第3話 世にも奇妙な異世界転生

美しい山々に囲まれた城。


その最上階に位置する王の間で、老人がベットに横たわっていた。


彼はエリン・アッシュバルト。


23歳の時に王の座を受け継ぎ、以後国のために尽力してきた。


そんなエリンはベッドを囲む一族と家臣にこう、語りかけた。


「い、、いよいよ別れの時だ。

さすがのワシも、年には勝てんようじゃな。。」


これに側近の1人、長槍使いのクロムが答える。


「何をいいますか!ドラゴンをも打ち負かすエリン王が、死ぬなどあり得ませぬ」


さらに息子のグリンベルト王子が言葉を重ねる。


「そうですとも、これまで30もの国々を打ち負かしてきた父上です。

歳などに負けるはずがありませぬ」


力強い言葉とは裏腹に涙を浮かべる王子を見て、

エリン王は力なく笑った。


その時、王の間全体がまばゆい光に包まれた。


「なんだこれは!」


慌てふためく王子にクロムが説明する。


「これは神の導光だ。

神はこの光を通して死にゆくものの人生を読み取り、天国へ行くべきか、地獄へ行くべきか判断するのだ」


そうこうしていると、どこからともなく声が聞こえてきた。


「エリン王よ、貴様は人に誇れるような働きをしてきたか?」


これが神の声か。


エリン王は最後の力を振り絞ってベットから起き上がると、天に両手をかかげ叫んだ。


「私はこれまで30のドラゴンを討伐し、戦においては敵兵8万人を葬ってきました。」


これに神の声が答える。


「ふむふむ、、そのようだな。

命を奪ったことを誇るとは、なんというおぞましい生き物なのだ。


貴様には、、、地獄がふさわしい。」


まさかの決定に周囲の者たちがざわつく。


「ど、どうして」


一方、エリン王は意気消沈した様子。


だが、数十秒の沈黙ののち、言葉を絞りだした。


「地獄とは、、どんなところなのですか」


これに神が答える。


「地獄とは、貴様のようなおぞましい生き物が、互いに蹴落とし合い、いがみ合い、憎しみ合う所よ」


あまりのショッキングな言葉に倒れこむエリン王。


そして、静かに息を引き取った。


「父上!」


「王様!」


家族と家臣が悲しみに暮れている頃、

エリン王は真っ暗で狭い場所に閉じ込められていた。


「ここはどこなのだ?何も見えぬ。」


だが次第にまばゆい光が近づいてくる。

と同時に複数の人物の声が聞こえてきた。


「もう少しだ!」


「痛い!痛い!」


地獄の鬼どもが罪人を痛めつけているんだろうか。

エリン王はかつてないほどの恐怖を感じていた。


やがてエリン王の体はまばゆい光に包まれた。


「おめでとうございます。男の子ですね」

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