第2話
早いほうが良いとの事で次の日、
「警察って2人のこと調べてるんだよね?」
周りに人が居ないことを確認して聞いてみた。
「うん、そのはずだよ。わたし話をしたから。2人が怪しいって。でも音沙汰なしって事は、そうじゃないんだろう...」
だとすると全く知らない人なのだろうか。それとも念入りで計画が上手くいってるのだろうか。
「あ、そうだ。
「...え?やってないよ。そもそもどこで売ってんの」
突然おかしな事を聞くので少し反応が遅れた。逆に怪しいんじゃないか、何もしていないのに不安に思えてきた。
「警察から聞かれたんだ...たくさん注射針があるって。死因、注射でうたれたんじゃないか...」
「そっかぁ、劇薬とかじゃなくそういうのなら気づかなかったのかな」
とは言ったものの、大量に摂取してたら苦しむのかなと考えがよぎった。そういう世界は全く知らないし調べた事もないから分からない。
こうして大学中を探すが2人とも見つけられなかった。
「いったん、食堂行こっか」
入れ違いかもしれない、それにこんなに歩き回って日々もしんどそうにしていた。
彼女は、こくんと頷いて食堂へ向かった。
「あ」
思わず声が出た。あんなに探し回ったのに、戻ったらあっさり居たのだ。
ウェーブのかかって波のようになっている黒髪を肩甲骨の下まで流している。私を真似して染めるのをやめたままの黒い髪。死ぬ1日前に着ていた、私と日々とでお揃いで買ったのと同じ服を着ていた。
幽霊なので障害物がないぶん日々より早くその人の近くに辿り着いた。
自販機で買うものを凄く悩んでいるようだ。これからこの人に話しかけるのか...と思うと心がどろりとしんどくなった。
高校の頃に出会った時は普通の友達だと思っていた。異変に気づいたのは1ヶ月経ったとき。他の友達から聞いたのだ。なんかあの子、九重の真似してない?ほら、香水とか、九重が前に好きって言ってたやつよね。という事だった。たしかに違和感を感じていたが、信じたくなかったから何となくな気持ちで聞いていた。
でも自分だけの違和感から他人も気づいている違和感になってからは何もかもが怪しく思えてきた。日々と買ったお揃いの物を次の日には揃えていたり、当時ハマっていたお菓子を彼女も食べ始めたり。そして、その時、クセがついた行動があってそれが自分自身も苦しいクセだったので治そうとしていた時、彼女はそれを真似してきたのだ。
最初は、親友になりたいのかな、と思って舞い上がっていた。
段々彼女がグループからハブられていて疑問に思ったから、他の友達に聞いてみたらまさかの私の愚痴を言っていたそうだ。それもやってもいないことだ。物を盗まれたりお金を貸して返ってこないとか、日々の愚痴をいつも聞かされるとか。それで怪しいと思って、あまり関わりたくないと思ったそうだ。それを聞いて私も嫌になった。
思えば次の嫌な行動になった時はその頃くらいかな...。半年超えた頃、好きな人が出来た。あの時は、彼氏持ちの子に情報をたくさん聞いたものだ。なんせ初恋だから。
その時に、好きな人を誘おうとしたら今まで離れていたのに急に近づくのだ。その頃からやたらと付き纏われた。彼に近づこうとするとその子もついてくる。それが大学までついてくるとは思ってもいなかった。それでその時の恋は実らなかった。その後別の人と恋に落ちて幸せだったけど、なんだかもやもやする。
だけど彼女はそれじゃあ飽き足らず、新しく友達を作ろうとするととことん邪魔されて大学生活がズタボロだ。
まぁあの子に話しかけるのは日々なんだけども、声を聞く、いや、顔を見るのも嫌だ。
その子は、ヨーグルト味の飲み物を買った。もちろん生きていた頃に私がハマっていた物だ。
何か探る事が出来ないかと鞄を触ろうとしてみるが全く触ることが出来ない。はぁ、とため息をつき日々を待つ事にした。
「...おはよう」
日々がついて、少し不機嫌そうに声をかけた。
「あぁ!日々ちゃーん!久しぶりー!もう大丈夫なの?もう心配したよぉ!」
「ええ。大丈夫です。小野木さんは元気でしたか」
あの白々しい態度にも負けず日々は淡々と言葉を発する。
「元気よー。どうしたの?日々ちゃんから来るなんて珍しいね」
「そうですか。葬式は来なかったんですね」
「うん、やっぱ九重いなくて寂しくて。さすがに休んでたよ。昨日、来たばっかなの」
「そうなんですね。わたしも悲しくてずっと部屋で泣いてました」
「同じ同じ。私も。なんで死んだんだろうね。自殺しそうには見えなかったのに。実はなにかあったのかなー彼氏さんとか」
うーん、と考えている姿だけは嘘には見えなかった。
「もっと一緒にいたかったのにー」
「.......そうですね...」
