第4話 総理の秘密

「や、やめてください!」


8月15日21時ごろ、とある田舎町の倉庫でイスに後ろ手を縛られ、泣き叫んでいる男がいた。


彼は岸多文太郎。


日本の総理大臣である。


なぜこんなことになったのか?


その訳は6時間前にさかのぼる。



午後3時、とある街の路肩に留まったバンの中で、こんな会話が繰り広げられていた。


「いよいよだな、準備はいいか?」


「もちろんだ、俺たちが日本を救おう」


2人はSNSを通じて誕生した反政府組織のメンバーである。


彼らは社会に出て働いた経験も、体を鍛えた経験もない。


だが、国を思う気持ちだけは人一倍であった。


そんな2人がこれからしようとしているのは、総理大臣の誘拐。


その頼みの綱が、ミハイルである。


ミハイルは帰化した外国人で、軍に所属していた経験もある。


だから計画では、ミハイルが重要な役割を担うことになっていた。



バンッ


「いくぞ」


山田とミハイルは車のドアを閉め、近くの商店街に向かった。


そこでは岸多文太郎総理が演説をしているところだった。


「ですからにー、大増税は日本を救うのです!


増税!増税!」


総理の演説が熱を帯びてきたころ、辺りに煙が立ちこめ始めた。


なんだなんだと会場がざわつき始める。


実はこの煙の正体は発煙筒。


近くの雑居ビルの窓から、山田が投げているものだ。


総理はボディーガードに連れられ、公用車へと向かう。


「は、早く原因を突き止めなさい!増税するぞ!」


と、その時、、


「うおおおおおお」


身長2mはあろう、大男が総理一行にタックルしてきた。


ミハイルである。


次々と投げ飛ばされるボディーガードたち。


ミハイルはそのスキに岸多をリフトアップすると、

中田が運転するバンに乗り込み走り去った。


また、この一代事件に乗じて、中田も姿をくらませたのだった。



それから3人は合流し、岸多を海辺の倉庫に連れてきた。


そしてイスに縛ると、目的を果たそうとした。


その目的とは、日本国民に謝罪させることである。


三人はビデオカメラを設置すると、岸多に質問を始めた。




「どうして増税ばかりするんだ!」


「それは、、日本の為です」


「何を言っていやがる、じゃあどうして集めたお金を無駄遣いするんだ!」


「それも日本の為なんですよ」


これにミハイルがあきれて言う。


「イミガワカラナイヨ」


ミハイルは頭がパンクしてしまったようだが、日本人二人は諦めない。


「じゃあ、カルト宗教に忖度するのも、息子が官邸で宴会をしたのも国の為なのか?」

「お前はあえて日本にマイナスになるような行動をとっているとしか思えん!」


バシッ、バシッ


激しいこぶしが飛び交う。


すると総理は小さな声でこう打ち明けた。


「それは本当でもあり、ウソでもある。


実は歴代の総理大臣はみな、あるとある秘密結社に脅されているんだ。

いうことを聞かないと、日本を滅亡させるとな」


突然の独白に呆然とする3人。


対する、総理はタガが外れたように話続けた。


「じゃなかったらなあ、こんなアホみたいなことばかりするはずないだろ!」

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