第37話 アリア 御指南≪レクチャー≫
「はいほーい☆次は私の番だね~よーし、お姉さん頑張っちゃうぞー☆」
そういってのんきな口調と打って変わり剣を引き抜く。
今回取り出した武器はアリアの身の丈を超える大剣
どうやら俺に教えるために合わせてくれたらしい
「今回教えるのは『
前はこれ教えられなくてごめんね☆」
「いや別にいいよ。参考になったし」
「優秀な雄一君ならすぐ会得できそう☆それじゃあ始めるね」
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「あれでも、かなり負い目を感じてるんですよアリアさん」
≪そうなの?≫
女神の力を使い本来認識できないフェアリーを相互理解可能にしたキャシーに向けて花道佳夕は言う。その声はどこか痛ましさを感じられる。
「大けがしたのに真っ先に雄一さんを助けに行こうとしたり
パーティーで一番強いから責任感も強いんでしょう
そして雄一さんと同じ自己犠牲を真っ先に選ぶタイプです」
≪まあ、そうね…。誰も殺していないとはいえ暗殺者として育て上げられたもの
そのこと尾を引いているのかもね≫
珍しく佳夕はアリアに向ける感情を嫉妬ではなく純粋な尊敬の念を込めている
アリアは強く雄一の助けになる。
それに対し佳夕自身ジェラシーは感じられるが
それはアリアが雄一に生きていてほしいためという願いだからだ。
自分も同じであり雄一に死んでほしくない。その願いは共通しており
最大限力になりたいと思う。
その思いは勝ち負けではなく互いに尊重したい
それが佳夕自身アリアに抱いた感情だ。
互いに競い合う間柄であり互いに思い人が同じ仲間でもある。中々複雑であるが佳夕自身はそれを良しとしていてアリアもそれを理解している
女性同士の友情と言えるだろう。同性の友達が出来て嬉しくもあるし
互いに慕情を抱く相手が雄一であるのは唯一複雑ではあるが
それほどにアリアを佳夕は認めていて競い合う好敵手とみなしているのも事実
「だから、私もアリアさんも雄一さんが生き延びられるようバックアップしたいです。なので出来ればキャシーさんにも協力してほしいのですが」
≪当たり前じゃない。私はアイツのフェアリーよ。守れなかったらそれこそ存在意義を見失うじゃない≫
「ありがとうございますキャシーさん。いえ女神キャルシュリー様」
≪キャシーでいいわよ。敬称もいらないし仲間でしょ?
ああホント歯がゆいわぁ。今できているのが全人類のステータス維持だけなんて≫
「そういえばお尋ねしたいのですがキャシーさんは女神の力をあまり使えないのですか?」
≪出来てたらとっくにやってるわよ。いえ、もうやっているの
私の力の大部分はゲート顕現維持に人間すべてにレベルとステータスを付与する力
それを継続するために9割はリソースを使っているわ
ほんと頼りないわ私。みんなの役に立てないなんて…≫
それを訊いて佳夕が絶句するのは当然だ。
人類の為異世界の為女神がそこまで力を使いさらに自分たちを助けようとしている事実
赤の他人に過ぎない自分たちにそこまで力を酷使していること。今なおそれを怠らず持続していることに先ほどの自分の発言を佳夕は恥じ謝罪する
「すみません!!そこまでしてくださっているのに私、…すみません!!」
≪別に気にしてないわよ。それ以上にもっと自分磨きすればよかったって自分に腹が立つわ。他様に迷惑かけてこんなざまなんて女神なんてよく名乗れたものね≫
「そんなことありません!キャシーさんは凄く頑張っています
それに比べて私にできる事なんて…」
≪違うわよ。出来る規模の大きい小さいじゃないわ。
私はもっと頑張るべきだったけど…。
今できることを精いっぱいやっている。それはみんな変わらないわ
私が保証してあげる。佳夕ちゃんはすごく頑張っているわ」
「…!ありがとうございます」
その言葉を受けて涙目になる佳夕に母親のような慈愛の笑みを浮かべるキャシー
今できることを精いっぱいやっている。
それ自体にキャシーと佳夕に差異はない
そして微笑とは裏腹にキャシーは心の中で独白する
(そう、一番
女神の力を総て使えば魔王の生み出す魔蝕病だって…)
そうなれば、人類がモンスターに太刀打ちできないと分かったうえでも思わざるを得ない。
雄一があんなに傷つく理由を取り除けられる。
代償は大きいが出来る可能性がある分歯がゆさは増すばかりだ
(本当に、使えないフェアリーでごめんねマスター…)
パーティーの中で一番献身的なのは他でもないキャシーであるが
それを本人が気づくことはないだろう
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教わる剣術 『
互いに一合切り結ぶ試合形式で成されていた
打ち合う前にアリアが稽古の説明をする
「