そう言ってその子は飲みながら去った。
「あー!イラっとくるー!」
幽霊で見えない事を良いことに、あっかんべーとしたり好き放題する。
「でもすぐ自殺って出てきたね」
「あまり知らされてないからね。わたしも九重の親から聞かされるまで、なんで相談してくれなかったんだ...て思ってたから」
「まぁ今日、あいつの家に行ってみるよ。家知らないからずっと張ってなきゃいけないけど」
「終わったらお泊まり会しようか」
いいねーと言って小野木をを追いかけた。
電車やバスを何回か乗り換えてさらに15分程上り坂を歩く。最寄りのバスを降りてからは店は1つも見ない。代わりにアパートや長屋、たまに中流家庭で見かける家がある。家の中からは犬の声だったり説教している声が聞こえる所もあって、外は人が見当たらないのに少し賑やかに見える。
途中で横道に入るとお花好きが多いのだろうか。先程とは違ってアパートも家も花を育てている所が多い。そこの一番端の角のとこの家に小野木は入った。
ただいま、と小野木が言うと奥からおかえりと二人分の女性の声が返ってきていた。そのまま小野木は台所で手を洗い階段を登って戸を開け部屋に入った。見た所二階建ての家だ。階段とかに置物が置いてたりしていた。私が子供だったらおままごと用に使い倒されているだろうなと思うとクスっと思わず笑ってしまった。
小野木の部屋の中は私が持っていた服や物が散乱していた。ざっくり見てみるが怪しいものはなかった。小野木は鞄をそこら辺の床に置くとスマホをいじり始めた。何か文字を打っているので覗いてみる。
どうやらネットで調べるとこみたいで、なぜ自殺は突然なのか、と文字を打っていた。そして出てきた検索は、もうとっくに見ていたのだろう。開いた跡が残っていて、そのまま下にスクロールしていった。何度もしているうちに一番下まで来た。
さっき打っていた文字を全部消すと検索履歴が出てきて、それらはなぜ自殺するのかに関するものばかりだった。そして次も、自殺に至るまで、と打ち検索した。
あんなに嫌な事をしてくるが、それは彼女なりの友情だったのだろう。たしかに人間関係というものは綺麗なものでありたいが難しい。友達の事だって悪口を言う。影で愚痴っていても結局は友達だから一緒に遊んでしまう。恋人だって我が子だってそうだろう。だって、相手だって生きているから自分の嫌いな物が相手は好きだったり、考えが違ったり、感じ方が違って当たり前だ。悪く言っててもそれでも好きだというおかしな関係だけども。だからといって小野木の事を好きになるわけではないが、友達ではあったのだろう。
他にする事といえば、親がご飯だと知らせてきた時やお風呂が出来た時くらいで、それ以外はずっとスマホで調べていた。
「そうか。じゃあ、違うのかもしれないな」
日々はお茶を飲みながら言う。パジャマにもう着替えているから全て終わらせたのだろう。
しかし、もしこれで彼氏も違うとなったら全く知らない人なのだろうか。
「
「あぁ、見かけなかったから先生とかに聞いてみたけど九重が死んでから来ていないそうだよ」
「悲しんでくれてるのかな...」
「あの人の性格上、悲しい通り越してそうだけど...」
だといいな。結婚も視野に入れていたから、本当は嫌われていたとかだったら悲しすぎる。
相変わらず必要なものだけのさっぱりした部屋を見てみる。一人用の部屋なはずなのに広く感じる。
床にゴロンとしてみる。すり抜けてしまうので床からは少し浮いているけどなんとなく体が楽になった気がする。床に寝た時の硬い感触や冷たさを感じれないのは寂しいものだ。
「ねぇ、日々、初めてバリカンつかった時の事おぼえてる?」
「あぁあの凄い叱られたやつ。あの時は初めて髪の毛って貧相になるんだって知ったよ」
子供の頃は親から強制的に髪の毛を短くされていた。だから髪の毛はくくることも出来ず、編み込みなんて技術はなく夢の話だった。そんな中でテレビでトイプードルのカットをやっていた。それが凄く可愛くて、ちょうど自分たちの髪の毛も短いからやってみたのだ。その結果、二人してむしられた人間みたいになって、クリスマスのターキーに出されていそうな見た目になった。もちろん、親に話して叱られて美容室で整えられて生え揃うまでカツラをつけていた。
「あ、九重、プールで大人数でオナラするドッキリ....」
「あ..ふふ...あんな空気がくすぐったいなんて、先生すごい顔して....はは...それがまた良かった」
いつ最後か分からない。なるべく友達といる楽しみを感じていたくて寝落ちするまで昔話をしていた。
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