第36話 経験蓄積《アップデート》型《バトルスタイル》

「へー、新しい鎧試したんだ☆見たかったなー☆」

「ま、これから見れるからいいんじゃない?」

「かっこいい鎧ですねぇ…。このデザイン雄一さんが決めたんですか?」

「いや、全部店長に頼んで指定はしてないよ。でもかっこいいよね…」


特に鎧の強化はありがたい。重装備では大剣を持て余すため

足りない筋力を補い防御も鎧が肩代わりしてくれる逸品


そしてこれほど、デッドゴードの報酬すごかったんだなと実感する

俺金に無頓着だし


そして弓野さんに会ったことも話した。隠す事でもないし

何より仲間に嘘を付くのは忍びない。

隠し通せる気がしないしそのメンタルもない

最初は「またタラシか…」みたいな目で見られたが参考になった部分があったし俺に女性と付き合う縁はない。彼女いたことないしありえない。


そして彼女は上級のハンターでトップランカーと俺では天と地の差があるので親しくはなったがそれ以降は強くなってから会う約束をしている。

そしてアリアは顎に手を置き


「しかし…迂闊だったね☆私ってそんなに有名人だったんだ☆」

「そりゃ素性のしれないレベル68のハンターなんて興味を持たない方がおかしいよ」

「でも私ってこれ以上レベル上がらないのよね☆だからあんまり期待されても困るんだけどね☆」


そうは言っても多種多様なスキルと魔法によるバフと武芸百般オールラウンダーの戦術。

環境や場所に応じて戦術を変える機転の良さはトップランカーに入っても全くおかしくはない。


「謙遜が過ぎるなアリア」

「それ君が言う~?」

「俺は狡く無謀で仲間と運に助けられただけだよ。これから先それが通じる保証はないし出来れば致死を癒す病―ダメージオブランゲージ―も使いたくないし

魔素洞調律にも頼りたくない。俺は俺なりに強く成りたいんだ」

「ふぅん…殊勝だね。流石私が見込んだ男☆」

「私の方が先です!!」


なにその対抗意識。多分同じくらいだと思うけど

まあそれはともかく


「まあまあ、だから俺ももっと強くなるために佳夕さんとアリアの戦いを参考にさせてもらうけどいいかな?」

「あったりまえじゃん!光栄だよ私☆」

「私もです!雄一さんのお役に立ててうれしいです!!」


それは良かった。戦いのスタイルとは血がにじむ努力の結晶だ。

それを真似されて不快に思う人も少なくはない。


俺では二人の強さを生かし切れることはできないが

精いっぱい敬意を表し力と血肉に変えて見せる。


二人から学ぶことは多い。アリアも沢山戦術を持っているし

魔法の使い方も佳夕さんに教えてもらいたい


ただ問題は一つ。俺の魔法はMAGで行う。

そしてMAGは高火力の魔法が打てない

カスタマイズで強化は出来るが本物の魔法使いには及ばない

だから佳夕さんに教えてもらうことは


「佳夕さん」

「はい!何でしょう!」

「合体魔法について教えてくれるかな?MAGだから魔法使いと勝手は違うけど

ある程度の要領を掴むために知りたいんだ」


するとぱぁ!と佳夕さんは明るい笑顔で。まるで待ってましたと言わんばかりに食いつく。急接近してきたので後退してしまう。


「良いですよ何でも教えます!!というか私の魔法全部教えます!!ですので私にできる事全部させてください!!」

「う、うん…」


高位の魔法使いに及ぶわけないのでそれは土台無理なのだが

その気持ちと姿勢はとても嬉しい。思った以上に気合を入れて応えたのでちょっとたじろいでしまう


そしてその後アリアに一瞥し「フフッ」と笑みを放っているし…この二人仲いいんじゃなかったか。

だがアリアは喧嘩を買うことはなく余裕の笑みを浮かべて返したので「むぐぐ…」と佳夕さんは悔しそうに唇を噛んでいる。


一体何と戦っているんだろう…。

まあそれは知る由がなさそうなので置いといて


あとは神楽の運用方法だ。

魔素を吸収し強化する鎧ではあるが単純に防御やスピードを上げるというだけだと何か生かし切れていない気がする


常に魔素を吸収しているわけではなくある程度の閾値に達すると自動的に魔素を吸収する仕組みらしい。

といっても常に俺はその水準であるために常時魔素を吸い上げられ防具が強化されている。いつか攻撃に転用する武器も欲しいと思ったが


(愛染…)


