時間も無く順次解放となった。
「有難う。カゲちゃんは探索者になって、ダンジョンを攻略して回るの?」
「違うぞ。俺は実業家になるんだ!」
「ジツギョーカ?って?何?」
メイが、コテッと頭をひねって訊いて来た。
「つまり、会社を作って部下を働かせて、俺はゴロゴロするって事だ」
「・・・今と、あまり変わらないね」
「何を言ってるんだ。沢山の人からお金を集めるから、ガッポガッポ儲かるんだ。
「そんな都合の良い事が出来るの?」
「勿論だ。仕方が無いなぁ。少しだけメイにも俺の計画を教えてやろう。 俺はこのダンジョンを毎日毎日改造している」
『実際に働いてるのはボクだけどね』
「ダンジョンを天然温泉のスーパー銭湯にする!」
『
「更に家族連れも楽しめるように、簡単なアトラクションも併設する」
『
「将来的にはダンジョン内に宿泊施設も作りたいが、まだ手が回っていない」
『
「へ~。つまりプルちゃんに働かせてカゲちゃんはゴロゴロするの?」
おい!毛ムクジャラ!! お前が余計な情報を言うから、俺が悪者のような印象を持ってしまっただろ。
「・・・メイ。どうも悪意が有るのように聞こえるんだが。俺だった働くぞ。その為に探索者に成るんだ」
「本当に~?」
「本当だぞ。それにダンジョンに多くの人間が入れば
「カゲちゃん、こんな田舎にお客なんて来るの?」
「『 あ・・・ 』」
地元民の公衆浴場としてなら・・・ムリだな。それじゃあ人数が少な過ぎる。やはり客を呼ばないと出来れば団体客だな。だがどうやって呼べば良いんだ。
こんなド田舎に来るような人は変わり者しか居ないだろうな。
「ま、まぁ。その辺は、これから、追々、おいおぃ・・・考える」
ダンジョンを使って商売するのに、法的な事だけを考えていた。色々調べたが探索者に成れば問題ないようだった。たぶん法整備が進んでなくて禁止する法律がまだ出来てないだけだろう、とは思ったが今なら合法的にヤリ放題なのだ。だから数カ月もかけてダンジョンの改造を頑張って来たが、集客方法を考えて無かった。
集客は設備が整ったら、なんとな成るだろう。未来の自分に期待しよう!
「カゲちゃんが引きこもりを卒業するなら、私は応援するよ」
そう言いながら、メイは俺が渡した探索者試験のテキストをペラペラとめくって見ている。
やはりメイも興味はあるようだ。俺も勉強を始めないとな。筆記試験で不合格になるような不名誉は要らないからな。
「カゲちゃん、ここに書いて有る事って本当なの?」
メイが頭を傾けながら俺に訊いて来た。
俺はまだ読んでないが、テキストは正式な物だ。嘘が掛かれている訳がない。
「3ページ目に、モンスターはダンジョンから出て来ない。って書いて有るよ」
俺とメイは同時に、毛ムクジャラを見つめてしまった。
コイツは勝手にダンジョンから出て、俺の家の中や庭も歩き回っている。
『それはその記載が間違ってるよ! モンスターはその気になればダンジョンから出れるよ。 出ないのはダンジョンマスターが命令しないからだよ!』
「プルちゃん、どうして命令しないの?」
『スタンピードっていう技を使うと外に沢山のモンスターを出して一気に人間を倒せるんだ。
「じゃあ、みんな知らないだけなんだぁ。 でもブルちゃんは普通に出入りしてるよね」
『ボクはダンジョンマスターだから自分の意志で好きに動けるんだよ』
「そうなんだぁ。プルちゃんて凄いんだぁ」
俺は毛ムクジャラの話しを聞いていて1つの可能性に気が付いた。
Sランクダンジョンで在りながら
間違いなく、ポンコツマスターだと思っているだろう。だがポンコツでもSランクだ。ダンジョンバトルで簡単に勝てるとは思えない。ならどうする?
簡単だ。自滅するのを待った方が良い。それほどのポンコツなら必ずスタンピードをやらかす。そこを叩けば簡単に勝てる!無理に攻める必要なんて無い。
普通に頭が回るダンジョンマスターなら、この考えに行き着くだろう。
つまり、ダンジョンバトルの可能性は極めて低く、安全って事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます