第27話 瞬華蹴踏《ターン・ステップ・ターン》
『死への誘い《キルゼムオール》』展開
それにより形勢は圧倒的に不利になった
特性は防御が低いものの即死付与。だが逆にこれは
(これで『天魔の威圧―フィアウォード―』は使えない。使えばせっかく出した『死への誘い―キルゼムオール―』が無効化されちゃうからね☆逆に言えばこれを使うという事は相当追い詰めたという事☆)
おもむろではあるが着実にダメージを与えローテで展開した攻撃はHPを確実に削っていたのだ。つまりデッドゴードはここで一番の勝負に出たというわけだ。
防御魔法はまだ早道佳夕は習得できていない。だが鹿目雄一が彼女を確実に守るだろう
『天魔の威圧―フィアウォード―』が使えなくなった今通常の戦闘スタイルに移行できる。デバフをデッドゴードに付与しアリアは自身に
これより展開されるは
だがアリアはすぐには動かなかった。解せない。あまりにも都合が良すぎる。
暗殺特化型という手の内はデッドゴードは知らない。ゆえに自身に有利な展開が偶然できたことはおかしくはない。
だがそれを差し引いても視界が窄まる状況へ転じさせるというのはあまりにも下策だ。
例えそれが追い詰められて一髪千鈞を引く状況下だとしてもアリアの知っているデッドゴードはこのような手を打つモンスターではないことは承知の上だ。だからこそまだ行動に移せない。絶対に何かある。天性の勘が、今までの経験則がそれを物語っている。今まで幾度も戦ってきた相手だ。相手の手は知り尽くしている。これ以上スキルは持っていないハズと分かっているのに。デッドゴードの炯々とした双眸が余裕を持っていることにたたらを踏んでしまう。杞憂かもしれない。この逡巡はわずか2秒。だがもう迷っている時間はない。
「…
スキル名を開示しアリアの体が動いた。バフが効いているならば10秒先にデッドゴードの生存は確認できない。
だが相手の方が速度が速い。振り下ろされる戦斧に対しアリアの瞬発力だけでは対処は難しい。砕かれる音が響き黒霧が散り振り下ろされた箇所に4メートル地面が抉られている。その余波で突風が渦巻き砂塵が吹き荒れる
そして振り下ろした戦斧を引き抜いたデッドゴードは周囲を見渡す。そしてクレーターができた場所にはアリアはいない。だがそれは消し炭になったというわけではない。砕かれているのは先ほど展開した剣であり彼女がいる場所は数メートル先の剣の傍らだ。
文字通りさっきまでいた場所から数メートルの瞬間転移。
さらにアリアはどこからともなく剣を擲ち上空から都合50本の剣を周囲に展開し
勝負ありだ。例えこの見えない視界で見えていたとしても攻撃を与えれば黒霧は攻撃の余波で霧散してしまう。せっかく展開した即死の霧もまるで効果を成さない。当たらなければなにも意味をなさない。
─3秒経過
攻撃はかすりもせずされど剣を破壊しても立て続けに剣が展開され隙が全く存在しない。回避と移動先の剣。打開策はこの『死への誘い―キルゼムオール―』を突き刺さっている剣山ごと消し飛ばさなければ移動手段を立てない。だがもしそれを実行すれば間違いなくくるのはデッドゴードの死である。
─6秒
回避、攻撃速度、攻撃範囲、動体視力と反射力の測定、確実に討てる間合いと合わせるためのタイミングのすり合わせ、隙を窺う事に6秒費やし確実に黒いヤギの怪物を屠る準備は整った。それを実行するために3秒と残り1秒で決着がつく
あとは簡単、3秒を三分割し一秒に分身を用い三体。そのフェイントとミスディレクションの隙間を縫ってバフを込めた連撃を一息で放ちとどめを刺す。攻撃は完璧に読めた。だからこそだろうか。
そして、機を待っていたかのようにデッドゴードが顔を不気味に歪めた瞬間
「まさか…!??」
誤算というよりやるとはおもわなかった行為に彼女は驚き声を上げた
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHAAAAAAAAAAッッッッッ!!!!!!!!!!!!』
天魔の威圧―フィアウォード―。わざわざ展開した『死への誘い―キルゼムオール―』を自らの手で打ち消したのだ。そしてそれに伴いアリアのバフやスキルも打ち消される
つまり待っていたのだ。アリアを討ち取るこの瞬間を。
背後に回り切り伏せようと移動した瞬間に発動した為
例えるなら着地するためのタイミングがずれたようなもの。地面に接地する力加減や体重の置き方などが一瞬でも間違えれば転倒する。文字通り本来の想定した移動法がわずかでも綻んだために体が硬直してしまう。
おかしいとアリアは思った。これはまるで最初から自分自身だけを標的にしていないと成立しない戦いだ。戦術も何もない。確かにこれならアリアを討ち取れるだろう。だがその後は?雄一と佳夕がその寸隙を突いて倒しにかかるだろう。