背中に背負っている愛染の柄に触れる。

こいつ自体魔石で強化できるがそれでも限界がある。

いつか手放す日が来るかもしれない。

そう思うと少し寂寥感が胸を包んだ。


例え魔素を吸収するチューンナップをしても最初の武器故に限界がある。

だから、いつか別れが来るとしても…それまで頼りにしてるぜ相棒


感傷に浸り終わり意識を切り替える。今は時間が惜しい

―時間が惜しい?何が

―それは…

振り切って本当に切り替える。まだ、割り切れず迷っている自分が情けない


それよりも。MAGをどうやって使いこなすかだ。

アリアから教えてもらうことも多いが

佳夕さんの魔法はかなり重要だ。魔法の有無は戦闘を左右するほど魔法は強い


物理的に切った殴った方が威力はあるがそれだけだ。魔法の真価は威力だけでなく多彩さ。汎用性だ


アリアのようにバフ魔法があれば俺もさらに強くなれる。

スキルと違いMAGは外付けなので才能の有無は関係ない。

そしてMAGは佇立せずとも短縮詠唱で放てるので剣士の俺にもってこいだ


といってもMAGは所詮MAG。拡張してもカスタマイズしても威力に限界があり

新型のMAGは発売されていない。理由は簡単。単純に需要がないから


MAGがなくとも仲間に魔法使いがいればいいしスキルで補えば必要性も薄くなる

MAGに用いるアイテムを使うくらいなら武器や防具に充てた方がはるかに効率がいい


なのでMAGを愛用するハンターは皆無に近い。だから俺がMAGを用いれば嘲笑の的にされること間違いなし。もうひとつ理由としては基本強いハンターは必然的の魔法が使える。なのでMAGはむしろ邪魔でしかない。


だがそんなことはどうでもいい。


俺は生かせるものは総て使って全力で臨むだけ。

笑いたい奴は勝手に笑えばいい

器用貧乏は器用貧乏なりの戦い方がある。

結果的にモンスターを倒せればいかなる手段であろうとどうでもいいはずだ。


・・・今更だが。どうして俺には魔素があって魔力はないのだろう?

魔力がない人間はいると言った。

だがそれは正確には魔素が低すぎたせいでMPがつかなかったり

MP自体が使えるほどのレベルにないという意味で

本来ならば、魔素が高ければ随従し魔力も得られるはず。

なにか俺には致命的に足りないものがあるのだろうか…?

まあ考えたって詮無い話。ないものねだりをしても降ってわいては来ない




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――――――――――


という訳でまずは魔法使いである佳夕さんに魔法の指南を請うことにした


「よろしくお願いします!佳夕さん!!」

「やっと私の出番ですね!アリアさんばかりで不満だったんですよっ!!」


まあそれは仕方ないとしか言えない。

俺の主体は剣であり近接戦闘に特化しているのは俺以外にアリアしかいなかったのが大きい。

逆に魔法はMAG頼りの俺は使用用途に伸び悩んでいた為使う事自体検討していなかったこともあってだ。


今回、MAGもメインに使っていくという方針が決まったので佳夕さんに師事することも多くなると思うので期待には応えたい


「といっても大技は使えないから魔法の組み合わせによる合体魔法を教えてほしいです!」

「良いですよ!とっておきを教えて差し上げます!」

「うん!人の話を聞こうね佳夕さん!!」


火力の高いやつを教える気満々で気合を入れてくれるのは嬉しいが

俺が教えてほしいのは低コストで高威力が出せる組み合わせと

バフ効果の高い魔法である


状態異常のアドはかなり高い。戦いにおいて少しの隙が命取りである世界で

任意に鈍らせるデバフ魔法は重宝される。下手に自身を強化するバフ魔法もアリアのように高度ではない場合無駄にMPを使う為コスパが悪いのだ


俺の魔力はMAGのキャパに依存する。まだ強化を行っていない為に容量は限られている。ならばできうる限り捻出し打撃を与えることを目的としたい。


MAGの優れた点は魔力がカラになっても本人に影響がない事

つまり余力を残す必要がない。そのメリットを最大限生かす。


と言っても佳夕さんは優しい性格故かデバフ魔法を一切有していない

そこはおいおい拡張や魔石で強化し会得するとして


今回必要なのは魔法の適切な運用方法。魔法使いとMAGの魔法は違うが

魔法の扱いに慣れることも考慮し魔法使いの魔法をMAGの魔法に落とし込む


だから、今回教えてほしいのは


「佳夕さんに教えてほしいのは瞬間火力の高い魔法と時短の魔法だね」

「へぇ~~~~~そういえばそんな事考えたことなかったです。

う~ん。瞬間火力ならば読んで字のごとく炎魔法ヴィリアですね。

雷魔法が一番威力が高いですが瞬発的に威力を発揮するのは炎だと思います」

「なるほど…勉強になる!」


「あと魔法を放つのが一番短いのが自然魔法ですね。理屈としては種を飛ばすイメージがあるせいか弾丸みたいに早く撃てるんですよねぇ」

「つまり、それらの条件を満たすのが…」


「炎と自然を組みあわせた灼緑魔法『ヴィアーナ』ですね。

炎と自然は威力を高め合うので一番早く火力を放てるのはそれだと思います!」


真面目に参考になった。というか思った以上に収穫がすごい…!

ある程度の試行錯誤は必要かと思ったがふたつとも条件に合いコストも低い初期魔法だ。理想としてこれ以上ない


「ですが私、この魔法苦手なんですよね…。実は弱点があって至近距離じゃないと自然魔法部分が燃え尽きて遠距離で放てないんですよ…」

「いや、かなり合点がいったよ。佳夕さんがその魔法使ったとこ見たことなかったし

遠距離魔法を得手とする佳夕さんが苦手とするのも納得がいくよ」


そして裏を返せば至近距離なら絶大なる威力を発揮できる

近接戦闘をメインとした俺として最善最良の魔法の組み合わせとなる



ということで今回は佳夕さんの魔法口座で終わり次回からはアリアの新たな戦術を教授してもらうことにした。

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