第10話 明晰夢
――これは夢なんだろうか。そうだ、夢だ。つまり、
『心葉の中学校日記』
私の机にそう書かれた日記が置いてある。これは、あの辛いことを書いていたリングノートとは真逆で楽しい思い出だったり、嬉しかったことがびっしりと時々おかしい文が混ざってしまうぐらいに書かれているものだ。でも、この日記は中学2年生のときで終わっている。言うこともないかもしれないけど、3年生からは勉強の日々が始まったから。
そのノートを誰かが見ている。後ろ姿しか見えないので、それが誰なのかは分からない。
1ページ目が開かれる。
――1年。入学式。
『今日から〇〇中学校に入学しました。担任の先生は体育の先生で、たい焼きが好きだそうです(笑)。たい焼きを買うまで3時間並んだこともあるそう! 今日から始まる中学校生活楽しみだー! ワクワクが止まりません。笑顔で卒業式を迎えられることが今の目標です!』
――2年。修学旅行。
『これは、修学旅行のホテルで書いてます。とにかく1日目、楽しかったです! 清水寺とかからの景色はすごくきれいで、班の子が沢山写真を撮っていて、あやうくバスを乗り過ごすところでした(笑)。ちなみに、部屋では女子4人で定番だけど恋バナしました! 少し胸がドキドキした!』
なんか、このときの私、すごく楽しそう。今の自分じゃないみたい。
本当にこれ、私だったんだろうか。
これが白野心葉だったんだろうか。
――2年。終業式。
『今日で楽しかった2年生も終わってしまいました。あっという間だったな。楽しい時間ほど早く過ぎてしまう……それを自分の心で実感できました。本当に私と仲良くしてくれた人たちありがとう! 明日からは親ができるだけ高校は高いところに行ったほうが視野が広がったり……とか言われたので、私はそこまで高い高校に行きたいとかではないけれど、その希望に添えるように勉強漬けの日々を頑張っていきたいと思います! 頑張るぞ私! 何事もやればできるんだから! 白野心葉、ファイト!』
「そうか……」
何かを悟ったような声がした。
見えていなかった人物の姿が少しだけ見えた。これは、少し汐斗くんに似ている気がする。この感じは。
でも、本当に汐斗くんなんだろうか。
そうだとしたら、なぜ汐斗くんが私の日記を見てるの……? 私の過去を見ているの……?
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