明日を見る君は、私の世界を変えてくれた
友川創希
プロローグ
――どうして私は今、生きているの?
この質問に君ならどう答えるだろうか。
この単純な――でも奥が深い質問にしっかりと答えられる人はそう多くはないのかもしれない。
仮に答えられたとしても、それに対し本当にそうなの? と聞かれたら少し悩んでしまうだろう。
私もどうして生きているのかよく分からないこの世にいる人間の一人だ。
私は今から2年少し前までの中学2年生までは、どこにでもいるようないたって普通の女の子だった。
学校に行けば友達と最近あったことや趣味、時には恋愛の話で盛り上がり、放課後になれば部活に励み、家に帰れば友達とビデオ通話したり、好きな俳優の出ているドラマを見たり……今では夢みたいなことをしていた。あの時は本当に楽しかったな。人生が満ちていたな。
でも、私の人生という世界は、中学3年生から大きく――まるで180度回転したかのように変わってしまった。
ただ同じような事を繰り返す毎日に諦めが出てくる。生きていても特別楽しさってものを感じられない。そもそも生きているって思えない。毎日が焦りや不安で苦しい。何かに強く縛り付けられてるよう。
このまま生きてるより、いっそもう天国という別の世界に行った方が幸せなんじゃないかとも最近は思うことが増えている。
別に誰かにいじめられてるとか、親に暴力を振るわれてるとかそんなことはない。でも、私が生きていて価値があるのか? って考えることはその大きさは様々かもしれないけれど、高校生ぐらいの年頃ならごくいたって普通にあることなんじゃないか。
私は『
このノートはいわゆる私が辛い時とかに、その気持ちを文字という形にして少しでもその気持ちを抑えようと半年ほど前に買ったものだ。
そのノートの1ページ目には次の言葉が大きく書かれている。
『勉強が辛い。追いつけない』
私の通っている高校は県内でも屈指の進学校だ。それゆえ、勉強の進むスピードも早いし、内容も難しく、授業中、先生の喋っている言葉が暗号のように聞こえるときだってある。
元々私は勉強がそこまで得意ではなかったので、この高校よりもランクが2つ3つ低い高校を目指していた。でも、私の親がいい高校に行けば大学の視野も広くなると思うし、今後の心葉の人生をより豊かにできるとか言って私のために塾代や参考書のお金を沢山出してくれたのだ。そこまでしなくてもいいよと言おうとしたことは何度かあったけれど、お母さんはお金を貯めるために趣味のお菓子作りをやめたり、お父さんも大好きだったビールを飲むのを控えたり……。私のためにここまでしてくれる姿を見てしまっては、その期待に応えなきゃいけないんだなという気持ちとか様々なものが私の中を支配して、とても言う気にはなれなかった。
私は親の努力もあって無事にこの高校に入学することができた。でも、それからが辛かった。キラキラした高校生活なんて待ってなかった。元々持っている力よりもレベルの高い高校に入ったことで、塾とかには入っていない私が勉強についていくことが難しいのだ。親は塾とかは大丈夫? とか聞いてくれたりはするが、親にこれ以上好きなものを制限したりしてほしくはなかったし、迷惑をかけたくなかったので、大丈夫だよといつも答えることにしている。
そういうこともあって、1日の時間のほとんどは、勉強のためだけに費やしている。そのため、なんとかテストの順位は上からよりも下から数えたほうが早いけれど赤点を取ることはないし大体は理解できているので、勉強についていくことはできている。
でも、私だって本当はあの時みたいに皆と話したり、遊んだり、部活をしたり、自分の見つけた趣味をやったり……一度しかない高校生活を――青春を楽しみたい。色んな感情を体験したい。自分の人生を虹色にしたい。何かに縛られるこの生活なんて本当は嫌だ。
だけど、そんなことしたら私は勉強についていけなくなって留年してしまう。自分一人の人生だったらいいけれど、そんなのはここまで応援してくれた親に申し訳ない。だから――
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