第1話 さようならこの世界
だから、私はもうそろそろ自ら天国に行こうと思った。勉強だけに高校生活を使うみたいな何の楽しみもない人生なんてもうおさらばしたい。天国という自由な世界で鳥のように自由に、そして大きく羽ばたきたい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
こんな何もできない私に期待してくれて、色々私の為に努力してくれたお母さん、お父さん。
でも、それが逆に私を苦しめていた。苦しい紐を解く方法はこれぐらいしか――自分から明日を閉じるぐらいしかない。
だから、どうか許して。
でも、別にお母さんのこともお父さんのことも私は決して嫌いなわけじゃない。それだけは分かってほしい。ここまで育ててくれて本当にありがとう。自分があの時、本当はもう少しレベルの低い高校に行きたかったんだって言えなかったのが悪いんだし、そうすればきっと優しい2人なら分かってくれたはずなのに。言えなかったとしても、私がもっと勉強できればよかったのに。だから、2人のせいじゃない……。全部全部自分のせいだ。こんな自分が嫌なだけだから、分かってほしい。
本当はこんなことしちゃいけないって私だって分かってるよ。
生きているってことが何なのか分からないぐらいになっちゃったから、もうこうするしかないんだ。
この世界から何事もなかったかのように消える。
だから、私は今日、学校の屋上から身を投げることにした。
もう、迷いはなかった。それが私に残された道だった。その道はもう目の前にあった。
別に怖くなんかない。怖いものなんて何もない。
生きていたって、楽しみなんかないんだから。その先の道に光なんてものは存在しないんだから。
別にスタイルがいいとか、かわいいとかじゃないから私を好きな人だってきっといないし、私が消えたことで悲しむ人なんて親と少し関わりのあった友達ぐらいしかいない。私がいないことで世界が大きく変わることなんてない。些細な出来事だったということで片付くだろう。
――それに何か叶えたい大きな夢だってあるわけじゃないんだから。
私は最後に、どこまでも続いていて、私の心なんかよりも何倍も美しく透き通っている雲なんか1つもない絵に描いたような青い空を見上げた。私は本当はこうなりたかったんだな。でも、叶わなかったんだな。
普段よりも近くに感じられる風が、私の髪の毛をそっと揺らす。その揺れた髪に手を触れる。
私の人生は17年で終わっちゃったな。
あっという間の人生だった。でも、ある意味長かったな。
本当に人生の扉を閉めちゃっていいのかな――いや、そんなことを考えちゃだめだ。私はそう決めたのだから後戻りはしたくない。
でも――
私はこれ以上悩むと、もしかしたらもっと生きていたいという気持ちが出てしまうかもしれない……そう思って、決断をした。私はフェンスに足音を立てないようにしながらゆっくりと近づく。
これが終われば私を締め付けるものなんてなくなる。目をつぶって落ちればいつの間にか、気づかないうちに人生は終わっている。最後に風を感じてから、私は覚悟を決める。
よし――
さようなら――
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