『死への誘い―キルゼムオール―』が『天魔の威圧―フィアウォード―』によって打ち消されれば雄一の
(ああ…マジ?それ…)
アリアは気配探知スキルを持っている。ゆえに周囲に魔物の気配がないのは分かり切っていた。という思い込みが。三対一で戦っているという考えが。嫌な予感の正体が全てわかった瞬間。横殴りに斧撃が叩き込まれる
「アリアぁああああああああ!??」
「アリアさんっっ!!!!!??」
だが瞬間的に
「ジョブジョブ。私は問題ないんだけどさー・・・」
「良かった…」
「死んでしまったかと思いましたよ…」
ほっと胸をなでおろすのもつかの間というようにアリアは瞬時に臨戦態勢に入る。
二人とも疑問符を浮かべ体力が削られておぼつかないデッドゴードを見るが
アリアの視線はそこにはない
先ほどの笑みを絶やさず。まるで役目を果たしたかのように
満足そうにデッドゴードは倒れた。HPではなく単純に生命活動が限界を迎えたようだ。そして…この状況に二人はついていけてない。
「ねえ、雄一君。周りに気配がある?」
「・・・?いや、ないけどそれがどうしたの?」
と率直な感想を述べ同じ考えだったことを恥じるようにアリアは片手で顔を覆う
まるで気配は感じられない。だからこそ三対一で戦うことができた。他に同じ奴がいるなら戦法を変えている。と思考した瞬間雄一も気づく
「・・・なあ、まさかデッドゴードって気配を消すスキルがあるんじゃ…」
それに対しアリアは首を横に振る
「いや…無いよ。デッドゴードに気配を消す隠形スキルはないんだ。だからそう思い込んでいたんだ」
「言っている意味が解らないな…。何か?他に隠密系のスキルや魔法を使えるモンスターがいるってのか?なら」
気配を消すスキルや魔法さえ消えているのだからわかるはずだ。気を張っていたから嫌でも気づくはず。
「そう、『天魔の威圧―フィアウォード―』で打ち消されている。だから少なくとも近くにはそういったタイプのモンスターはいないの」
「なら何が言いたいんだ?」
嫌な予感は分かっているのにその正体がつかめないもどかしさ。さっきからアリアが言っているのはまるでヒントを与えているから気づいてほしいようにも聞こえる
「含みがある言い方はやめてくれ。早く教えろ」
「あ…」
花道さんが声を上げたのを聞いて俺は無意識にそちらを向いた。そこには
黒い霧が俺達の周囲を包みその先で煌々たる目が点々と複数輝いている。これはまさか…
「デッドゴード…!??でも何で気づかなかったんだ…!?」
「『死への誘い―キルゼムオール―』の重ね掛けだよ私たちの周囲の森総てに黒い霧を撒いて濃度を上げて見えなくしていたんだ」
「でも気配を消せるほどなのか!??」
「違うんだよ雄一君。私たちは『周りに気配がないから三対一での戦い』をしていると思い込んでいたんだ。周りに敵がいるってあらかじめ知っていれば気づけたはずなんだ」
「あ…」
そうだ。俺は周囲に気を割けなかった。こいつが一体だけだと思い込んでいた
いくら気配がわかるといっても意識しなければ少しならば気づかなかっただろう
「でもアリアは気づかなかったのか?」
「もちろん気配探知スキルはあるよ。でもまさか彼らがそこまで考えが及んでいたなんて知らなかった。まさか小規模の『天魔の威圧―フィアウォード―』を互いに展開し相殺させ咆哮を打ち消し合っているなんてね…黒い霧という帳を張ってその中で円を描くようなサークル程度の『天魔の威圧―フィアウォード―』を互いにぶつけ合って私の気配探知スキルをかいくぐったなんて夢にも思わないよ!!!!」
つまり俺自身が濃度の高い黒い霧の影響もあってか周囲に気を配らなかったからスキルではない気配を探る事が出来ずアリアの気配探知スキルも『天魔の威圧―フィアウォード―』の能力で消されデッドゴードが至近距離で互いに掛け合っていた為に音すら打ち消し合っていたということだ。戦っていた奴自身も調整をし霧を消さない範囲で
天魔の威圧を放っていたということになる。最初に放った霧も周囲のやつに合わせて放ち打ち消せば森に溶け込んだ霧も消えたと錯覚する。
無論気配探知を消しているのだから不自然にそこに空洞ができているように感じるだろう。だが森の中という鬱蒼とした状況下と『死への誘い―キルゼムオール―』という闇が周囲に溶け込みなおかつ一対三という戦いだという勘違いと気配を消すスキルがないという思い込みから生まれた最悪の状況というわけだ
まるで出来の悪い推理小説のトリックのようだ。まんまと敵の術中にはまっていた
そして諦めたかのように。いや実際お手上げだと降参するようなため息を吐いて
「しくったなぁ…完全に囲まれちゃったよ…」
ひどく消耗したアリアは糸が切れたマリオネットのように倒れ込んだ
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