相手の攻撃を利用して斬撃を放つことで威力を最大限に発揮する剣技だね☆」
「なるほど、まさしく『怖いもの知らず(デアドレッド)』ってわけだな」
「『超弩級斬り(デアドレッド)』って意味もあるけどねー☆
そう、ビビってたら出来ない技だね。下手したら自分が大けがする技だから
その分大きなリターンがあるから持っていて損はないよ☆」
カウンター技。そういえば俺はそう言った技術は持ち合わせていなかった
回避か致死を癒す病―ダメージオブランゲージ―を狙う攻撃の受け方
迎撃に対する技術に関心がなかったことに気づく
下手をすれば死にかけるが俺の場合それで損はすることはない
かなり重要な技術だ。確かにそれは見様見真似ではできない
こういった試合形式でなければ実践できないだろう
アリアはもう一振り大剣を取り出し俺に手渡す。
それは刃を引いていない大剣で練習用の剣のようだ
「これは?」
「そりゃ教えるのにケガさせちゃダメでしょ☆
その大剣は特別製で相手を傷つけないよう出来ているの
非殺傷のコーティングがしてあるから存分に振るって☆
私も同じの使うから」
「もっと厳しめでもいいんだぞ?実践に近いほど覚えが早くなるし」
「いーや、そういうとこだぞ雄一君☆
キミは自分を軽視しすぎるきらいがある
安心しなさい、私はプロだから安全で最短な教え方をしてあげる☆」
そういうものか…と思いながら軽く振るってみる
重量は感じないし一応ダンジョン用の武器なのかと確認
愛染と同様なので練習でラグは感じないだろうと確認したのち
「じゃあ始めるよ☆怪我はさせないけど
加減はしないぞ☆」
「久々だな。アリアと斬り合うの」
「もーやだー☆私あの切った張ったはトラウマなの☆」
「悪い悪い…じゃ、行くぜ」
「うん、ドーンと来なさい」
そう言って中腰になり横一線に切り払いを放つ
切れないとはいえ胴を泣き別れにするほどの遜色ない一撃を叩き込む。
むろんアリアがそれに対処できるのは織り込み済みだ。
右から左へ横一文字に一閃。それに対しアリアは軽く大剣の軌道を狂わせて往なす
宙を舞う剣、されど柄は手放さずそのまま唐竹割のように大上段で振り下ろし一撃をたわむことなく振り下ろす。
間断なく放たれた一撃に対しアリアは接近。
至近距離まで迫ったアリアに対し俺は無防備であるが速度は俺の剣が振り下ろされる方が先。
俺の剣の中腹にいるアリアの立ち位置は当たれば本来即死たる撃尺の範囲。
半円状に軌跡を描く剣撃は理想的な斬撃を見舞いいかなるものも斬断する威力を発揮するだろう。
だがそれが逆に仇となる一撃。一撃必殺に対し更なる一撃を相乗するのがカウンターだ。
それがこの技の面白いところ。相手の理想に入れば入るほど深くはまる切り返し、
剣の腹にアリアの剣が宛がい交差。さきほどの俺の剣の威力がアリアの剣に触れ振り降ろされる一撃を利用し加速。
アリア自身を軸に下から上へコンパスのように回転し俺の剣が当たるより先にクリーンヒット
見事なカブト割りが俺の頭頂に向け叩き込まれた。
遅れて振り下ろされる俺の剣はアリアの横をすり抜け空転し間抜けな軌道を描いてしまう
見事すぎるカウンター。先ほど宛がった行動は威力を乗せるだけでなく軌道を微妙にずらし僅かな力で回避を可能としたのだ。衝撃はあるが痛みはみじんも感じない。意識も飛ぶことはなく
そのまま俺は先ほどのカウンターに対し滅茶苦茶感心した。
完膚なきまでに打ち込まれた打突は額縁に飾りたいほど鮮やかだった
「すっげぇ!スゲエよアリア!!確かに欲しいよこの技!!」
「いやーそんなに褒めないで事実だけど☆
でも喜んでくれてよかった。これなら…」
「・・・?」
調子がよさそうに語るも語末が澱むアリア。
どうしたのだろうと少し心配になるがすぐに調子を取り戻し
「これなら更に雄一君の格好良さに磨きがかかるね☆」
「ははは…別にそれは良いかな…」
そう言うの求めてないけど。まあ格好いいなら良いか。なんて思いながら
アリアは胸中に呟いた
(これなら…君は死なないよね)
雄一はなぜカウンター技を教わったのか能天気にも知らない
いや、かすかだがわかってはいると思う。
なるべく雄一にリスクが及ばないよう配慮している。
だが雄一とアリアではその価値観の差は明確に違う
雄一からすれば
だがアリアにとっては違う。
確実に雄一が死なない術をアリアは教え込みたいと誓っている。
常に負担をかけている貴方に報いたいから。そう心に誓って
(君は守るよ。私の命に代えても)
そんな空恐ろしいことを考えていることも知らず
互いに互いの命の軽さを問うように
仲間を想う気持ちは強く、危ういのかもしれない
カクヨムコン用 VRMMOゲームと現代ダンジョンで頑張って異世界へ 竜翔 @RYUSYOU
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